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自分の可能性を信じ、人間らしく生きていける社会を願って。SmartHRが描く「ウェルワーキング」な働き方とは?

「労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。=ウェルワーキング(well-working)」。

そんなコーポレートミッションを掲げ、急成長を遂げるHRテック企業が株式会社SmartHRだ。

今回は、代表取締役CEO・芹澤 雅人さんと社外取締役・武田 雅子さんをゲストに迎え、「ウェルワーキング」をテーマに座談会を開催。

創業から12年で1,500人規模に成長したSmartHRが掲げる「ウェルワーキング」の理念とは? 風通しの良い組織づくりの秘訣、経営者としての哲学などについて、Wellulu編集長の堂上研が深く掘り下げる。

エンジニア出身の芹澤さんと、人事のプロフェッショナルである武田さんの異なる視点から、これからの働き方や組織のあり方が見えてきた。

 

芹澤 雅人さん

株式会社SmartHR 代表取締役CEO

2016年株式会社SmartHR入社。2017年にVPoEに就任、開発業務のほか、エンジニアチームのビルディングとマネジメントを担当する。2019年以降、CTOとしてプロダクト開発・運用に関わるチーム全体の最適化やビジネスサイドとの要望調整も担う。2020年取締役に就任。2022年1月より現職。

https://smarthr.co.jp/

武田 雅子さん

株式会社SmartHR 社外取締役/株式会社ZENTech 取締役

株式会社クレディセゾン、カルビー株式会社、株式会社メンバーズと業種の異なる上場企業で人事担当取締役、CHROを務めた後、HR系ベンチャーの事業支援の他、株式会社SmartHR、株式会社コロプラ、静岡鉄道株式会社の社外取締役などを兼任。

堂上 研

株式会社ECOTONE 代表取締役社長/Wellulu 編集長

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集長に就任。2024年10月、株式会社ECOTONEを立ち上げる。

https://ecotone.co.jp/

目次

「ラブコール」から始まったパートナーシップ

堂上:まずは、お二人の出会いについて教えてください。武田さんはどのようにしてSmart HRの社外取締役になられたのでしょうか? ‎

芹澤:私から武田さんにお声がけして、社外取締役になっていただきました。いわゆる“ラブコール”ですね(笑)。 ‎

武田:すごく丁寧なオファーをいただきました。SmartHRは、人事業界でも「オファーがとても丁寧な会社」として有名なんですよ。

堂上:うわあ、どんなアプローチだったのか気になりますね。武田さんは当時、すでに他でも社外取締役をされていたのですか? ‎

武田:当時はまだ一社だけでした。今は社外取締役が4社、執行役員が1社、合計5社に関わっています。 ‎

堂上:5社も兼任されていると、スケジュール管理が大変ではないですか? ‎

武田:まだ大丈夫です(笑)。社外取締役はフルタイムよりは拘束時間が長くないので、自分のペースで働ける部分も大きいんです。

堂上:芹澤さんは、なぜ「人事に強い方」を社外取締役に選んだのですか? ‎

芹澤:当時、私はまだ取締役ではなかったのですが、会議を傍聴していて感じたんです。数字やお金の話ばかりで人に関する議論が薄いな、と。会社の未来を考えるなら、事業だけでなく、人材育成や組織文化などにも目を向ける必要があると思いました。

堂上:HRに理解のある社外取締役って、まだまだ少ないですからね。表面的なアドバイスではなく、きちんと組織の本質に踏み込んでくれる人は貴重です。 ‎

武田:この部分は、私自身がいつも大切にしていることです。経営ばかりが前に進んでいて現場が取り残されていないか、経営陣の背中が社内にどう映っているのか。特にスケールアップ企業である当社では、注視すべきテーマと考えています。

観察力や社会科学からの学び。幼少期に見るキャリアの原点

堂上:少し遡って、お二人の幼少期のことを教えてください。武田さんは、どんな子ども時代を過ごされていたのでしょう?

武田:同級生からは「武田さんってあまり目立たなかった」と言われます(笑)。早生まれだったこともあって、いつも教室の隅からクラスの中のパワーバランスを観察しているような女子でした。4年生くらいで学級会の書記をやるようになり、自然と議事の流れを整理する力が身につきました。

堂上:僕の娘も早生まれだからか、どこか引っ込み思案なところがあるので、よく分かります。そうした「観察眼」や「構造を読む力」は、今にもつながっていますね。

武田:人間関係のパワーバランスを読む「オブザベーション力」は、この頃から培われていたのかもしれません(笑)。

堂上:芹澤さんはいかがでしたか? ‎

芹澤:僕は東京育ちで、小学校の友人とは今でも会うのですが、「変わらないね」と言われます。昔からものづくりが好きで、パソコンなどの機械をいじっていたので、エンジニアリングの方向に進んだのも自然な流れでした。でも、人前に立ったり話したりは得意じゃなくて、今社長として講演している姿を、友人は驚きながら見ているようです。 ‎

堂上:小さい頃からものづくりが好きだったんですね。スポーツなどは? ‎

芹澤:あまり得意じゃなくて、今もインドア派です(笑)。兄と姉がいて年も離れていたので、体力的にも敵わない分、自分の居場所を探して、静かに創作を楽しむタイプでした。

堂上:なるほど。根っからのクリエイター気質なんですね。僕はずっとサッカーをやっていたので、仕事や組織のことについていつもサッカーを重ねて考える傾向があるんです。個人スポーツとチームスポーツ、どちらをやっているかでも違いが出るなと思っていて。

芹澤:それでいうと、バンドや吹奏楽をやっていたのでチーム経験はありますね。でもやっぱり苦手でした(笑)。ただ、大学で社会科学を学ぶなかで、「人が集まると何が起きるか」に興味を持ちました。その学びは、今の組織運営にも大きく活きています。 ‎

堂上:行動経済学やコミュニケーション論など、マーケティングの世界でもようやく「人間のリアルな行動」に光が当たるようになってきましたよね。エンジニアでありながらリベラルアーツ的な視点もお持ちなのが素晴らしいです。

武田さんは大学時代、どんなことを学ばれていたのでしょう?

武田:じつは短大を中退しています。内部進学でそのまま短大に進学したのですがすぐに退屈してしまって。すぐに就活が始まることにも「社会のことをまるで知らないのに、働く選択をするってどうなんだろう?」と疑問に感じて、1年間フリーターとしてさまざまな仕事をしました。復学しようと思ったときに、「また1年も退屈な時間が続くのか」と思ったら、やはり嫌になって辞めたんです。 ‎

堂上:フリーター時代は何をされていたのですか? ‎

武田:リクルートでフルタイムのアルバイトをしたり、ロイヤルホストでトレーナーをしたり、色々なことをやりました。その後、21歳でクレディセゾンに中途入社しました。営業拠点でもある接客の窓口からスタートして、その後人事に移りました。クレディセゾンの仕事は今振り返っても楽しかったですね、やりきった感じがあります。 ‎

堂上:現場で学びながらキャリアを切り拓いてこられたのですね。武田さんの行動力と観察力が、社会に出てからさらに磨かれていったのが伝わってきます。

どれだけ野心を持ち続けるか、変わり続けようとするか

堂上:芹澤さんは、どのようにしてSmartHRに入社されたのですか? ‎

芹澤:当時はエンジニアとして事業会社で働いていたのですが、転職を考えていた頃にスタートアップのイベントで前社長の宮田さんに出会ったんです。そのときにエンジニアを募集していると聞いて、翌週くらいに飲みに行って「入ります」と伝えました。‎当時はまだ売上もまだ立っていないフェーズでしたが、何よりも“人の魅力”に惹かれました。

堂上:でもスタートアップに入社するって大企業に比べると勇気がいる選択だったと思うんですが、不安はなかったですか?

芹澤:なかったです。20代後半だったので、最悪うまくいかなかったら転職すればいいという感覚もありました。それに、エンジニアとしてのスキルに一定の自信もありましたし、やってみたいという気持ちが勝っていましたね。

堂上:自分の意思を持って行動に移せるのは強みですよね。自分の想いや価値観を軸にして決断することが、結果的にウェルビーイングにもつながると思います。

それでは、武田さんは仕事を選ぶ上で何を重視されますか? ‎

武田:経営者の人柄、自分との相性などでしょうか。謙虚さを忘れることなく、ビジョンを熱く語り、自分自身も変化しようとしている人に惹かれます。足りない部分を認めながら、成長し続けようとする姿勢は本当に魅力的です。‎

堂上:芹澤さんご自身は、経営者として何を意識していますか? ‎

芹澤:一番意識しているのは、自分が会社の成長のキャップ(上限)にならないようにすることです。どれだけ野心を持ち続けられるか、自分自身が変わり続けられるか。それが経営者にとって大事だと思っています。特にSmartHRは変化と成長のスピードが早いので、自分が遅れないように常にアップデートしています。

堂上:内にこもらず、外に開かれている姿勢も印象的です。

芹澤:社内の声を聞くことも大切ですが、同時に社外、特に上場企業の経営者との対話など、異なる環境に身を置くようにしています。外に出ないと、新しいアイデアは生まれないですからね。この3年で自分自身も大きく変化した実感があります。

武田:芹澤さん、社長になってすごく変わりましたよね。自身の時間の使い方など、取締役会でお話しいただく機会があるのですが、優先順位やウェイトなど、以前と大きく変わったなということがよく分かります。

じつは芹澤さん、エグゼクティブコーチングを受けているんですよね?

芹澤:はい、月に2回ほど受けています。社長業って、常に孤独とプレッシャーの中で意思決定をしていくので、冷静さを保つためにも必要な時間です。コーチングで自分をリセットすることで、また走り出せる。もはや「ウェルビーイングな経営」に欠かせない習慣になっています。

堂上:さすがです。まさに、ウェルビーイングと経営の融合ですね。芹澤さんの変化や自己更新力に、そのヒントがある気がします。

「ウェルワーキング」に込めたSmartHRの働き方への想い

堂上:武田さんは社外取締役としてどのような視点を持っていますか? ‎

武田:できるだけ場を俯瞰して見るようにしています。オンライン会議でも「この発言を芹澤さんはどう受け止めたかな?」など、全体の空気を捉える意識を持っています。あとは現場にどう反映させていくのかされるのかといった視点ですね。

堂上:芹澤さんがCEOになって掲げた「ウェルワーキング」というミッションには、どんな想いがあったのですか?

芹澤:前任の宮田は社会構造改革を軸にしていましたが、私は「効率化のその先」に目を向けたいと思いました。効率化というのはすごく都市型の考え方だと僕は思っていて、結局何が幸せなのか見えづらい。日本で働く人を“ウェル”にしていく方が、結果的に生産性や業績も上がると考えたんです。‎

堂上:すごく共感します。僕もウェルビーイングを掲げて事業を立ち上げましたが、やはりその裏には「人的資本経営」と言われるように、みんながワクワクしながら働ける環境をつくらなければ、という想いがありました。

武田さんにとって「ウェルワーキング」とはどういう状態ですか? ‎

武田:自分の得意なことや、やりたいことが誰かの役に立っている状態。多様な変化に関わりながら、自分らしくチャレンジし続けられることですね。

堂上:変化が大事だと思う一方で、変化を避けたい人にはどう接すれば良いと考えていますか?

武田:じつは「変化していない」ように見える人でも、小さな変化は起こしているもの。たとえば老舗企業でも、小さな改善や挑戦は常にあります。それに気づいてあげることが大切です。また、組織では先頭の7〜8%が動くと、歩みを止めなければ後々全体も自然と変わっていくものです。全員に同じテンションを求めなくていいと考えています。

芹澤:うちは変化の多い会社なので、それを理解して入ってもらっています。でもウェルビーイングの観点で言えば、自分が居心地よく働ける場所を見つけることが一番だと思います。無理して会社にいる必要はないし、外に出ていく選択もあっていい。‎

堂上:同感です。どうしても「離職率」というワードを気にしがちですが、僕も辞めたいなら辞めればいいと思っています。

芹澤:一定の流動性はむしろ健全なことです。

堂上:武田さんは会社の人事として「辞めた方がいい」と言うことはあるんですか? ‎

武田:あります。でも相談に来る時点で、だいたい本人の中で答えは出ていることが多いです(笑)。そのときは人事というより個人として、「うちじゃないかもね」と正直に伝えます。人は会社の所有物じゃないですから。

堂上:採用の際に人を見るときは何を重視しているのでしょうか?

武田:スキルよりも、まずはカルチャーマッチを見ています。 また、過去の行動についての選択やその根底にある価値観を見て、それらに再現性があるかを見ています。

堂上:人事って、すごくクリエイティブな仕事ですね。

芹澤:本人のモチベーションも大切です。熱中した経験や「推し」がある人って、何かを深く学んでいることが多いです。年齢や性別ではなく、そういう人と働きたいですね。

堂上:今の話で思い出しました。名コピーを生んだ故・岩崎俊一さんという方と、仕事をするならどういう人としたいかという話をしていたら、その場でノートに「慣れてる人より熱い人」って書かれたんです。仕事のスキルよりも、熱量が大事だと。

武田:わかります。芹澤さんからも“青い炎”のような熱さを感じます。狂気と言えるほどのパッションを持った創業者とか、振り切ったリーダーのいる会社でこそ、人が育つ。想定外が起きる組織の中でこそ、ワクワクしながら働ける環境が生まれると思うんです。私はルーティンワークより、そういう環境を選びますね。

変化を恐れず、働く人を“ウェル”にする組織づくりを目指して

堂上:お二人はお休みの日は、どのように過ごされていますか? 今ワクワクすることがあれば教えてください。

芹澤:よく本を読んで過ごしています。大学の専攻が社会科学だったこともあり、今でもリベラルアーツ系の本をよく読みます。自分の知らなかったことを知って、知的好奇心が満たされることにとてもワクワクしますね。

あと、仕事の中でも、大きな課題が出てくると、どう解決しようかとワクワクします。組織とはおもしろいもので、全員が合理的に判断して行動すれば問題は起きないはずなのですが、現実はそうならない。その人間らしさが非常に興味深いですし、それをエレガントに解決していくことにモチベーションを感じます。

堂上:課題解決にワクワクする姿勢は、ウェルビーイング的にもとても前向きですね。武田さんはいかがでしょうか?

武田:休日は家にいたり、友人やまたは一人で旅をしたり、年に一度は断食にも行きます。一人の時間も大好きです。

芹澤:めちゃくちゃわかります。一人の時間、最高ですよね(笑)。

堂上:以前、武田さんをお誘いしたとき、牧場に行かれてましたね。先日、休養学の専門家とお話ししたのですが、「良いオフの過ごし方が、フロー状態を生み出す」と言われて。休むことは生産性を高める戦略なんですよね。

武田:本当にそう思います。今は、オフの予定もしっかり決めて、その上で仕事の予定を立てるようになりました。

堂上:僕は最近、睡眠改善に挑戦しているのですが、調子が良くなって一日がとても充実するようになりました。プライベートでも仕事でも、新しいことにチャレンジする人がもっと増えたら社会がもっと良くなると思うんです。でもみんな失敗することを恐れてなかなかチャレンジできないんですよね。お二人は失敗することを恐れないように見えますが、どう考えていますか? ‎

武田:私は「失敗していない人は、挑戦していないってことだからかっこわるいよ」とよく言っています。メンバーや新人にも「失敗してもいいから挑戦しよう」と伝えています。

芹澤:僕は「失敗」という感覚があまりなくて。やり続ければ何かしらの学びは絶対あるわけで、それが得られれば全然いいと思っています。何も行動しないことのほうが失敗だと思います。

僕は挑戦を「実験」のようなものだと考えています。仮説を立ててやってみて、どうだったかを見る。だからうまくいかなくても落ち込まないし、むしろおもしろいんです。

堂上:失敗を前提にした実験精神で挑戦できる人が組織の中にいることは、すごく頼もしいなと感じました。

では最後に、未来について伺います。2050年はどんな社会になっていてほしいですか?

芹澤:人間が人間らしく生きている社会であってほしいです。AIやロボットといったテクノロジーの進化の中で、人は何を目的に生きるのかを問うべきだと思います。

畑を耕して暮らす選択だってあるわけで、資本やビジネスを大きくすることだけが目的ではないはず。価値のバランスを取り戻すことが大切です。

武田:私は、みんなが自分の可能性を信じられる社会になっていてほしい。古い価値観や、忖度がはびこる組織文化なんて不要です。挑戦したいと思ったときに、「やってみよう!」と思える社会。失敗にも寛容で、学び合える環境。人と出会い、行動することにポジティブな後押しがある社会が理想ですね。

堂上:挑戦を恐れず、ウェルビーイングを軸に変化し続けることが、これからの時代を前向きに生きるヒントになると改めて感じました。芹澤さん、武田さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!

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