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社員全員がムーバーとなり未来を彩る! TISの人的資本経営と岡本安史社長の哲学

ITサービス市場においてリーディングカンパニーの地位を確立し、2023年4月に人事制度を新しくリリースするなど、多様な人材が働きがいと成長を実感しながら活躍できる会社を目指すTIS株式会社。

人材戦略において「多様な人材が活躍し、イノベーションを生む風土や文化の形成」を掲げるTISの取り組みと、その先に描く未来の姿とは?

代表取締役社長の岡本安史氏に、ウェルビーイングな組織づくりのために心がけていることを、Wellulu編集長の堂上研が伺った。

 

岡本 安史さん

TIS株式会社 代表取締役社長

大阪府生まれ。1985年株式会社東洋情報システム(現 TIS株式会社)入社。2011年から執行役員 企画本部企画部長、2013年常務執行役員 ITソリューションサービス本部長、2016年専務執行役員産業事業本部長、18年取締役 専務執行役員 サービス事業統括本部長などの要職を経て、2021年4月より現職。
https://www.tis.co.jp/

堂上 研

株式会社ECOTONE 代表取締役社長/Wellulu 編集長

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集長に就任。2024年10月、株式会社ECOTONEを立ち上げる。

目次

生きている時間すべてが人間の「仕事」である

堂上:今回はぜひ岡本社長のプライベートな一面もお聞かせいただければ幸いです。はじめに岡本社長が学生時代に好きだったもの、熱中したことはありますか?

岡本:じつはあまり熱中したものというのはないんです。幼少期は車掌に憧れていましたが、そこまで「熱中」という感じはありませんでした。何かに特化するというよりも「普通に生きる」ということを大事にしていたように思います。

堂上:興味深いですね。どの瞬間も自然体でいらっしゃったのですね。

岡本:とは言え、若い時は自らを誇示するような時期はありましたよ(笑)。でも歳を重ねるにつれて、必要ないことだとわかりました。例えば自分にアイデンティティがない時には、自分の意見を強く主張し、周囲がそれに賛同するのを見て、ポジションを得ようとする行為が見られますよね。でも自分に自信がついてきたら、自分は自分の生き方で生きていれば良いし、他人の生き方も尊重できるようになる。自分とは違うと思っても、それを揶揄して自分のアイデンティティを築く必要はどこにもなくなります。

堂上:ウェルビーイングに通じるお話ですね。ウェルビーイングにおいて、まず自分と向き合うというのは大事ですし、その上で他者や自然と向き合い、自分がどう生きたいかに自分で気づくことができたら、人は人、自分は自分とした生き方を持つことができます。

岡本:その通りですね。

堂上:岡本社長はゴルフが趣味だと伺ったのですが、年間でどのくらい行かれているのですか?

岡本:先日数えてみたところ、年間で90回を超えていました。半分は仕事で、半分は妻とのプライベートです。

堂上:お仕事だけでなく、奥様とも楽しまれているのは素敵ですね。

岡本:私が心がけているのは、オンとオフを分けないということです。私たちは会社に来てやる業務が仕事だと思っているけれど、「生きていくこと」自体が仕事なんです。息をしたり、お風呂に入ったり、ご飯を食べたり、寝たりすることもすべて仕事。そう考えると、すべて繋がってきます。

堂上:僕たちがウェルビーイングを探求する中でも、オンとオフを分けないというのは重要だなと感じます。僕自身、友人から「何をやっている時が楽しいか」を問われた時に「仕事」だと答えると「オンとオフを分けたほうがいい」と言われるのですが、僕は働くということがすごく楽しいんです。生きることと仕事がイコールになった時に、良い仕事ができるんじゃないかと思っています。

岡本:素晴らしいですね。もちろんオンとオフを分けたいという人もいて良いんですよ。

堂上:価値観の押し付けが生まれるとウェルビーイングではなくなりますもんね。

岡本:ただ、基本的に仕事には24時間のうち8時間という1日の3分の1を費やしているわけです。ですから、つまらない・やりたくないという考え方だけで過ごすのはもったいないと思います。世の中、すべての人が理想の仕事に就けるわけではないですし、就いたとしても楽しいだけでなく苦労も多いですよね。だけどせっかく仕事をするのだから、面白いことを見つけて欲しいなと思います。技術者なら技術を身につけるということでも良いし、営業ならこのお客さんを絶対に獲得しようでも良い。何かしらのやりがいを見つけられたら、より良い生き方に繋がっていくのではないでしょうか。

社員が自律的に考える組織作りのコツは「頼りない社長」を演じること

堂上:TIS社員のみなさんにもこういった考えを伝えていらっしゃるのですか?

岡本:メディアでの露出も含め、メッセージングは意識して行っています。特に社員に伝えていることは、「考える人」でいてほしいということです。人に言われたことをこなしているだけだと、失敗した時に誰かのせいにしたり、愚痴を言ったりしてしまいます。そうではなく、自分で考えて、どうやったら良くなるか、どうやったら面白くなるか、どう自分のスキルアップに繋げていくかを考えることが大切です。役員には、仕事ができるだけでなく、お客様から「この人ともう一度仕事をしたい」と思われるような人間力が必要だと伝えています。

堂上:お話をしていると、岡本社長は人が好きなのだなと感じます。いかがですか?

岡本:それは難しい質問ですね……案外苦手かもしれません(笑)。でも「嫌い」な人はいません。好き嫌いはなく、ただ「全てのことがそこにある」という感覚です。

人間というのは、自分だけは悪口を言われていないと思いがちです。なぜなら、自分は陰で悪口を言われているのを聞かないですから。でも実際は、自分が知らないところで悪口を言われていることもあるわけです。自分だって仲の良い人を悪く言ってしまうこともある。そう思うと、何も気にしなくなりますし、どうでも良くなってきて、結果的に自分も誰かを悪く言わなくなります。

堂上:面白いですね。負の発言は自分に返ってくると思っています。僕がウェルビーイングのメディアを立ち上げた時に苦労したのは、「良い人」でいなきゃいけないということです。でもウェルビーイングな人たちと会っていくと、自然と自分もウェルビーイングになっていくし、影響されるし、色々な考え方を吸収して、ネガティブな発言をしなくなりました。

岡本:でもきっと、心の中には良い自分と悪い自分がいるんですよ。それが人間だと思います。

堂上:悪い部分も自覚し、傲慢にならないことが大切ということでしょうか。

岡本:それもありますね。私は、神様が人間に与えた最高の贈り物は、「相手が何を考えているか分からない」ことだと思います。だからこそ人は幸せになれる。相手が腹の底で何を考えているかがすべて分かったら、大変じゃないですか。

堂上:なるほど……おっしゃるとおりですね。岡本社長はとてもオープンに話してくださいますね。ウェルビーイングな組織において経営者が自分の弱みを見せたり、オープンにできたりするというのは重要だと思っています。

岡本:組織を牽引していく方法はいくつかありますが、例えばベンチャーや中小企業の場合は、経営者が技術やパワー、影響力を持って引っ張っていくこともあると思います。一方で大企業の場合は、いかに後継者を育てていくかが重要です。私は代表取締役に就任した直後から、任期の間にどう次を育てるかを考えていました。自分が先頭に立って引っ張っているだけでは、社長の言われた通りに進めて報告するだけの部下しか育ちません。私が次の世代が育つと思うのは、「頼りない社長」を演じることだと考えています。任せておいたらちょっとまずいぞ……、と思われているくらいが一番良いと思っているんです。

堂上:頼りなさがあった方が、周囲も自分で考えるようになりますよね。

岡本:ですから、もし自分の中でこれにしようと決まっていても、会議では最後まで口を出しません。表情にも出しません。そうして役員たちが自らの意見を言い、議論するのを待ちます。社長が先に何かを言ってしまったら、役員は後から意見が言いにくいですからね。役員の議論を聞いていると、「自分はこう思っていたけれどみんなは違うみたいだぞ」ということも起きます。そうすると私も新たな視点をもらうことができ、考え始めます。役員も私も考えた上で、最終的な決断が下せるのです。

堂上:素晴らしいです! 自分たちが発言したのだから、頑張ってやらなければと思うこともできます。ウェルビーイングな組織を探求していると、立候補制など社員が主体的に動ける仕組みが大事だと感じます。

岡本:ただここで抜かしてはいけないのは、「最後は責任を取る」と伝えることです。社長の仕事はこれだけみたいなものです。

堂上:ついつい口出ししてしまうことはないですか?

岡本:自分が担当していた案件は、口を出してしまいそうになりますね。お客様のことも良くわかっているので、本当にそれで大丈夫なのかと言ってしまいそうになります。でもできる限り、グッと堪えます。

堂上:待ってあげることも大事ですね。権限も委譲されているのですか?

岡本:人事権以外はほとんど委譲しています。社内で無駄に報告資料を作って役員会議を通すのも、時間がもったいないじゃないですか。社外取締役と話題に挙がるような案件以外は、担当の本部長に任せています。

堂上:大企業に勤める多くの社員が「自社もそうあって欲しい」と切望していると思います。

働く意義や環境に重きを置くTISの人材戦略とは

堂上:TISの人材戦略についてもお聞かせください。

岡本:私たちは、グループビジョンの達成に向けて中期経営計画で掲げたとおり、フロンティア開拓による高い付加価値を社会に提供し、経済成長と社会課題解決を両立させることを目標としています。これを実現するための人材戦略として、多様な人材が活躍し、イノベーションを生む風土や文化の形成、事業拡大・変化に応じた人材の確保・育成、事業戦略を牽引する先鋭人材の確保といった三層のテーマに対する取り組みを促進させ、人材の高付加化価値化を進めています。

このためには、社員一人ひとりの新たな挑戦を支援する必要があり、「働く意義」「働く環境」「報酬」の3つの軸で人材に対して積極的な投資を行います。

堂上:「働く意義」については、どのように考えていらっしゃいますか? またそれを社員へ浸透できるように、どのような取り組みをしているか教えてください。

岡本:働く意義というのは、プロジェクトをやることによって、社会やお客様に対してどのような影響を与えるのか、そして自分自身に対しての成長や意義に繋がるのかということです。冒頭でお話したとおり、仕事には1日8時間もの時間を費やしているのですから、楽しさを見つけてほしいですし、今の若い方達は物質的には恵まれている社会で、精神的な繋がりを大事にされていると感じます。働く目的や意義は、入社時はもちろん入社後も大事にされます。だからこそ、私たちは2週間に1回の1on1を行い、定期的に仕事を通してどんな楽しみや意義を見つけられているかを対話しています。

堂上:2週間に1回はかなり頻度が高いですね。それだけ対話を大事にされているということですね。「働く環境」というのはオフィスの環境でしょうか。

岡本:オフィスの環境も含めて、テレワークの制度など、自由に働ける環境・制度を大切にしています。IT産業は知的産業ですから、上司に監視されながらでは革新的なアイデアは生まれません。我々が考えるべきは、その人の能力を最大限に発揮できる環境づくりです。今のオフィスには富士山が見えるフロアもありますが、そういった開放的な景色や、コーヒーを飲みながらリフレッシュをしたり、散歩をして気分転換をしたりできる環境を整えるというのは重要だと考えています。

堂上:今日は豊洲オフィスにお伺いしていますが、ロボットの受付がお出迎えしてくれて、リラックスするアロマの香りが漂っていました。スペースもとてもゆったり取られていて、ウェルビーイングな空間だと感じました。

岡本:移転前はグループ会社と階が分かれており、なかなか交流が生まれませんでした。新オフィスでは食堂を作り、誰もが開放的な空間で自由に生産性高く働き、交流が生まれる「集まれる場所」を目指しています。

堂上:かつては田の字型のオフィスで先輩に怒られながら仕事をするのが当たり前でしたが、すっかり変わってきましたね。

岡本:近年では心理的安全性が大切だと言われるように、上司に怒られた部下は素の状態で100%の力を出すことはできなくなりますし、相談もしなくなります。怒るのではなく、ディスカッションの中で気づきを得られる環境が必要ですね。

堂上:それも働く環境づくりのひとつですね。

岡本:人事制度においても2023年度から、「Must/Will/Can」に基づいて目標設定を行うようになりました。これまで企業は社員に「Must」ばかりを求めてきましたが、社員の強みなどの「Can」、キャリア志向などの「Will」の3つの重なりを最大化することで、多様な人材が働きがいや成長を実感しながら働ける環境を目指しています。

2024年統合報告書P.57より

堂上:制度として設けるというのがポイントですね。働く環境という観点では、時間に追われるとウェルビーイングではなくなると言われています。どうしても仕事では企画の締切やプロジェクトの納期などの締切に追われがちですが、そうするとどんどん余裕がなくなっていってしまいます。

岡本:大切なのは、時間に支配されるのではなく、時間をコントロールするということですね。時間をコントロールする癖をつけなければいけないと思います。時間をコントロールするのが苦手な人は、バッチ処理(一括処理)なんです。例えばメールが来た時に、それを読んで、「後で返信しよう」と思って置いておく。そうするとまた後でもう一度読んで考えなければいけません。そうではなく、メールが来て読んだらその場で返す。30分の打ち合わせが27分で終わったら、余った3分でメールを返してしまうんです。そうでなければ、どんどん仕事が溜まっていき、時間に追われるようになってしまいます。

人的資本経営の先にあるTISが描く未来。「便利で平和に暮らせる社会」を目指して

堂上:ウェルビーイングでいるためには「習慣」が大切なキーワードでもあります。岡本社長は生活のなかで習慣にしていることはありますか?

岡本:私は、朝起きると必ずストレッチをします。10分くらいですが、血流が良くなって、頭がシャキッとするので仕事も捗るんです。それと週に1回はジムに行って筋トレをしています。汗をかいてリフレッシュできますし、健康維持のために続けていますね。また土日はゴルフに行って技術力を磨いていますよ!

堂上:健康的ですね。ストレッチはいつ頃から始められたのですか?

岡本:コロナ禍でジムが閉まっている時期に、このままではまずいと思って始めました。今はなかなか時間が取れていないのですが、無心になれるので水泳も好きです。あとは仏壇に線香を立てて、軽くお経を唱えます。

堂上:僕もウェルビーイングな人は自分の習慣を持っているなと感じて、神棚を置いて毎日神棚に手を合わせているんです。「今日もありがとうございます」と唱えてから1日を始めると、心が洗われます。

岡本:素晴らしい習慣ですね。

堂上:最後に岡本社長、ひいてはTISが目指している未来の姿について教えてください。

岡本:何の憂いもなく1日を楽しく過ごせて、一生懸命頑張れて、明日も頑張ろうねと言い合えるような社会を実現したいです。我々としてはデジタル技術で少しでも生活が便利になり、家族の時間ができたり、個人の趣味の時間が増やせたり、平和で安心して暮らせる社会を実現する一助になりたいと考えています。

多くの人がストレスを抱えている現代において、ストレスを軽減して、みんなが幸せに過ごせるような世の中をどうやったらつくれるのか、それを考え続けたいです。

堂上:僕たちもWelluluを通して、人と人がリスペクトし合える社会、みんなが幸せに暮らせる世の中を目指しています。本日は素敵なお話をありがとうございました。

撮影場所:TIS株式会社 豊洲オフィス

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