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自分の気持ち、感じてますか? 鎌倉にいる変容のプロを訊ねて <ヒューマンポテンシャルラボ>

ヒューマンポテンシャルラボ

23年3月某日。Wellulu編集部は、鎌倉の眺めのいい小丘にある、とある荘を訪ねた。中から出迎えてくれたのは、独特の雰囲気をもつ男性。彼こそがウェルビーイングを探究し、自己変容のコミュニティを運営する株式会社ヒューマンポテンシャルラボ代表の山下悠一さんだ。

「ウェルビーイングに関する答えは、はるか昔にすでにブッダが出しているんですよ」と語る山下さん。そんな彼と、ヒューマンポテンシャルラボのプログラムの企画やWCLでコミュニティマネージャーを務めるむろき優理さんに活動内容や自己変容のヒントを伺った。

本記事のリリース情報
【メディア掲載】ウェルビーイング新メディア<wellulu>に取り上げられました!

WCLには、内面の満たされなさを感じた人が集まる

ヒューマンポテンシャルラボ

ー ヒューマンポテンシャルラボの事業内容を教えてください。

山下:弊社では、人々がウェルビーイングに生きていくためのさまざまなプログラムをオンラインで配信。古代から受け継がれる叡智(えいち)をベースに、「Mind(思考)」「Emotion(感情)」「Body(身体)」「Spirit(精神)」「Life(暮らし)」の5つのカテゴリでお届けしています。

また、これらのプログラムをもとに、企業向けの研修プログラムや変革コンサルティング、そして自律分散型の共創コミュニティ(DAO)「Wisdom Commons Lab(以下、WCL)」も運営しています。

- WCLにはどのような参加者が多いのでしょうか?

山下:職種は多様性に溢れているのですが、ウェルビーイングへの意識の発展段階はみな同じような位置の人が多いです。資本主義社会の中である程度の成功は掴んできたけど、でも何か違和感がある……そんな人たちです。

むろき:もう一つは、自分の中では変容の気づきは得られているけど、同じ考えやフェーズの仲間が身近にいないという人。どうしても内面の話なので、周囲の共感を得にくいのです。

そんな人たちがサードプレイスとしてWCLに参加し、ともにウェルビーイングに向かっていく活動をしています。

社会的に成功したのに幸せを感じないのは、ナゼ?

山下 悠一

- そもそも山下さんはなぜ今の会社を立ち上げようと思われたのですか?

山下:私はもともと外資系コンサルティングファームのアクセンチュアで働いていました。アクセンチュアはとても成長できる素晴らしい会社でしたが、普通の人よりも稼いで魅力的なプロジェクトに携わっているのに、なぜか内面が満たされない。

周りを見ても「社会的に成功している人ほど内面的に豊かじゃないぞ、これは一体なんなんだ」とモヤモヤしていたんですね。

この違和感がきっかけで、2015年に退職。その後、「僕がアクセンチュアを辞めた理由」というタイトルのブログを掲載したら、3日で10万アクセスくらいにいって少しバズったんです。「みんな同じような気持ちを抱いていたんだ」とちょっと安心しました。

そこから、「世界でウェルビーイングを最大目標に掲げていた人たちって誰だろう」と考えたところ、行き着いたのがヒッピー。だから、私も退職して3年くらいは彼らと同じくヒッピー生活を送っていました。内面の豊かさを探るために、国内外のヒッピーカルチャーのコミューンを尋ね歩いて周ったのです。

そこで感じたのが、ヒッピーの人たちはウェルビーイングを大切にしながらもカウンターカルチャーの姿勢を保つために、資本主義やお金の存在を否定して生きている、ということ。でも、その生活も私には幸せには見えなかったんです。

この気づきがあって、既存の資本主義的な価値観を全面否定するわけでもなく、かといって盲目的に信じるわけでもなく、両方のバランスを保ち生きていくためのプログラムを開発していこうと考えたのが、「ヒューマンポテンシャルラボ」設立の原体験です。

科学合理主義な現代人が陥りがちなワナ

ヒューマンポテンシャルラボ

- WCLでよく登場する「古代の叡智(えいち)」とは何ですか? ウェルビーイングとの関係性を知りたいです。

山下:東洋に限らず西洋も含めた昔からの智慧(ちえ)のことです。私たちなりの考えでは、現代人のウェルビーイングに関する答えは、紀元前にもう出ている。ブッダが悟った内容は、ウェルビーイングの答えそのものだと捉えています。

むろき:WCLでは、身体性に関してボディサイコセラピーや神経科学に基づいたボディーワーク、シャーマニズムも含めた様々なプログラムを扱いますが、根っこの部分は共通しているなと思います。

山下:現代人は「科学合理主義」という一つの宗教に入っている感覚なんですね。科学的なものやエビデンスのあるものしか信じない、という。

一方で古代では科学は進んでいないから、自分の身体性をもとに体験的に掴んでいくしかなかった。ブッダの悟りも、科学的な根拠があるわけではなく、体験的な探究によるものです。

でも、そこで語られていたことが、近代になって科学的に裏付けられています。「超ひも理論」や「量子力学」がその代表です。

ウェルビーイングの捉え方は一人ひとりで違うため、古代の人が会得していた“自分の心や身体の声を感じ取るスキル”が今の時代では必要。だから、ウェルビーイングのために古代の叡智(えいち)をプログラムに取り入れているのです。

ウェルビーイングとは「無条件に大丈夫だ」と思える心の状態

むろき優理

- お二人にとって、ウェルビーイングな状態とはどのような状態ですか?

むろき:「つながりを感じられている状態」ですかね。この「つながり」は、他人とのつながりだけでなく、自分自身の感情や感覚とのつながりも含んでいます。例えば、イライラしていたとしても、「なんでイライラしているのかな」と自分の状態を微細に感じ、そこに深く耳を傾けようとする状態のことです。

身体感覚だけでなく、思考的な部分も“自分と切り離された状態が続く”と、ウェルビーイングな感覚は薄れてしまいます。そして、自分とつながれている感覚が薄れると、他人ともつながっている感覚を作りにくくなってしまうのです。

自分の大切な感情や感覚が掴みきれずに暴走しているのではなく、ちゃんとキャッチできている状態。このように自分とつながれていれば、怒りの感情も決して悪いものではないと思うんですね。

逆にどれだけ感覚や思考に波がないと感じていても、いろいろなことに忙殺されて自分とつながれていない状態だと、私はウェルビーイングを感じないですね。

ヒューマンポテンシャルラボ

山下:答えになっていないかもしれないですが、トランステック・カンファレンスファウンダーのジェフェリー=A=マーティンの言葉を借りるなら、ウェルビーイングの定義は「何があっても大丈夫だと思えること」なんですね。

日本語でライトに直すと、『大丈夫感!』。「無条件」に「大丈夫だ」と思えるということ。つまりこれって、ネガティブなことも含めて「OKだよ!」と思えている状態のことです。

一般的なウェルビーイングの話では、ポジティブな光の部分だけを尊重しがちなのですが、私たちはそうではないと考えています。

むしろネガティブな闇の部分を感じ取って、受け入れていった先に本当の意味のウェルビーイングがある。「ネガティブな感情の奥には、どんな自分の願いがあるのだろうか」と耳を澄ませることから、その人のウェルビーイングのポテンシャルは拓けていくと思いますね。

「考え」ではなく、まずは「自分の気持ち」を感じ取ることから

山下 悠一

- 自分の気持ちは感じ取れていたとしても、とはいえ既存社会の枠組みの中で折り合いをつけて生きて行かなければなりませんよね。その点については、どうお考えですか?

山下:まさに今の世の中はそうだと思います。でも、かつての会社や組織ありきの時代から、年々、個人の時代に変化していますよね。そこに対して「少しずつパラダイムシフトを起こしていきましょう」と考えているのがWCLです。

この変化は一人では起こせないですが、一人ひとりが『私のウェルビーイング』と向き合っていくことで、まるでオセロが裏返るように社会の在りようが変わる日が来るのではないかと。

インターネットやブロックチェーンといったテクノロジーがこの動きを加速させ、それまでは組織の論理に従わざるを得なかった人たちが、自分の価値観を大切にして生きていけるようになると思います。

これからの5年、10年は大きな過渡期。いきなり全員が変わることも、その必要もないので、一人ひとりが「どうしても今のライフスタイル・ワークスタイルは無理だな」と気づいたタイミングで見直すのがベストだと思います。個々人のタイミングがありますからね。

- 今の生活に違和感を抱いていても、どう動き出したらいいのか分からない人は何から始めればいいでしょうか?

むろき:日本人で面白いのが、「今どんな気持ちですか?」と質問すると「今の“考え”」を話す人が多いことです。学校や職場で「気持ち」よりも「考え」を上手に語れることのほうがよしとされてきたら、自分の気持ちを感じるとることがずいぶんと苦手になっているなと多くの人を見て感じます。

これは、今まで自分の気持ちを扱う機会が少なかったからしょうがないので、他人との対話を通じて、自分の気持ちに気づけるようになるのがよいかと思います。

何かアドバイスやジャッジをしてもらうのではなく、「へーそうなんだね。つまりこう感じているんだね」と耳を傾けてくれる人が一人でもいるといいですね。もし身近にいらっしゃらないという人は、WCLにお越しください!

心の葛藤は悪い感情じゃない。大切に育ててほしい

むろき優理

- 最後に、読者に何かメッセージをいただけますか?

山下:1日1分からでもいいので、生活の中で自分の内側とつながる、自分がどういう感情なのか、どんな願いをもっているのかを感じ取る習慣を取り入れていただけると嬉しいです。そうして、やがては心の内側を感じ取りながら、外側の取り組みをやれるようになるとベストですね。

誰しもが既存の資本主義的な価値観とある程度は関わっていかなければなりませんから、内側と外側のバランスを保ちながら、心穏やかに生活できる人を一人でも増やしていけたらなと思います。

むろき:ひとつ、読者のみなさんに伝えたいなと思うのが「葛藤」についての捉え方です。葛藤ってネガティブに捉えられることが多いですが、私はものすごいポテンシャルだと思うんですね。

葛藤が小さいうちは、気づかないフリをしたり、抱えながら日々の生活を送りますよね。でも葛藤がどうしようもなく大きくなってくると、放っておけなくなる。その時に、その人が心から願うことに気づけるチャンスだと思うんですよ。

葛藤がピークの時に生まれた願いは、その人が魂から、全身から望んでいる選択肢。だから、葛藤を無視しないこと。そっと大切なものとして扱い続けてほしいです。早く解決しなくちゃと、プレッシャーに感じないでほしい。

そして、どうしようもなく葛藤が大きくなったのなら「自分を変容させるチャンスが来た!」と思って、自分の気持ちが求める方向に動いてみてください!

ヒューマンポテンシャルラボ

 

山下 悠一さん

株式会社ヒューマンポテンシャルラボ代表

早稲田大学理工学部建築学科出身。外資系コンサルティングファームで12年間働いた後、米国カウンターカルチャー、禅、ヨガ、ネイティブアメリカンなどの古代叡智と最先端のウェルビーイングテクノロジーを経験した後、同社を設立。「人の未知なる可能性をひらく」をスローガンに、ウェルビーイングに関するラーニングプラットフォームを運営。株主134名、DAO型メンバーシップ約300名でウェルビーイングな世界を共創している。

むろき優理さん

株式会社ヒューマンポテンシャルラボ Wisdom Commons Lab ビーイング担当

都内中学・高等学校の英語教員を経たのち、ハワイに渡米。音楽家・自然療法家となる。
3.11をきっかけに日本縦断しながら「意識のコミュニティラジオ」をキャッチフレーズにWell-Beingな暮らしを実践する人々のインタビューをネットラジオで配信。暮らしといのちのアップデートを図る大人のためのラジオ講座を配信すると共に、全国12ヶ所に寺子屋をプロデュースする。
2017年より葉山の里山の森で自然体験学習の場を開く「うみやま葉山」と、ヒューマンポテンシャルラボの立ち上げを通して、多世代・多様性に富む人々が共に未来を育みあえる次世代型「共育・共創」のラーニングコミュニティづくりに愛を注いでいる。

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