Biz4-Well-Being

公開日: / 最終更新日:

共に未来を創る「パートナー」へ。住友商事が描く、個人の成長と事業の成長・社会への貢献をつなぐ「Why」のストーリー

「事業は人なり」。400年以上にわたるこの住友の事業精神を受け継いできた住友商事が、今、会社と社員の関係性のアップデートに挑んでいる。

その試みのひとつが、社内に点在する多様なHRの制度や施策を「木」になぞらえて一本のストーリーでつなぎ、その真意を伝えていく取り組みだ。株式会社ECOTONE(エコトーン)と共に数カ月に及ぶ対話とワークショップを重ねる中で、施策のつながりと循環を可視化するモチーフが描き出された。

共創の起点となったのは、HR自身が抱いていた「問い」。現在までに打ち出してきた数多くの施策は、社員にとって真に意味あるつながりとなっているのだろうか。エコトーンとのセッションを通じて、HRは「管理者」という従来の枠を脱ぎ捨て、一人の社員として葛藤や理想をさらけ出した。

そうした試行錯誤を経て辿り着いたのが、個の志を社会の価値へ転換し、その手応えを糧に再び個を育む「循環」のメタファーである。

本プロジェクトを推進する住友商事の百済なつきさんと、ECOTONEの左達也。二人の対談から、施策の真意をひとつの物語として可視化し、社員が自らの挑戦のために「自分ごと」として活用できるよう描かれた物語の本質に迫る。

 

百済 なつきさん

住友商事株式会社 人事総務部

⼊社以来、⼈事で経験を積む。採⽤、配置や⼈事制度関連業務を経て、シンガポールにてアジア⼤洋州地域の⼈事業務に従事。帰任後、育休を経て、労務管理や働き⽅改⾰等を担当。現在は主に、人的資本の情報開示におけるストーリー設計・推進に取り組む。

https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/

左 達也

株式会社ECOTONE 取締役CWO/Wellulu副編集

福岡市生まれ。九州大学経済学部卒業後、博報堂に入社。エンゲージメント・ビジネスユニット(EBU)で全社のデジタル・データシフトを牽引し、生活総合研究所では「生活者発想」を広める教育プログラムを開発。ミライの事業室で立ち上げたWell-beingビジネスをメディア「Wellulu」として結実させ、日米のグローバルVC「WiL」との連携のもと博報堂からカーブアウト。ウェルビーイング産業の創造を掲げる株式会社ECOTONE取締役CWOに就任。誰もが「ウェルビーイングにはたらく」を選べる社会を、新しい当たり前に。

https://ecotone.co.jp/

目次

会社と社員が互いに高め合う関係性を築くための「Why」を紡ぐ新たな挑戦

左:今回の『めぐりの大樹』というコンセプト設計におけるワークショップで印象的だったことがあります。それが、HRのみなさんが組織の論理ではなく、一人の社員としての等身大な視点に立ち返って議論を尽くされていたことでした。

そこで、まずは百済さんのパーソナルな部分から紐解いていければと思います。今のキャリアにつながるような、人や組織への関心が芽生えた原体験などはありますか?

百済:じつは、HRに配属されたのは本当に偶然だったと思います。第一希望は営業でしたが、住友商事に入社したきっかけは「人」に魅力を感じたことだったので、コーポレート部門ならHRかな、という興味は持っていましたね。

幼少期から高校卒業まではアメリカで生活をし、大学では国際協力の団体でも活動していたことが背景にあり、「世界中どこに行っても、一緒に仕事をしたいと思われる人になりたい」という思いが強く、グローバルな舞台である商社を志望しました。

左:幼少期からアメリカに住んでいたのですね。

百済:小学生までは日本人学校に通っていたのですが、「せっかくアメリカにいるなら現地校で頑張ってみよう」と自ら決めて、中学生からは現地校に通いました。

左:それは相当な勇気ですね。自らマイノリティに飛び込んだわけですね。

百済:中学時代はかなり苦労しました。でも、自分で決めたからには、自分でやり抜こうと。あの時の「自ら未知の環境を選び、適応していく」という経験は、正解のない領域に挑む今の仕事観の根っこにあるかもしれません。

左:その後、入社以来HRで幅広く経験を積まれていますが、特にここ数年の変化は激しいのではないですか。

百済:驚いたのは、「人的資本経営における外部開示」という、今まで存在しなかった新たな仕事が生まれたことです。

左:正解もなく、前例もない。まさに経営の根幹に直結する仕事ですよね。

百済:単に数字を開示するだけでなく、「中長期的に当社がどう人財戦略を描き、会社を強くしていくか」という企業の根幹に携わる仕事です。経営層と何度も議論を重ねていく中で、もはやHR単体で完結する業務ではなくなっています。

左:人を中心とする商社において、経営戦略と人財戦略が完全に同期している証拠ですね。その「開示」のプロセスで、もどかしさを感じることはありますか?

百済:求められる定量的なフレームワークだけでは、当社の真意が伝えきれないもどかしさはあります。例えば「男性育休の取得率」。もちろん希望者が性別に関係なく取れる環境は不可欠ですが、私たちは数字そのものを追い求めることはしません。

取りたい人が当たり前に取れることが重要であって、数字を上げるために無理やり取らせるようなことはしたくない。それは本質ではないからです。

会社は多様な選択肢を用意し、またそれを活用できる環境を整備することで、社員一人ひとりが自身のライフステージに向き合いながら中長期的なキャリア形成を築いていけるようにすることが本質だと考えています。

左:多様な人が、多様な選択をするための制度のはずが、数字という「手段が目的化」してしまう恐れがあるのですね。今回の開示において、社員のみなさんの反応はいかがですか。

百済:現状、開示はどうしても対外的なコミュニケーションに留まりがちです。しかし、本来大切なのは、社員一人ひとりがこれらを「自分ごと」として捉えること。

社内には多くの素晴らしい制度がありますが、それらがバラバラに存在していると、社員にはなかなか届きません。今回のコンセプト化プロジェクトは、個々の施策が「どのような想いで、何を目指して作られたのか」という背景(Why)を一つのストーリーとしてつなぎ、社員が制度を「自分ごと」として活用して働きがいを最大化することを目的にスタートしました。

左:一般的に会社のHR施策では、何をやるのか(What)、どうやってやるのか(How)の話が先行しがちですが、なぜ(Why)を理解してもらうことはとても重要です。でなければ、制度や施策が先行してしまって、当初の目的とは異なる捉えられ方になってしまう可能性もあり得ます。

百済:テレワークはその典型かもしれません。社員にとって単なる「権利」として捉えられてしまうと、本来の目的である「パフォーマンスの最大化」という本質が見失われてしまいます。

左:多くの企業が直面している課題です。Whyが浸透していなければ、個人の都合と組織のパフォーマンスが対立構造になってしまいますからね。

百済:「Why」が共有できていれば、必要以上にルールを細かく縛らなくても、自ずと正しい判断基準が生まれるはずです。HRとして、施策の裏側にある「想い」をどう工夫して伝えていくか。そこが今、私たちが一番向き合っている部分です。

HRも一人の「社員」であるという気づき。管理を超えた「投資し合う関係」へ

左:今回、百済さんはじめHRのみなさんとワークショップをさせていただきました。振り返ってみていかがでしたか。

百済:施策の中身を議論するのとは全く異なる時間でしたね。それぞれの担当者のこれまでのキャリアや大切にしている価値観を深掘りしたことで、「だからあの時、この人はこう感じていたのか」という相互理解が深まったのが新鮮でした。

左:大企業のHR部ほど、個人の感情を抑えて「組織の代弁者」として振る舞いがちですが、まずは自分自身の「WILL(志)」や「ウェルビーイング」に誠実になることが、人的資本経営の第一歩かもしれませんね。

百済:これまで、会社として盤石な「土壌」となる制度を整えてきましたが、手厚い制度が単なる「安住の地」になってはいけないという危機感も持っています。制度は、あくまでも高い志を持って挑戦するための「足場」であるべきだからです。

左:入社後の初期配属先を希望できる「WILL選考」などの導入も、その足場の上で個をエンパワーメントする流れのひとつですよね。

百済:「自律的なキャリア」というのは、社会的にもひとつのキーワードになっていると思います。日本社会において、以前は、新卒一括採用・終身雇用を前提に会社が社員の管理を行い、社員が会社に尽くすというような関係性があったと思います。しかし今は、個々人が「自分のWILLはどこで実現できるのか」を問い直す時代になっており、会社側も、「社員のWILLが実現できる場所かどうか」が問われる存在になってきていると考えています。

そうなると、社員と会社はもっと対等な「パートナー」であるべきだと考えています。

社員は自分の貴重なスキル・経験、そして情熱や時間という資本を会社に投資し、会社はその投資に対して、金銭的な報酬のみならず、成長の機会ややりがいというリターンを提供する。管理する・されるという関係ではなく、互いの成長に投資し合う。そんな双方向の関係性へのアップデートが求められていると感じます。

左:その分、一人ひとりの価値観や強みに向き合う必要があり、マネジメントの難易度は上がっていると感じます。

百済:まさに、ルールを正しく運用するだけのマネジメントは通用しなくなっています。HRが提供する多様な選択肢の中から、目の前のメンバーが最も力を発揮し、目指す方向に向けてチームとしての力を最大化させていける「ベストな一択」を、上司と部下が対話で見つけ出していく。この「対話」こそが、大樹の根となる信頼関係を築く鍵になります。

左:ワークショップでも感じましたが、住友商事さんには元々「人が好きで、対話を重んじる」カルチャーが根づいていますよね。

百済:人が好きな方は多いですね。ただ、これまでは価値観が似た者同士の「暗黙知」が通用していた部分もありました。人財が多様化している今こそ、相手のことを「わかったつもり」にならず、バイアスを捨てて純粋に「聴く」「理解する」ことが重要ですね。HRとしても、管理の目線ではなく、一人のパートナーとして社員と向き合い続けたいと、自戒を込めて感じています。

循環する『めぐりの大樹』が描く、自律と共創の未来

『めぐりの大樹』の全体像。施策のつながりと循環を可視化している。フルスイングを支える盤石な「土壌」を整え、信頼を分かち合う「根」を張り、多彩な強みが響き合う「枝葉」を広げる。その先に、社会を動かしたという手応えの「果実」が実り、その経験が再び一人ひとりの「志(幹)」を太く育て上げ、また次の挑戦へと向かう「循環」を生む。

左:自律的なキャリアが求められる一方で、「自分のWILL(志)が何かわからない」とプレッシャーに感じる人もいます。今回、数ある施策を一本のストーリーとしてつなぐために描かれたモチーフでは、そんな一人ひとりの迷いも包摂する「循環」を表現しました。

最近よく言われる「WILL重視」だけでは社員が迷子になりやすいからこそ、このサイクルを回すことが重要だと考えています。

百済:商社を志望する方は「社会的意義のある仕事をしたい」という志を持つ人が多いですが、日々の業務の中でその手応えをどこまで実感できているかは人それぞれです。

だからこそ、自分の仕事が事業を成長させ社会を豊かにしているという手応えや、組織の力になれているという貢献実感、そして何より自分自身の成長。このような「果実」をしっかりと分かち合えることが理想だと考えています。そのたしかな実感が得られて初めて、自分の「志」が何だったのか、改めて気づけることもあると思います。

左:まさに「果実」からの逆算ですね。だからこそ、バラバラに見えがちなHR施策を「点」で伝えるのではなく、この大樹のような「循環」というストーリーの流れで伝えることが必要ですね。

百済:会社が制度を「管理」し、社員に「提供」する。そんな一方通行の関係ではなく、会社と社員は互いに高め合うパートナーでありたい。どれだけ一人ひとりのWILLを引き出し、会社や事業が目指す方向性と重なり合わせ、価値創造につなげられるかが重要ですが、それをHRから押し付けたくはないと思っています。

左:その果実、つまり「リターン」とは何なのか。数字を追うだけでなく、自分の仕事がどう社会課題につながっているのかを語り合う。こうした本質的な対話が現場で生まれると、仕事の意味合いも変わってきます。

百済:ワークショップを経て、ウェルビーイングやモチベーションの因子は、本当に人それぞれ違うものだと痛感しました。相手が何を「面白い」と思い、何に「充足感」を覚えるのか。それを知らないままでは、どんなメッセージも響きませんね。

左:自分にとってのウェルビーイングと、他者のそれは全く異なります。だからこそ、対話を通じて、お互いの「心地よさ」を理解し合うことが大切です。会社の中での関係も同じで、働いている姿だけでなく、「親」や「子」の側面や週末の「少年野球のコーチ」といった多様な生活者としての側面もひっくるめたその人の根っこの「WILL」を知ることが、本当の信頼関係につながります。

百済:相手のウェルビーイングを知らないまま対話をしても、どこかでボタンの掛け違いが起きてしまいますよね。「生活者」としての視点を持たなければ、本当の意味で人を活かすことは難しいと改めて感じます。

左:では、最後に百済さん自身がウェルビーイングを感じる瞬間はどんな時かお聞かせください。

百済:HRの「一人ひとりの力を引き出す」ミッションは、日ごろから強く意識している部分です。チームのメンバーや、プロジェクトの仲間がそれぞれの強みを存分に発揮し、「やって良かった」という喜びを分かち合える瞬間は、私にとってのウェルビーイングになっています。周囲のメンバーが「果実」を得て、生き生きと変化していく姿を見ることが、私自身のモチベーションに直結しています。

左:人的資本経営のミッションそのものが、百済さんの個人的なウェルビーイングとも重なっているのですね。

百済:まだまだ私たちの挑戦は始まったばかりですが、一人ひとりのWILLや強みを、会社・事業が目指す方向性と重ね合わせ、事業の成長と社会をより豊かにする価値へと転換させていく。そんな組織を、社員のみなさんと一緒に創り上げていきたいです。

RECOMMEND

←
←

Biz4-Well-Being

【グラミン日本 中川理恵氏】仕事三昧の日々から、自分らしく「鎧」を脱げた転機とは

Biz4-Well-Being

【徳成旨亮氏×堂上研:後編】『CFO思考』著者が語る、ウェルビーイングに生きる意識の持ち方。趣味から生まれた感動の出会い

Biz4-Well-Being

花を買う文化の国は幸福度が高い? 廃棄される花を再生する「ロスフラワー®︎」から生まれる物語〈RIN〉

Biz4-Well-Being

経営者こそ考えるべき。“働く”を、自分の言葉で問い直す

Biz4-Well-Being

がんばらなくても続けられる仕組みを。花王・小林恵美さんが目指す「勝手にウェルビーイング」の共生社会

WEEKLY RANKING

←
←

Others

すき家の牛丼のカロリー・栄養成分一覧表!ダイエット中におすすめのカロリーが低いメニュー7選

Others

骨格筋量・骨格筋率の平均はどれくらい?男女・年齢別の目安や筋肉量との違いも紹介

Others

ローソンで買えるダイエット食品50選!低糖質で高タンパクなダイエット飯を紹介

Others

セブンイレブンで買えるダイエット食品50選!朝・昼・夜におすすめのごはんやおやつも紹介

Others

ベンチプレスは何キロからすごい? 平均重量や男女別・レベル別の違いも紹介