インクラインベンチプレスは、大胸筋の中でもとくに上部を重点的に鍛えられる代表的な種目。この記事では、インクラインベンチプレスの正しいフォーム・重量設定・効かない原因をわかりやすく解説。さらに、Wellulu編集部が実際にバーベル・スミスマシン・ダンベルの3種目を比較検証し、それぞれの特徴やおすすめの選び方も紹介している。
これからインクラインベンチプレスに挑戦したい人は、ぜひ参考にしてみてほしい。
この記事の監修者

三矢 紘駆さん
日本体育大学助教 日体大ボディビル部監督
この記事の検証者

吉田 健二さん
Wellulu編集部
学生時代は運動部に所属。過去にトレーニングの継続を二度挫折したが、6ヵ月前から再びジム通いをスタート。現在は「続けられる筋トレ習慣」をテーマに、週2〜3回の全身トレーニングを中心に実践している。
【検証】バーベル・ダンベル・スミスマシンどれがやりやすい?


検証者:吉田
実際に3種目に取り組んでみた結果、以下のようになりました。
・初級~中級の男性:スミスマシンインクラインベンチプレスがおすすめ
・初級~中級の女性:インクラインダンベルプレスがおすすめ
スミスマシンは高重量でもバーベルの軌道がブレない・安定性が高いため、20~40㎏程度の重量えトレーニングをする人におすすめです。また、ダンベルは片手0.5㎏ずつ重量を調整できるため、女性でも安心してトレーニングできます。
▶スミスマシン・ダンベルを使ったインクラインベンチプレスのやり方を見る
インクラインベンチプレスとは?

インクラインベンチプレスは、角度をつけたインクラインベンチに仰向けでおこなう筋トレ種目。上半身を斜めにすることで、大胸筋の中でも上部を中心に刺激を与えやすくなる。フラットなベンチでおこなう種目とは負荷の方向が変わり、胸に立体感を出す目的で取り入れられることが多い。
- インクラインベンチプレスとベンチプレスの違い
- インクラインベンチプレスのメリット・デメリット

監修者:三矢
インクラインベンチプレスは、フラット種目よりも動作が難しく重量が伸びにくいと感じる人も多いと思います。最初は無理に重さを追うよりも、バーベルを下ろす位置と押し出す方向を安定させる意識が大切です。
インクラインベンチプレスとベンチプレスの違い

最大の違いはベンチの角度と負荷がかかる部位。ベンチプレスはフラットベンチを使用し、大胸筋全体や中部への刺激が強くなりやすい。一方、インクラインベンチプレスはインクラインベンチを使うことで腕の軌道が変わり、大胸筋上部の関与が高まる。

検証者:吉田
普段はフラットのベンチプレスが中心ですが、インクラインでおこなうと押し出す方向が変わり、胸の上のほうに効いている感覚がはっきりわかりました。初心者の方でも、アクセントとして取り入れてみる価値はありそうだと感じました。
▼大胸筋全体を鍛える場合はベンチプレスがおすすめ
「ベンチプレス」の正しいやり方・フォームや効果は?重量や回数、RM換算についても解説
「ベンチプレス」の検証ポイント 【難易度】 トレーニングレベルに関わらず、正しいフォームを習得できるか? 何回目の練習で正しいフォームを習得できたか? どの部分.....
インクラインベンチプレスのメリット・デメリット

大胸筋上部を重点的に鍛えられる点が最大のメリット。胸の上部が発達すると、正面から見た厚みや鎖骨下の立体感が強調されやすい。ベンチプレスだけでは刺激が入りにくい部位を補えるため、ジムでの筋トレをよりバランスよく組み立てやすくなる。

監修者:三矢
インクラインベンチプレスとベンチプレスを同日におこなう場合、基本は高重量を扱いやすいベンチプレスを先にしましょう。しかし、インクラインでの動作に苦手意識がある人は先にインクラインベンチプレスを配置するのもおすすめです。疲労が少ない状態でおこなうことで、押し出す方向や胸上部の使い方を意識しやすくなります。
インクラインベンチプレスは大胸筋上部に効く

インクラインベンチプレスは、大胸筋の上部に刺激を集中させやすいトレーニング。胸筋の中でも上部は発達が遅れやすく、見た目の厚みや立体感に直結する部位。筋肥大を狙ううえで、胸全体のバランスを整えたい場合に優先度が高くなる種目。
【目的別】大胸筋上部を鍛えるメリット
| ボディメイク | 大胸筋上部が張ると胸の立体感が増す。肩との境目が強調され、下部より印象変化が分かりやすい |
| ダイエット | 胸筋群の中では体積が大きい。下半身ほどではないが、基礎代謝への影響は上半身種目では高い |
| 健康や体力 | 日常動作をスムーズにし、肩まわりの安定性を高める |
| 身体能力 | 物を投げる・打つなどの動作にも影響する。鍛えることで力の立ち上がりが速くなり、胸下部より腕の加速を支えやすい |

監修者:三矢
インクラインベンチプレスは大胸筋上部を狙う代表的な種目です。他に自重やケーブル種目と組み合わせることで刺激に変化をつけやすくなり、大胸筋上部をより安定して鍛えやすくなります。
▼大胸筋上部にアプローチできる他種目を紹介
大胸筋上部を大きくする筋トレ8選!ダンベルや自重・腕立て伏せでの鍛え方
「大胸筋上部の筋トレ」の検証ポイント 【難易度】 トレーニングレベルに関わらず、正しいフォームを習得できるか? 何回目の練習で正しいフォームを習得できたか? ど.....
インクラインベンチプレスのやり方・ベンチの角度
| 難易度 | ★★★★☆ |
| 続けやすさ(※1) | ★★☆☆☆ |
| トレーニング効率(※2) | ★★★☆☆ |
※1:続けやすさ = トレーニングができる場所の自由度/器具や設備の必要性
※2:トレーニング効率 = 複数部位にアプローチできるか/負荷調整できるか
- ベンチの角度を30~45度に設定する
- 胸を張り、肩より広い手幅でバーベルを持つ
- 鎖骨に向けてバーベルを下ろす
- バーベルをまっすぐ待ちあげる
| バリエーション | 約3種類 |
| ケガのリスク | 高い傾向 |
| 実施できる場所 | ジム |
| 器具・設備 | バーベル |
| 負荷の調整 | 可能 |
STEP1:ベンチの角度を30~45度に設定する

- ベンチの角度は45度が基準。※レベルに応じて30度に調整する

監修者:三矢
インクラインベンチの角度は45度が目安ですが、最初から高めに設定する必要はありません。まずは30度前後で、バーベルの軌道や押し出す方向が安定するかを確認しましょう。フォームが安定してきた段階で、角度を45度に設定する方法がおすすめです。

検証者:吉田
角度を浅めにすると大胸筋上部への刺激は弱くなりますが、フォームが安定しやすく重量も扱いやすく感じました。いきなり角度をつけすぎるより、まずは押しやすい角度から始めたほうが、動作の感覚をつかみやすい印象です。
STEP2:胸を張り、肩より広い手幅でバーベルを持つ

- 肩甲骨を寄せるイメージで胸を張る

監修者:三矢
スタート姿勢では肩甲骨を軽く寄せた状態を作ることで、胸を張りやすくなります。手幅が狭すぎると腕の力に頼りやすくなり、広すぎると可動域が制限されるため、胸で押せているかを基準に微調整することが大切です。

検証者:吉田
背もたれに背中をしっかり預けた状態で構え、首を少し長く保つ意識を持つと姿勢が安定しました。胸を張りやすくなり、バーを下ろす位置もぶれにくく感じます。最初のセットアップを整えるだけで押しやすさが変わるのが印象的でした。
STEP3:鎖骨に向けてバーベルを下ろす

- 鎖骨の位置(大胸筋上部の筋肉がしっかり伸びる位置)に下ろす

監修者:三矢
インクラインベンチプレスでは、バーベルを胸の中央ではなく鎖骨付近へ下ろす軌道を意識します。この位置に下ろすことで、ひじが自然と体側に向かい、大胸筋上部がしっかり伸ばされやすくなります。反動を使わず、下ろす局面をコントロールすることで、狙った部位への刺激を逃がしにくくなります。

検証者:吉田
最初は重量に引っ張られて、バーベルを下ろす位置が低くなりがちでした。そのため、初心者の人は重量を少し落としたほうが動作を安定させやすいはずです。
STEP4:バーベルをまっすぐ持ちあげる

- バーベルの軌道は地面に対して垂直に持ち上げる

監修者:三矢
切り返しでは、下ろした位置からバーベルをまっすぐ押し上げる意識が重要です。押し上げる途中で軌道が弧を描くと、フォームが崩れやすくなり、肩への負担も増えやすくなります。胸を張った姿勢を崩さず、毎回同じ軌道で動作を繰り返すことで、狙った部位へ安定して刺激を入れやすくなります。

検証者:吉田
押し上げるときにバーベルが頭側へ流れやすいと感じました。大胸筋上部にアプローチするためには、真上へ押し出すことが大切。最初は動画などでチェックしながらおこなうとよさそうです。
インクラインベンチプレスが効かない原因を検証

インクラインベンチプレスが効かないと感じる場合、多くは角度やフォームのズレが原因。見た目は同じ動作でも、ベンチ角度やバーベルの軌道がわずかに違うだけで刺激の入る部位が変わる。
- ベンチの角度が間違っている
- バーベルを下ろす位置を間違っている

検証者:吉田
トレーニング歴6ヵ月の編集スタッフが検証!
Wellulu編集部スタッフが、インクラインベンチプレスでよく見られる間違い例を再現しながらトレーニングの変化を検証しました。同じ回数・重量でも胸上部への効き方に明確な差が出るため、トレーニング効率を高めるポイントとして、初心者は①ベンチ角度・②バーベルの軌道をとくに意識した方がよさそうです。
ベンチの角度が間違っている


検証者:吉田
角度設定がずれるだけで、効いている部位の感覚が大きく変わりました。30度未満だと胸全体には効くものの上部への負荷はかなり弱くなりました。反対に45度を超えると肩に力が入りやすく、胸上部の効きが分かりにくく感じました。
バーベルを下ろす位置を間違っている


検証者:吉田
バーベルを下ろす位置が安定しないと、動作全体がぶれやすく、効きも散ってしまう印象です。胸より下に下ろすと腕や手首への負担が増し、逆に顔側に下ろすと肩への刺激が強くなります。毎回同じ軌道を再現できているかが、見直しのポイントだと感じました。
インクラインベンチプレスの重量

インクラインベンチプレスの重量は、筋力や経験レベルによって適正が変わる。無理に重さを追わず、安定したフォームで回数をこなせる負荷設定が重要。特に初心者は安全性を優先し、セットを通して可動域を保てる重量から始めることで、ケガを避けつつトレーニング効果を高めやすくなる。
【男性】体重別の重量目安
| 体重 | ビギナー | 初心者 | 中級者 | 上級者 |
|---|---|---|---|---|
| 50㎏ | 22㎏ | 34㎏ | 49㎏ | 67㎏ |
| 55㎏ | 27㎏ | 40㎏ | 56㎏ | 76㎏ |
| 60㎏ | 32㎏ | 46㎏ | 63㎏ | 83㎏ |
| 65㎏ | 36㎏ | 51㎏ | 70㎏ | 91㎏ |
| 70㎏ | 41㎏ | 57㎏ | 76㎏ | 98㎏ |
| 75㎏ | 45㎏ | 62㎏ | 82㎏ | 105㎏ |
| 80㎏ | 50㎏ | 67㎏ | 88㎏ | 112㎏ |
| 85㎏ | 54㎏ | 73㎏ | 94㎏ | 119㎏ |
| 90㎏ | 59㎏ | 78㎏ | 100㎏ | 125㎏ |
| 95㎏ | 63㎏ | 82㎏ | 105㎏ | 131㎏ |
| 100㎏ | 67㎏ | 87㎏ | 111㎏ | 137㎏ |
【女性】体重別の重量目安
| 体重 | ビギナー | 初心者 | 中級者 | 上級者 |
|---|---|---|---|---|
| 40㎏ | 5㎏ | 13㎏ | 26㎏ | 42㎏ |
| 45㎏ | 7㎏ | 16㎏ | 29㎏ | 47㎏ |
| 50㎏ | 9㎏ | 19㎏ | 33㎏ | 51㎏ |
| 55㎏ | 11㎏ | 21㎏ | 36㎏ | 56㎏ |
| 60㎏ | 12㎏ | 24㎏ | 40㎏ | 60㎏ |
| 65㎏ | 14㎏ | 26㎏ | 43㎏ | 64㎏ |
| 70㎏ | 16㎏ | 29㎏ | 46㎏ | 67㎏ |
| 75㎏ | 18㎏ | 31㎏ | 49㎏ | 71㎏ |
| 80㎏ | 20㎏ | 33㎏ | 52㎏ | 74㎏ |
| 85㎏ | 21㎏ | 36㎏ | 54㎏ | 77㎏ |
| 90㎏ | 23㎏ | 38㎏ | 57㎏ | 81㎏ |
参考資料:Strength Level
インクラインベンチプレスの種類
- スミスマシンインクラインベンチプレス
- インクラインダンベルプレス
スミスマシンインクラインベンチプレス
| 難易度 | ★★☆☆☆ |
| 続けやすさ(※1) | ★★★☆☆ |
| トレーニング効率(※2) | ★★☆☆☆ |
※1:続けやすさ = トレーニングができる場所の自由度/器具や設備の必要性
※2:トレーニング効率 = 複数部位にアプローチできるか/負荷調整できるか
- ベンチの角度を30〜45度に設定する
- セーフティーストッパーとバーベルの位置を調整する
- バーベルが胸上部のラインに来るようにセットする
- 肩甲骨を寄せて胸を張り、バーベルをフックから外す
- ゆっくりとバーベルを胸上部へ下ろす
- バーベルを持ち上げて元の位置へ戻す
- 10回を目途に繰り返し、終わったらバーベルをフックにかける
| ケガのリスク | 低い傾向 |
| 実施できる場所 | ジム |
| 器具・設備 | スミスマシン |
| 負荷の調整 | 可能 |
スミスマシンの設定
| セーフティーストッパーの目安位置 | みぞおちに設定 |
| 最初のバーベル目安位置 | ひじを少し曲げた状態でバーベルを持てる位置 |
- 胸の上部にバーベルが落ちる位置に調整する
- 肩をすくまない
胸の上部にバーベルが落ちる位置に調整する

肩をすくまない


監修者:三矢
スミスマシンを使ったインクラインベンチプレスは、バーベルの軌道が固定されているため、フォームを安定させやすい点が特徴です。バランスを取る負担が少なく、胸上部へ意識を集中しやすいため、フォーム習得段階や高重量を扱いたい場面で有効です。

検証者:吉田
軌道が決まっている分、動作に迷いがなく、胸上部へ集中しやすいと感じました。フリーウエイトよりも安定感があり、重量を上げてもフォームが崩れにくい印象です。インクラインに苦手意識がある人でも、感覚をつかみやすい種目だと思いました。
▼スミスマシンの設定方法について詳しく見る
インクラインダンベルプレス
| 難易度 | ★★★☆☆ |
| 続けやすさ(※1) | ★★★★☆ |
| トレーニング効率(※2) | ★★★☆☆ |
※1:続けやすさ = トレーニングができる場所の自由度/器具や設備の必要性
※2:トレーニング効率 = 複数部位にアプローチできるか/負荷調整できるか
- ベンチの角度を30~45度に設定する
- 胸を張り、肩より広い手幅でダンベルを持つ
- 鎖骨の横にダンベルを下ろす
- ダンベルをまっすぐ待ちあげる
| ケガのリスク | 低い傾向 |
| 実施できる場所 | ジム、自宅 |
| 器具・設備 | ダンベル |
| 負荷の調整 | 可能 |
- ベンチの角度は45度を基準に設定する
ベンチの角度は45度を基準に設定する


監修者:関根
インクラインダンベルプレスは、バーベルより可動域が広くなるのが特徴です。ダンベルは軽い重量から細かく調整できるため、フォーム習得段階やインクライン種目に慣れていない場合でも始めやすい点もメリットです。高重量を扱う場合は、バーベルよりも軌道がずれやすくなるため注意しましょう。

検証者:吉田
バーベルに比べて動きの自由度が高く、胸がしっかり開いて伸びている感覚が分かりやすかったです。その分、最初は安定させるのが難しく、重量を控えめにしたほうが動作をコントロールしやすいと感じました。
▼大胸筋を鍛えるダンベル種目について詳しく見る
インクラインベンチプレスに関するQ&A
インクラインベンチプレスは必要ない?
A: 大胸筋の立体感や厚みを出す目的であれば、インクラインベンチプレスも取り入れよう

監修者:三矢
インクラインベンチプレスが必要かどうかは、胸トレで何を重視するかによって変わります。フラットベンチプレス中心でも大胸筋全体は鍛えられますが、上部の厚みや鎖骨下の立体感を狙う場合は優先度が高くなります。見た目の変化をはっきり出したい場合には、メニューに組み込む価値があります。一方、トレーニング時間や頻度が限られる場合は、補助種目として調整する考え方も現実的です。
初心者でも取り入れるべき?
A: 初心者にもおすすめ。重量とフォームには注意しよう。

監修者:三矢
初心者でもインクラインベンチプレスを取り入れること自体は問題ありませんが、重量設定とフォームには注意が必要です。筋力が十分でない段階では、重さを抑えて動作の安定を優先したほうが安全です。最初はフラット系種目を軸にし、フォームに慣れてきた段階でインクラインを加える流れも有効です。















2024年日本体育大学大学院体育科学研究科博士課程修了。博士(体育科学)。日本体育大学体育研究所助教であり、同学のボディビル部にて監督およびボディビルクラブ代表を務める。2024年におこなわれた第38回東京クラス別ボディビル選手権大会では、ミスター75kg以下級にて優勝。
【資格】
NSCA-CSCS