
自重トレーニングだけでは物足りなくなってきた人におすすめなのが、ダンベルを使った腹筋トレーニング。ダンベルトレーニングは負荷を調整しやすいため、より効果的に腹筋を刺激できる。
一方で、「どんなトレーニングをしたらいいかわからない」「重量設定の目安は?」など、正しい進め方に迷っている人も多いはず。この記事では、ダンベルを使った腹筋トレーニングの効果や具体的な筋トレメニュー、効果を高めるコツを詳しく解説。
この記事の監修者

井上 大輔さん
NSCA認定パーソナルトレーナー
筋トレで鍛えられる腹筋の部位
腹筋は1つの筋肉ではなく、いくつかの筋肉で構成されている。そのため、それぞれの部位を意識して鍛えると、より効率的に理想の体型に近づける。鍛えられる部位は大きく3つ。
- 腹直筋
- 腹斜筋
- 腹横筋
下記の記事では鍛えられる部位と役割について詳しく解説しているので、気になる人は参考にしてみよう。
腹筋を割るため部位別の筋トレメニュー!自宅でできる女性向けメニューも紹介
「腹筋」の部位とその役割 基本的に腹筋は、「腹直筋」「腹斜筋」「腹横筋」の3つの部位に分かれる。それぞれの部位の役割や鍛え方を理解することで、効率よく理想の腹筋.....
腰を曲げ伸ばしする腹筋はよくない!その理由とは?
腰を曲げ伸ばしする腹筋トレーニングは腰を痛めるリスクがあるため、おすすめできない。腹筋の本来の役割は、姿勢をまっすぐに保持すること。
身体を曲げ伸ばす運動は腹筋本来の役割とは異なり、生物の進化過程から見ても不自然な動き。とくにツイストやクランチは腰への負担が大きく、ヘルニアのリスクを高める可能性があるため要注意。
腹筋を鍛えるおすすめの筋トレは、プランクやヒップリフトのような姿勢を維持するトレーニング。うつ伏せのプランク、横向きのプランク、仰向けのヒップリフトなどを組み合わせて、効果的に腹筋を鍛えよう。

ダンベルで腹筋を鍛えることで得られる効果
自重トレーニングに比べ、ダンベルを使った腹筋トレーニングは筋肉にかけられる負荷が大きいため、慣れるまではきついと感じるかもしれない。しかし、その分、筋肉への刺激が大きく効果を得られやすい。
- 体幹が強化されてスポーツのパフォーマンスが上がる
- 姿勢がよくなり腰痛予防につながる
ダンベルを用いた腹筋トレーニングは体幹部全体の筋力と安定性が上がり、身体の軸が強くなる。その結果、走る・投げる・跳ぶなどの動作が安定し、スポーツパフォーマンスが向上する。
さらに、背骨を支える筋肉が強くなり腰への負担が軽減、腹部筋肉の強化により骨盤が安定して猫背や反り腰などの姿勢も改善される。ただし、身体を丸める腹筋運動には姿勢改善効果はあまり期待できないため、うつ伏せや横向きのプランク、仰向けのヒップリフトなどを組み合わせ、腹筋本来の力を高めるとよい。
ダンベルで腹筋を鍛える筋トレメニュー3選
ダンベルを使った腹筋トレーニングにはさまざまな種類があり、鍛える部位や強度によってメニューを自由に変えられる。ここでは、初心者から中級者まで取り組みやすい、ダンベルを使った腹筋トレーニングメニューを厳選して紹介。
- プランクでダンベルを乗せる
- ダンベルヒップリフト
- サイドベント
プランクでダンベルを乗せる
- プランクの姿勢から背中の上にダンベルを乗せる
- ひじを上げてプランク開始。状態を維持する
ダンベルヒップリフト
- 仰向けになり、ひざを90度に立てる
- ダンベルを腹部(骨盤のあたり)に置き、両手でしっかりと支える
- 息を吐きながらお尻を持ち上げ、肩からひざまでが一直線になるようにする
- その状態を1~3秒キープし、息を吸いながらゆっくりとお尻を元の位置まで下ろす
サイドベント
- 足を肩幅程度に開き、真っ直ぐに立つ
- 片手にダンベルを持って下ろし、ダンベルを持っていない方の手は頭の後ろに軽く添える
- 息を吐きながら、ダンベルを持っている方の身体をゆっくりと傾ける
- 息を吸いながらゆっくりと元の真っ直ぐな姿勢に戻る

ダンベル以外で腹筋を鍛える筋トレメニュー4選
自重トレーニングやほかの器具を使ったトレーニングなど、腹筋を鍛える方法はダンベル以外にもある。
ここでは、ダンベルを使わずに腹筋を鍛えられる筋トレメニューを紹介。ダンベルがない環境でも腹筋を鍛えたい人や、ダンベルトレーニングと相性がよい筋トレメニューを知りたい人は、ぜひチェックしてみよう。
- ひざつき腹筋ローラー
- バーベル担ぎ
- プランク
- バランスボールプランク
ひざつき腹筋ローラー
- ひざをついた状態で腹筋ローラーを持つ
- 腹筋を意識しながらローラーを前に転がす
- 元の位置に戻る

バーベル担ぎ
- バーベルを肩の後ろで担ぎ、両手でしっかりと支える
- 足は肩幅に開き、膝を軽く曲げながら安定した姿勢を作る
- 背筋を伸ばし、その場で数秒間キープする
プランク
- うつ伏せになり、両ひじを肩幅に開いて床につける
- つま先を立て、ひざと腰を床から浮かせて体を持ち上げる
- 頭からかかとまでが一直線になるように意識しつつ、腹筋に力を入れる
- お尻を上げすぎたり、腰を落としすぎたりせず、体幹が安定した状態をキープする
バランスボールプランク
- バランスボールの中央に両ひじを乗せて、つま先で身体を支える
- お腹に力を入れて腰を持ち上げ、頭からかかとまでが一直線になるように体幹を保つ
- 腹筋に力を入れ続け、バランスを崩さないよう正しい姿勢を維持する
ダンベルで腹筋を鍛える際の回数・頻度(目安)
筋肉を大きくする場合、1セット8~12回が一般的。正しいフォームを意識して、筋肉にしっかりと負荷をかけよう。
適切な重量は人によって異なるが、最後の数回で「もう無理」と感じる程度が目安。5kgのダンベルの場合、10回が限界の人もいれば20回できる人もいるが、どちらも疲労困憊になる重量でおこなえれば、得られる効果は同じ。
もし回数をこなす前にフォームが崩れてしまう場合は、重量が重すぎるか、筋肉が十分に温まっていない可能性がある。重要なのは1セットの回数ではなく、全体を通して正しいフォームを維持できた回数。
トレーニング時は無理をせず途中で短い休憩を取ったり、セット数を増やして1セットの回数を減らしたりと、体力レベルに合わせて調整しよう。
ダンベルを使った腹筋トレーニングの効果を高めるコツ
いくつかのポイントをおさえれば、腹筋トレーニングの効果はさらに高まる。正しいフォームや呼吸法、適切な重量設定など、効果を高めるためのコツを知っておこう。
- 正しいフォームを意識する
- 呼吸を止めずにおこなう
- 上げるときはすばやく、下げるときはゆっくり動作する
- 栄養バランスを意識した食事をとる
- トレーニング前後にストレッチを取り入れる
正しいフォームを意識する
腹筋トレーニングで重要なのは、正しい姿勢とブレイシング。ブレイシングとは、お腹を軽くパンチされる時のように、腹筋に軽く力を入れた状態を指す。基本姿勢とブレイシングを組み合わせるとトレーニング中の姿勢が安定し、腹筋へ効果的に刺激を与えられる。
なお、トレーニング中は背中を丸めすぎたり、顎を引きすぎたりしないなど、基本的な姿勢も常に確認したい。現代人は猫背気味になりがちなので、肩甲骨を寄せ、胸を張る意識を持つと、よりよいトレーニングができる。とくに初心者は鏡や動画も活用して、姿勢が崩れていないか常にチェックする意識が大切。

呼吸を止めずにおこなう
腹筋中に呼吸を止めると血圧が上がり、身体に悪影響を及ぼす可能性がある。動作に合わせて呼吸のリズムを作ることが、安全かつ効果的なトレーニングにつながる。また、自然な呼吸を心がけることで、より長時間のトレーニングが可能。無駄な力みが抜け、トレーニング全体のパフォーマンス向上も期待できる。
具体的には、力を入れるときに息を吐き、元の体勢に戻すときに息を吸うというリズムを意識したい。この呼吸法を意識すると腹筋への適切な負荷を維持しつつ、安全なトレーニングをおこなえる。
上げるときはすばやく、下げるときはゆっくり動作する
勢いをつけて反動を使うと、鍛えたい筋肉以外の部分も使ってしまい、トレーニングの効果が薄れてしまう。そのため、ダンベルを下ろす時(ネガティブ動作)は、2~3秒かけてゆっくりと下ろそう。時間をかけて下ろすことで姿勢が安定し、鍛えたい筋肉にしっかり負荷をかけることができる。
反対に、ダンベルを持ち上げる時(ポジティブ動作)は、素早く力を入れて持ち上げると神経が活発になり、トレーニング効果が高まる。ただし、初心者の場合は無理をするとケガにつながりやすいため、できる範囲で意識することが大切。
栄養バランスを意識した食事をとる
トレーニングの効果を高めるには、毎日十分な量のタンパク質を摂取することも大切。タンパク質は筋肉の成長に欠かせない栄養素なので、体重1kgあたり1.5~2.0gを目安に摂取しよう。
なお、タンパク質は体内でアミノ酸に分解されてから吸収されるため、摂ってすぐに役立つ栄養素ではない。そのため、摂取タイミングはトレーニングの約3時間前がベスト。糖質やビタミン、ミネラルなどもバランスよく摂取して、トレーニングの効果を十分引き出そう。
トレーニング前後にストレッチを取り入れる
トレーニング前は、5分程度のラジオ体操や軽いランニング、腕回しなど動的なウォーミングアップで身体を温め、筋肉や関節を活動状態にするとよい。一方、トレーニング後のクールダウンには、筋肉の緊張を和らげる静的ストレッチが有効。正しい静的ストレッチは筋肉の回復を促し、筋肉痛の軽減に役立つ。
なお、トレーニング前に静的なストレッチをおこなうと、筋力が一時的に低下する可能性があるため要注意。ケガのリスクを下げるためにも、ストレッチの種類はトレーニング前と後で使い分けて。
ダンベルがないときの代用品はある?
ダンベルの代用品としてはペットボトルが知られているが、重量は最大でも2kg程度に限られるうえ、女性には持ちにくい。そのため、より実用的なものとして、リュックサックがおすすめ。
ダンベルと違い、リュックサックはペットボトルのような重りを入れるだけで、負荷を自由に調整できる。また、プランクをする際にリュックを背負うなどすれば、より効果的に負荷をかけられる。重りの数は適宜調整して、自分に合った負荷を探してみよう。

リュックサックは手軽に負荷を調整できるため、ダンベルの代用として役立ちます。ストラップを利用すれば、ダンベルと同様の動作をおこなうトレーニングも可能なので、プランク以外のさまざまなトレーニングにも応用できますよ。
ダンベルの腹筋トレーニングに関するQ&A
ダンベルを使った腹筋は毎日続けられる?
A:負荷にもよるが、筋肉の回復を考慮すると、腹筋を毎日集中的に鍛えるのは避けたい。

筋肉には、トレーニングによって微細な損傷を受け、回復する過程で以前より強くなる「超回復」という現象が起こります。毎日同じ部位、とくにダンベルを使用して負荷をかけた腹筋トレーニングをおこなうと、筋肉が十分に回復する時間が取れず、筋力アップや筋肥大の効果が薄れてしまう可能性があります。
そのため、腹筋トレーニング後には適切な休息期間を設けることが大切です。腹筋は比較的回復が早い部位ですが、高負荷のトレーニングをおこなった場合は、休息日を挟むことをおすすめします。
どのくらいで効果が実感できる?
A:最短で3ヶ月、平均的には6ヶ月程度で見た目に変化が現れる。

腰痛もちの人もトレーニングして平気?
A:腰痛がある場合、腹筋の曲げ伸ばし運動は症状を悪化させる可能性があるため避けるべき。

腰痛をお持ちの方が腹筋トレーニングをおこなう際は注意が必要です。とくに身体を大きく曲げ伸ばすような運動は腰に負担をかけ、痛みを悪化させる可能性があります。腰痛がある間は安静にし、痛みが落ち着いてきたら体幹を安定させるプランクなどから始めるのがおすすめです。
また、トレーニングを再開する際は短い時間から始め、正しい姿勢を意識しましょう。もし痛みを感じた場合はすぐに中止します。無理せずご自身の身体の状態に合わせたトレーニングを心がけてくださいね。
腹筋を鍛えるとぽっこりお腹が改善するって本当?
A:腹筋トレーニングで内臓の位置が戻るという説は、科学的根拠に乏しい。ぽっこりお腹の改善には、運動と食事の両面からのアプローチが必要。

「腹筋を鍛えればぽっこりお腹が引っ込む」と考える方は多いかもしれませんが、腹筋運動だけで内臓の位置が変わりお腹が凹むというのは科学的には考えにくいです。ぽっこりお腹の主な原因は、脂肪の蓄積と腹筋を含む体幹の筋力不足です。そのため、お腹周りをすっきりさせるには腹筋運動だけでなく、全身の脂肪燃焼を促す運動とバランスの取れた食事が重要です。
具体的にはスクワットのような大きな筋肉を使う運動で消費エネルギーを増やし、背筋を鍛えて姿勢を改善する。運動と食事の両方からアプローチすれば、見た目の印象も大きく変わります。
大学のバスケットボール部や社会人アメリカンフットボールチーム、ゴルフセンターでのトレーニング指導、RIZAP株式会社でのパーソナルトレーナーを経て、日本橋にてパーソナルジム「IGF」を開業。健康の維持・増進、改善などをベースにトレーニングの指導をおこなっている。
【所属】
NSCA Japan
日本外科代謝栄養学会
日本静脈経腸栄養学会
日本感染症学会 会員