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【リハビリテーション体験レポート】気になることを聞いてみた

リハビリテーション機器総合メーカーである酒井医療株式会社のショールーム「TOKYO LAB SPORTS & REHABILITATION」(以下「TOKYO LAB」)にて、最先端の物理療法機器や運動療法機器を体感!リハビリテーションについての詳しいお話しを聞きながら、実際に見て聞いて触れてきた体験をレポートします。

矢口潤哉さん

酒井医療株式会社 マーケティング部 部長

1998年入社。動作解析装置、筋電計等評価測定機器の販促部門に配属され、運動学も電気生理学の知識も無い状態から販促企画、技術サポート、さらには国内外の著名研究者の協力を得ながら、学術サポートに従事。その後、リハビリテーション機器の商品企画開発も兼務し、そして海外事業の責任者を経て、現在は酒井医療が取り扱う全商品の企画開発部門の責任者として様々なプロジェクトを推進している。

本記事のリリース情報
ウェルビーイングメディア「Wellulu」にリハビリテーションに関する取材を受けました

目次

測定評価・物理療法・運動療法まで!さまざまな機器を実際に体験

今回体験にやって来たのは、1881年(明治14年)創業のリハビリテーション機器総合メーカー酒井医療のショールーム「TOKYO LAB」。酒井医療の物理療法機器や運動療法機器を気軽に体験できる。

──リハビリテーション機器というと、つい病院で使うイメージがありましたが、ショールームに並ぶ機器を見ると、ジムのようにとてもスタイリッシュなデザインですね。「TOKYO LAB」はどのような人が利用するのでしょうか?

矢口さん:ありがとうございます。「TOKYO LAB」は、おもに医療従事者やスポーツ選手に向けた予約制のショールーム施設です。測定評価機器、物理療法機器、運動療法機器などさまざまな設備を実際に体感して、これからのリハビリテーションに必要な技術や機器を感じていただけたらと思います。

測定評価機器を体験!筋力の状態を数値でチェック

本日の体験では、まずは測定評価機器からスタート。筋力を測定するための評価機器「バイオデックス システム4」は、おもに医療機関や大学などの教育機関、国のスポーツ研究機関などに設置され、整形疾患の治療効果の評価やトップアスリートの筋力評価などに使用される高価な機械とのこと。

矢口さん:この機器の特徴は、動的筋力を測定できる点です。動的筋力とは、実際に身体の四肢などを動かしている状態で発揮される力のこと。たとえば、自分の足で蹴る力がどれだけあるかを安全に評価できます。身体には関節を伸ばす力と曲げる力があり、直接的に動作を起こす「主筋」と、反対の動きをする「拮抗筋」という2種類の筋肉があります。蹴る(膝を伸ばす)動作では、太ももの前側(大腿四頭筋)が主筋、後ろ側(ハムストリングス)が拮抗筋です。動的筋力の測定によって、主筋と拮抗筋のバランスがわかりますよ。

──筋力はただあればよいわけではなく、動作に必要な主働筋と拮抗筋のバランスが大切なんですね。

矢口さん:一般的には、毎秒60度の速度での膝の伸展屈曲(曲げ伸ばし)運動の場合、大腿四頭筋とハムストリングスの最大筋力の比率(ハムストリングス÷大腿四頭筋)が60%以上であれば、筋力バランスがよいとされています。もし筋力バランスが悪いと、肉離れしたり腱を切ってしまったりして、怪我のリスクにつながってしまうといわれています

筋力バランスは、トップアスリートのパフォーマンスにとってもとても大切です。たとえば、蹴る力が強く、ハムストリングスが弱いサッカー選手の場合、蹴るトレーニングをするよりも、膝を曲げるレッグカールなどでハムストリングを鍛える必要がありますよね。このように、筋力をしっかり評価測定すると、怪我の予防や適切なトレーニング計画に役立てることができます。

──リハビリテーションで、健康な側と怪我をした側、それぞれの筋力評価も重要ですよね。

矢口さん:はい。たとえば、健康な側の筋力が100、怪我をした側の筋力が50の評価結果だとします。この場合、復帰するために筋力トレーニングをおこない、健康側に対して80以上になったら実践的なゲーム復帰できる、などのゴール設定ができます。測定評価機器で身体の状態を数値化すると、選手や患者に最適なプランの提供ができ、怪我の再発防止につながります。

──「なんか調子よいから」と感覚で復帰した結果、また怪我をしてしまう恐れもありますもんね。数値としてのゴール設定がリハビリテーションでは大切ですね。

矢口さん:「バイオデックス システム4」では「アイソキネティック(等速性)収縮」といわれる、一定の速度で力を発揮する動作の筋力を測定します。回転軸のスピードを細かく設定することで、一人ひとりの体力に合わせた評価が可能です。痛みを感じたときは筋力も下がり抵抗を弱めることもできるので、より安全に筋力を測定できますよ。

まずは毎秒60度の設定でやってみましょう!蹴る、また膝を曲げる速度毎秒60度に達すると、抵抗力を感じ、筋力測定を開始するポイントとなります。全力で蹴るつもりで、膝の曲げ伸ばしを繰り返してください。

──思っていたよりきついですね…!でも膝の曲げ伸ばしの速度が毎秒60度に達したら抵抗がかかるのがわかります。

矢口さん:次は毎秒300度の設定でおこないましょう。膝の曲げ伸ばしの速度が毎秒300度に達しないと抵抗がかからないため、先ほどに比べてより早く動かすことを意識してみてください。

──先ほどより軽い分、短距離走のような速さを求められる…!回転軸のスピードを変えることで、異なるスピードでの筋力発揮能力が評価されているんですね。

矢口さん:お疲れさまでした!今回の毎秒60度での筋力測定では、右足の伸ばす力が116.9Nm(ニュートンメートル)、曲げる力が69.4Nmでした。この結果、比率は約59.4%となるので、理想的なバランスですね。

ただし、結果は誰と比べるというものではなく、自分自身の左右差や健康な状態との比較の視点を大切にしていただければと思います。

──今の自分の筋力と筋力バランスを数値データで知ることができてよかったです!

物理療法機器を体験!痛みを取り除くさまざまな治療方法

測定評価機器で筋力を測定した後は、物理療法をいくつか体験しながら具体的な治療方法を伺った。普段の生活ではなかなか目にする機会のない機器もあり、改めて物理療法の種類の多さを感じられる。

①リラックス効果を高める!「温熱(表在的)」

矢口さん:「PHYSIO PACK(フィジオ・パック)」は、いわゆる「ホットパック」と呼ばれる温熱療法です。身体を温めることで筋肉の柔軟性を高めたり、血流を促進して痛みを軽減します。深部まではエネルギーがいきにくいので、表在的に温めることや精神的リラクゼーション、癒しを目的としています。

──痛みの根本解決というよりは、温めることで和らげるイメージですね。

②筋肉の深層部まで届く!「温熱(深部)・超音波」

矢口さん:「PHYSIO SONO(フィジオ・ソノ)」は、浅部・深部に使える超音波治療器です。毎秒数百万回振動する音波を体内に伝え、生体を振動させることで体熱が発生し、深層部の筋や腱などにアプローチします。理学療法やリハビリテーションでも使用される温熱治療器は、目的の筋肉や部位によって周波数などの設定をきちんと使い分けることが大切です。

──ただ当てればよいわけではなく、目的に合わせた細かい調整が効果を左右するんですね。

③低周波電流が筋肉を刺激!「電気」

矢口さん:「PHYSIO EMS 8(フィジオ・イーエムエス・エイト)」は、最近よく耳にする「EMS(エレクトロ・マッスル・スティミュレーション)」で、電気で筋肉を動かすことでトレーニング効果をもたらします。治療器ではなく、筋肉の運動やトレーニングに近いですね。

──通常のトレーニングではなかなか届かないインナーマッスルまで刺激できるんですね!

④高電圧で奥深くまで届く!「電気(高電圧)」

矢口さん:「PHYSIO ACTIVE HV(フィジオ・アクティブ HV)」は、高電圧電気刺激ができるデバイスです。「HV」とは「High-Voltage」(ハイ・ヴォルテージ)の意味で、高電圧を身体に入れることで、深部にまで電気刺激を届ける仕組みとなっています。一般的な電気治療では、深部に電気刺激をしたくても電流の出力を上げると皮膚表面が痛むため、出力を制限せざるを得ません。しかし、このデバイスでは高電圧を使うことで皮膚の抵抗値を下げ、皮膚表面のピリピリする不快感を抑えつつ深部まで刺激を与えることが可能です。

──たしかに、皮膚のピリピリした痛みを感じないですね。

⑤拡散型ショックウェーブが治癒を促進!「圧力波」

矢口さん:「PHYSIO SHOCK MASTER(フィジオ・ショックマスター)」は日本で最初の圧力波治療器。ハンドピース内部に弾丸のような部品が組み込まれており、空気圧で弾丸を高速で動かします。その弾丸がハンドピースの先端にぶつかるエネルギー(圧力波)が、筋肉や腱にエネルギーとして伝わり、治療効果をもたらす仕組みです。

とくに、慢性的な痛みに対して効果を発揮し、痛みの原因となる組織を一度破壊して、その後の自然治癒力で再生を促します。たとえば、足底筋膜炎で歩行が困難な方に対し、患部に適切な刺激を与えることで痛みの軽減が可能です。

──さまざまな物理療法機器を体験しながら、一つひとつの機器がもつ特徴を学ばせていただきました。もしも実際に怪我をして医療機関でリハビリテーションを受けることになった際は、ただ治療を受けるだけでなく、「なぜ自分の痛みにはこの治療方法なのか」を理解する重要性も感じられました。

矢口さん:おっしゃるとおりです。患者さん自身が「なぜこの治療を受けるのか」「なぜこの刺激の強さなのか」などを理解できなければ、治療の価値もモチベーションも薄れてしまいます。そして、医療従事者側は、患者さんが納得し、自分の健康状態を意識的に管理できるよう、適切な情報提供をおこなう義務があります。「痛みがあるからとりあえず電気を当てる」のではなく、「これが痛みの根本的な原因にどう作用するか」という視点を持って機器が活用されるべきだと考えますね。

──治療を受ける側も、自分の健康に対するリテラシーをきちんともつことが大切ですね。

運動療法機器を体験!リハビリテーション用トレーニングマシンとは?

最後に運動療法機器を体験。高齢者にも配慮したリハビリテーション用トレーニングマシンということで、視点を変えて見てみるといろいろな特徴があることに気づく。ここでは下半身を鍛えるレッグプレスを体験することに。

──一見するといわゆる一般的なジムで見たことのあるマシンのようですが、何かが違うような…

矢口さん:これらのマシンは、リハビリテーションでの使用が目的で、高齢者の方にも安心してトレーニングしていただくためにいくつか特徴があります。まずは座ってみてもらうと感じていただけるように、マシンに移動する際の転倒防止のために、足元に段差がありません。さらに、車椅子からもスムーズに乗り入れできるよう、取手部分が動かせるようになっています。

──高齢者の場合は、まずはマシンへ移動するところからリスクがありますもんね。

矢口さん:はい。そして、マシンの大きな特徴は、負荷の重さです。一般的なジムにあるマシンは、負荷が5kg単位のところが多いですが、高齢者やリハビリテーションを受ける方々にとって、5kgの変動は大きいんです。そこで、私たちのマシンは負荷を簡単に500g単位から変動できるようにしました。こちらのレッグプレスなどのように両足を使えるものは、1kg刻みで負荷を変えられるんですよ。

矢口さん:そして、関節可動域のロックができるのも特徴的です。物理的に可動域を制限して、膝関節が過伸展しないようにすることができます。通常のトレーニングでは自分でコントロールできる部分も、高齢者の方のトレーニング、リハビリテーションでは難しいことがあります。可動域にロックをかけることで、「とりあえずここまで伸ばしましょう」と安全におこなうことができるんです。

──座っている姿勢でも、負荷のピンまで手が届きますね。

矢口さん:そうなんです。毎回マシンを降りて負荷を変える動作も大変なので、自分で調整できるようになっています。また、錘の動きも見やすく、運動のスピードを確認しながらトレーニングできますよ。

高齢者の場合、15kgの負荷でも「できない」とおっしゃられる方は少なくありません。そのような場合、最初はトレーナーやセラピストの方が、実際に高齢者本人が動かせていなくとも、マシンを動かすときに、補助してあげながら「できてますよ」と声をかけるだけでもいいんです。マシンを使って、まずはただ関節を動かすことが大切。実際にはできていなくても、できているとイメージすることで徐々にできるようになっていきますよ。

──だましだましでおこなっていく…なんだか初めて自転車に乗れたときのような感覚に似ていますね。

矢口さん:そうですね。そのほか、片麻痺の患者さんに向けてトレーニング中に足が落ちるのを防ぐためにベルトを取り付けるサポートフックがあったりと、一般のジムのマシンにはないさまざまな独自の特徴があります。

さらに、私たちのリハビリテーション用トレーニングマシンは、トレーニングマシンの安全性に関する国際規格の安全基準を満たしており、ドイツの第三者認証機関「TÜV」認証を取得しています。リハビリテーションとして、また高齢者の方にも安心にトレーニングしてもらう上で、やはり国際基準で安全性を保証したいという想いが込められているんです。

──提供する側も、使用する側も、安心して使える。そのための細かいこだわりや特徴が詰まっているんですね。

誰もが安心安全にトレーニングできるよう、提供する側・使用する側の状況をイメージしてつくられたリハビリテーション用トレーニングマシン。安全に対する想いとマシンのこだわりを聞き、選ばれる理由を感じながら、本日の体験は終了。

矢口さんにインタビュー

体験後は、施設を案内していただいた矢口さんに、リハビリテーションの役割や必要性など気になることを聞いてみた。

そもそもリハビリテーションとは?役割から治療方法まで

──リハビリテーションというと、つい高齢者や怪我をした人がおこなうイメージがありますが、そもそもの役割とは何でしょうか?

矢口さん:もともと、リハビリテーションは、「もとの状態に戻す」「本来あるべき状態に回復、復活させる」という広義的な意味をもちます。その中で、医療分野のリハビリテーションは、身体機能の回復だけでなく、その人が自分らしく生きることを取り戻す目的のための役割があります。そこで、私たち酒井医療では、単に病気や怪我から回復するだけでなく、子どもから高齢者までの健康維持を含めた、一人ひとりが自分らしくパフォーマンスできることを追求したリハビリテーションを目指しています。

──リハビリテーションを通じ、一人ひとりの「もとの状態」に戻していくんですね。

矢口さん:そのとおりです。「もとの状態」とは、調理師であれば包丁を使えるようになること、野球選手であればボールを投げられるようになること、高齢者の方であれば自力で好きな場所へ自由に歩いて行けるようになることかもしれません。リハビリテーションの基本は、日常生活動作の回復ではありますが、一人ひとりのバックグラウンドに合わせた目標設定と治療計画が必要です。

目標設定があることで、運動療法の方向性が決まったり、本人にとってはモチベーションになったりしますよね。そのためにも、リハビリテーションの目標設定では、定量的なデータによる評価が重要です。筋力や可動域、痛みのレベルといった数値を具体的に示すことで、自分の身体の現状を理解してゴールを明確にできます。

──その人にとってのゴールを引き出すことが大切なんですね。物理療法と運動療法についても教えていただけますか?

矢口さん:物理療法と運動療法は、医療現場でおこなわれるリハビリテーションの1つです。リハビリテーションに携わる医療従事者の方は、医師のほかに、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師などさまざまです。その中でも、理学療法士の仕事として、物理療法と運動療法があります。

物理療法は、温熱や寒冷、電気、超音波などの物理的エネルギーを活用して、痛みを軽減したり、関節の動きを改善したりする方法です。たとえば、寒冷療法は打撲や炎症を抑えるためにアイスパックを使用することも含まれますし、電気刺激を用いて筋肉の緊張を緩和する治療もその一部です。物理療法は、患者さんが「受け身」で受ける治療であり、身体に直接的なエネルギーを与えることで、痛みを軽減し回復を促進します。

一方、運動療法は、患者さんが「能動的に」身体を動かすことで、筋力や柔軟性を高め、日常生活に必要な機能を取り戻すことを目的としています。病気や怪我で身体を動かさない期間が長くなると、筋力が低下してしまい、痛みが取れた後も思うように動けないことがあります。痛みを取り除いた後に運動療法を取り入れることで、基礎体力を向上させ、生活の質を回復させるんです。

──物理療法で痛みを取り除き、運動療法でさらなる怪我を防ぐんですね。

矢口さん:たとえば、高齢者の方が右足の大腿骨を骨折したとします。「転倒が怖いから歩くのが嫌だ」と言っているうちに、今度は左足も動きにくくなってしまい、歩行困難になり、車いすの生活になってしまう。このように、予防的な観点も含めて、自らが身体を動かす運動療法は大切なんですよ。

──リハビリテーションをおこなう上で、物理療法と運動療法を組み合わせることが重要なのでしょうか?

矢口さん:はい。それがまさにリハビリテーションの根本にある、「もとの状態に戻す」につながります。そして、物理療法と運動療法を組み合わせることで、ただ「もとに戻す」だけでなく、さらに健康的なよりよい状態に近づける。実は、私たちが提案しているのは「あたりまえ」のことなんです。

ただし、病院で痛みを取り除いてもらった後、患者さんがフィットネスジムで運動をしようとするときに大きな隔たりがあります。患者さん自身はどのようなトレーニングをしたらよいか、またジムのトレーナーさんは怪我や病気を抱える人に適切な運動指導ができるかどうか、それぞれわからないのが現状です。そこで、リハビリテーションの現場にいる理学療法士や作業療法士などの知識が重要になり、運動療法も含めた包括的なサポート環境が理想の姿であると考えます。もちろん、その後はフィットネスジムで自主的に運動を続けることも可能になりますよ。

──物理的に痛みを取り除いて終わりでなく、一人ひとりにあった運動をセットでおこなってこそ、「自分らしく生活できる」本当の意味でのリハビリテーションに近づくんですね。

高齢化社会とリハビリテーション

──日本では高齢化が進んでおり、リハビリテーションの必要性がさらに増していると思います。この点はどうお考えですか?

矢口さん:高齢になると、体力衰えたり、病気や怪我のリスクが高まったりと、自立した生活を送るのが難しくなってきますよね。ただ、年を重ねることには抗えませんが、筋力などが衰えるスピードを緩やかにすることは可能です。適切なトレーニングを通じて、転倒を防ぐための筋力やバランス感覚を維持し、怪我の発生リスクや、怪我をしたあとの再発を防ぐための知識や生活習慣を身につけてもらうことが大切だと考えます。これは決して高齢者の方だけでなく、現在健康な方にも知っておいていただきたい健康リテラシーです。これから高齢者になる方も含めて、予防の観点をどれだけもっているかがリハビリテーションで重要なことであると考えます。

──介護などの面を考えると、自分自身の自立した生活はもちろん、支えてくれる家族のためにも健康維持のための運動習慣をつけたいですね。

矢口さん:そうですね、できることから始めていただけたらと思います。酒井医療でも「カルファエクササイズ」という「椅子からの立ち座り5回テスト」と「5mまたは4m歩行の計測」をおこない、それぞれの結果を入力すると現在の身体能力に合わせた、おすすめのエクササイズメニュー約70種類が表示されるツールをホームページで公開しています。健康な方々も、自分の現在の身体の状態を把握するために、ぜひ活用してみてくださいね。

──高齢者に限らず、より自分らしい生活を送ることを目指すリハビリテーションは、すべての人々にとって大切ですね。

矢口さん:リハビリテーションは、日常生活という「自分らしい生活」のQOL(Quality Of Life:生活の質)を取り戻し、さらに向上させる手助けとなるものだと考えています。そして、リハビリテーションの大きな特徴として、「行動変容」を促す力があります。最初は「こんな機械でトレーニングするのは私には無理よ」と言っていた車いすの利用者が、リハビリテーションを重ねるうちに「杖を使って歩けるようになりたい」と目標を持ち、やがて「自力で歩けるようになりたい」、最終的には「孫と旅行に行きたい」といった夢に変わる。こうした目標の変化を見たり、成功事例を聞いたりするたびに、リハビリテーションの素晴らしさを実感しますね。

──素敵ですね!目標がどんどん具体的に変化していくことからも、リハビリテーションが与える影響の大きさを感じます。最後に、これからのリハビリテーションが目指す姿についてお伺いできますでしょうか?

矢口さん:医療は日進月歩で常に進化しています。昔は常識だったものが、今では新しい研究や技術によって異なる考え方に置き換わることもあります。私たちは、こうした変化に対応し、リハビリテーションを常にアップデートしていくことが重要だと考えています。医療従事者と協力し、最新の知識や技術を取り入れながら、患者さん一人ひとりに最適なリハビリテーションを提供できるよう努めています。

矢口さん:リハビリテーションは、よく「訓練」と表現されることがありますが、どうしても辛いイメージがありますよね。しかし、リハビリテーションとは、自分のQOLをどのようにして高めていくかを目指しサポートするものです。どんな年齢の方でも、どんな状況の方でも、よりよい治療を受け、「より自分らしい生活」を送れるようになるために、リハビリテーションが力を発揮すること。リハビリテーションが、あらゆる世代の方々にとって、「必要で役立つ存在」として認識されたらいいなと思います。

Wellulu編集後記:

健康な毎日を送っていると、ついリハビリテーションは自分とは関係のないものと思いがちです。今回の取材を通し、リハビリテーションは決して怪我をした人やアスリート選手のためのものではなく、いつかの自分や大切な家族のために必要なものであると、より身近なものに感じることができました。自分らしく生きていくために、必要な健康リテラシーをしっかり身につけること。もし今後、整形外科などで治療を受ける機会があったら、きちんと自分の身体の状況や治療方法について自ら積極的に聞いていきたいと思います。

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