
朝や日中は仕事や家事で忙しく、トレーニングの時間を確保するのは難しいもの。仕事や家事を終えた夜に、筋トレに取り組むという人も多いのでは?寝る前の筋トレは身体に嬉しいメリットもある分、強度や運動のタイミングに考慮しないと、思ったような効果が得られないことも。
この記事では寝る前に筋トレをおこなうメリットに加えて、筋トレ時の注意点やコツも解説。寝る前のおすすめ筋トレメニューについても紹介しているので、参考にしてみよう。
この記事の監修者

岡部 友さん
NSCA-CSCS公認コンディショニングスペシャリスト
ACSM-CRT公認パーソナルトレーナー
分子栄養学健康指導士
寝る前の筋トレで得られる効果・メリット
- ほどよい疲労感で睡眠の質が高まる
- 夜の時間を有効活用でき習慣化しやすい

ほどよい疲労感で睡眠の質が高まる
自重でのトレーニングなど適度な筋トレで身体的にほどよく疲労感が残ると、自然な眠気を促進し、睡眠導入がスムーズになる。トレーニングの際に全身の筋肉をバランスよく使うことで、心地よい疲労感を得ることができる。
深い睡眠により、筋肉の修復と回復が効率的に進むだけでなく、質の高い睡眠により、翌朝も爽快に目覚められる。
規則正しい生活リズムを整えることにもつながり、長期的な健康維持にも効果的。
夜の時間を有効活用でき習慣化しやすい
仕事や家事で忙しい日中に比べ、夜の時間帯は比較的自由に使える時間を多く確保しやすい。就寝前の決まった時間帯に筋トレを組み込むことで、生活リズムの一部として運動習慣を定着させやすい。
運動を無理なく習慣化するには入浴前後の時間を使っておこなうなど、すきま時間を活用するのがおすすめ。1日の終わりに運動習慣を設定することで、毎日の達成感も得られ、継続的なモチベーション維持にも効果的。
さらに、夜のトレーニングは、日中の仕事やストレスの発散にもつながり、心身のリフレッシュとしてもおすすめ。
寝る前に筋トレをする際の注意点
寝る前に筋トレは運動強度やタイミングを意識しないと、睡眠の質を下げてしまって逆効果になる可能性も。
- 就寝2時間前までに終わらせる
- ハードな筋トレはおこなわない
- 暗めの部屋でおこなう

夜になると日中の疲れを感じて、トレーニングを休んでしまいたくなることもあります。ただし、精神的な疲労感と、本当に身体が動かないという身体的な疲労感は必ずしも一致しません。
疲れを感じていても、身体を動かしはじめれば、通常通りのトレーニングをこなせたりする場合もあります。自分で決めたルールや運動習慣があるのであれば、いつも通り挑戦してみて、体調的にむずかしそうであればやめるようにしましょう。
就寝2時間前までに終わらせる
就寝前の2時間は体温を徐々に下げながら副交感神経が優位な状態へと移行することで、質のよい睡眠が期待できる。運動直後は交感神経が優位になり、体温も上昇するため、トレーニング終了時から就寝までに時間的な余裕を確保しよう。
トレーニングを終えたあとは、クールダウンとストレッチをしっかりおこない、徐々に身体をリラックスさせよう。入浴は軽めのシャワーに留めておき、ぬるめのお湯で手足を温めるのも効果的。
この時間帯にリラックスした状態を保つことで、質の高い睡眠への準備を整えられる。
また、就寝時間の2時間以内にトレーニングをおこなう場合は強度の高いトレーニングや脚など大きな筋肉に負荷をあたえるトレーニングは控えるように。
ハードな筋トレはおこなわない
就寝前のトレーニングは、低~中強度の負荷で実施することが理想的。過度な負荷は自律神経を乱し、質の良い睡眠を妨げる原因となってしまう。
自重トレーニングやチューブトレーニングなど、負荷をコントロールしやすい運動を選択するのがおすすめ。1種目あたり15~20回程度おこなえるくらいの負荷を意識しよう。
トレーニングの際は強度のコントロールはもちろん、呼吸を整えながら丁寧なフォームで実施することも重要。
暗めの部屋でおこなう
トレーニングをおこなう部屋の明るさを調整することでも、体内時計の乱れを防げる。蛍光灯などの強い光は避け、間接照明やスタンドライトなどの柔らかい光源を活用しよう。
トレーニング中は安全性を確保できる最低限の明るさを保ちながら、徐々に光量を落としていくことがポイント。とくに青色光(ブルーライト)の強いスマートフォンやタブレットの使用は控えめに。
就寝90分前からはさらに明るさを抑え、自然な眠気を促す環境づくりを心がけること。暗めの環境で過ごすことで、副交感神経が優位な状態へとスムーズに移行する。
寝る前の筋トレの効果を高めるコツ
入浴やストレッチなどを取り入れることで、寝る前の筋トレ効果を最大限に高めることができる。
- トレーニング後の食事はバランスを意識する
- 筋トレ後はぬるめのお風呂に入浴する
- ストレッチやマッサージを取り入れる
- 水分補給をしっかりおこなう
トレーニング後の食事はバランスを意識する
トレーニング後はタンパク質を中心に、消化のよい食材や質のよい脂質を意識してとることがポイント。
夜間のトレーニング時は、事前に軽めの夕食を済ませておくことで、就寝前の食事を最小限にできる。
ただし、過度な食事制限は筋肉の回復を妨げる可能性もあるため、1日を通してバランスの取れた栄養管理が重要。プロテインの摂取に関しても、1日の自分の必要な摂取量を定期的に取っていくようにしよう。

トレーニングをおこなっている期間の食事は、アミノ酸、タンパク質をしっかり摂るように心がけましょう。減量中の摂りすぎは避けるべきですが、糖質も脂質もバランスよく摂取するようにしてください。
細胞は油でできてるので、脂質も避けるのではなく、十分な摂取を意識しましょう。ただし、脂質の中でも、植物性の脂質は酸化している場合があるので注意が必要です。不足しがちな魚など「オメガ3系」の油を積極的に選ぶとよいでしょう。
筋トレ後はぬるめのお風呂に入浴する
熱すぎるお湯は交感神経を刺激し、睡眠の質を低下させる可能性がある。入浴時の水温は38~40度程度のぬるめに設定し、血行促進と疲労回復を促進するのがおすすめ。入浴時間は10分程度を目安にし、長湯を避けることで身体への負担を軽減できる。
まずは、浴槽につかる前に、シャワーで汗を流し、身体を清潔な状態にしよう。入浴の際は肩まで浸かりすぎず、半身浴程度の深さで、ゆっくりと身体を温めることがポイント。入浴後は、急激な体温変化を避けるため、すぐに就寝せず30分程度の時間を確保しよう。
ストレッチやマッサージを取り入れる
トレーニング後のストレッチは筋肉の緊張をほぐし、柔軟性の向上が期待できる。とくにトレーニングで使用した部位を中心に、15~20秒程度のストレッチを丁寧におこなおう。マッサージローラーやストレッチポールを活用し、筋膜リリースをおこなうのも効果的。
ストレッチやマッサージの際は、深呼吸を意識しながらゆっくりとおこなうことで、リラックス効果も促進できる。全身の血行を促進することで、疲労物質の排出を促し、快適な睡眠環境を整えることにもつながる。
就寝前のストレッチを習慣化することで、身体が硬くなることを予防し、柔軟性の維持も可能に。

水分補給をしっかりおこなう
トレーニング後の適切な水分補給により、体内の水分バランスを整え、疲労回復を促進できる。ただし、就寝前の過度な水分摂取は避け、コップ1杯程度の常温の水を数回に分けて摂取することを意識しよう。
スポーツドリンクなどの糖分を含む飲料は控えめにし、ミネラルウォーターや麦茶など、カフェインを含まない飲み物を選ぶとよい。運動強度や発汗量に応じて、電解質の補給も考慮すること。
トレーニング中も、15分おきを目安に少量ずつ水分を補給し、脱水を予防しよう。就寝2時間前までには必要な水分補給を終えておくことで、睡眠中の尿意を防止できる。

【5分でできる】寝る前におすすめの筋トレメニュー4選
寝る前におすすめの自宅で気軽にできる自重筋トレメニューを紹介。
- プランク
- グルートブリッジ
- 台を使ったひざつき腕立て伏せ
- クラムシェル
プランク
プランクは、体幹全体を効果的に刺激できるため、寝る前のトレーニングとして最適。
ひじは肩幅くらいに開き、つま先を床につけた状態で、両ひじを自分の胸に引くようにするのがポイント。20秒を3セット程度から開始し、徐々に時間を延ばしていくことで、無理なく効果を実感できる。姿勢を保持している間は、お腹を引き込み、呼吸を止めないことを意識するのがポイント。
プランクで体幹が強化されると、日常生活での姿勢改善や腰痛予防にも効果的。
- 両ひじを床につけて、うつぶせになる
- つま先を立てるようにして、下半身を浮かせる
- 頭からかかとが一直線になる姿勢をキープする
グルートブリッジ
腰を上げる際は反動を使わないようゆっくりと動かすことを意識しよう。腹筋に力を入れ、肋骨を締めるようなイメージで上げるとよい。
腰を持ち上げる高さは、ひざから肩のラインがまっすぐになるところが理想的。背中が丸まってしまったり、反ってしまったりすることがないように、姿勢も意識すること。
- 床に仰向けになり、左右のひざは腰幅に開いて、両ひざを折り曲げたら、足の裏をしっかりと床につける
- 体幹や肩甲骨、胸部、お尻に力を入れ、両手を上に伸ばした状態で腰を床から押し上げていく
- 腰を持ち上げたら、お腹に力を入れた状態でそのまま1~2秒間キープする
台を使ったひざつき腕立て伏せ
上半身全体の筋力向上に効果的な腕立て伏せは、場所を選ばず実施できる手軽なトレーニング。
腕立てをおこなう際は、腹筋にしっかりと力を入れ、腰を反らないように意識しよう。腰を反らせて動作をおこなうと、腰を痛めてしまうリスクもある。また、胸筋にしっかり効かせるためには、常に肩甲骨を寄せるイメージで動作をおこなおう。肩甲骨が寄せられていないと、肩関節に負担がかかってしまう可能性もあるので注意。
- 腕立て伏せの姿勢になり、手幅は肩幅より少し広めにセットする
- ひざをつき、足は床から浮かせる
- ひじを90度に曲げて、床に胸がつくくらいまで身体を下げる
- 下まできたら、一瞬姿勢をキープし、そのまま元の体勢に戻る
クラムシェル
トレーニング効果を出すためには、骨盤の位置を正しく保つことが重要。動作をおこなっていると身体が後ろに倒れがちだが、横向きにまっすぐ立たせるイメージで骨盤の位置を維持しよう。ひざから足を引き上げるように意識することで、お尻の外側の筋肉にしっかり効く感覚が得られる。
- 左側を下にして横になり、左のひじをついて上体を支え、右手は地面につく
- ひざと股関節が90度になるように曲げる
- 両足をくっつけたまま、右ひざを大きく開く
- お尻の横の筋肉に刺激を感じるところまで上げたら、ゆっくり下ろす
- 動作を繰り返し、逆側も同様におこなう
寝る前の筋トレに関するQ&A
トレーニングは毎日続けても大丈夫?
A:毎日続けてよい。

食事は筋トレの前と後どちらがいい?
A:適切な食事のタイミングは目標によって異なる。

寝つきが悪くなった場合はどうするべき?
A:慣れるまで様子をみてもいいが、ストレッチを多くすることで解消できる可能性もある。

寝る前の筋トレは太りやすいって本当?
A:寝る前の筋トレと太りやすさはまったく関係ありません。

寝る前のストレッチはよくない?
A:血流がよくなるのでおすすめ。

アメリカでは運動生理学、解剖学を学び、フロリダ大学在学中にNSCA-CSCS*の資格を取得。「SPICE UP FITNESS」(フィットネスジム)を運営する株式会社ヴィーナスジャパン代表取締役社長。美尻トレーナーとして女性から絶対的な支持と信頼を得ている。 外見的なボディメイクに限らず、心の強さと優しさを鍛えることをモットーとしている。「筋トレが折れない私をつくる!」(2018年 宝島社)「美尻トレ 究極のヒップメイク」(2017年 文藝春秋)「じぶんBIG LOVE! ~ゆりやん体づくり本~」(2024年 集英社)など著書・共著多数。