「食事制限しているのに全然痩せない」「昔より食べる量は変わっていないのになぜか体重が増えてきた」そんな悩みを抱えている人は多いのでは。この記事では、基礎代謝とは何か、ダイエットとの関係、基礎代謝の計算方法、基礎代謝を上げる方法などをご紹介。簡単にできることから始めて、痩せやすい身体に変化させていこう。
この記事の監修者
古谷 彰子さん
博士(理学) 管理栄養士
そもそも基礎代謝とは?
まずは、そもそも基礎代謝とは何か、代謝の種類や役割、消費カロリーとの違いについて見ていこう。
- 基礎代謝の考え方
- 代謝の種類・役割
- 基礎代謝と消費カロリーの違い
基礎代謝の考え方
基礎代謝は、「生命維持に必要な最小限のエネルギー消費量」のこと。安静時に身体が消費するエネルギー量であり、呼吸や心臓の鼓動、体温維持などの基本的な生命活動に使われる。
基礎代謝は、「1日の総エネルギー消費量の60〜70%」を占める重要な要素。基礎代謝が高ければ、安静にしていても多くのカロリーを消費するため、ダイエットに有利に働く。また、基礎代謝は「年齢」「性別」「体格」「筋肉量」などの違いによって個人差がある。
一般的に、年齢とともに低下する傾向にあるが、適切な運動や食事管理によって維持・向上させることができる。
代謝の種類・役割
代謝には、「基礎代謝」「活動代謝」「食事誘発性体熱産生」の3種類が存在する。
活動代謝は、「日常生活や運動によって消費されるエネルギー量」を指し、個人の生活スタイルや運動習慣によって大きく変動する。食事誘発性体熱産生は、「食事の消化・吸収・代謝に使われるエネルギー量」で、摂取した食品の種類によって異なる。
代謝を効果的にダイエットへ活用するためには、時間帯に応じた適切な食事管理が大切。夜は脂質と糖質の代謝が低下するが、朝は代謝が活発になる。体内時計に合わせて食事のタイミングや内容を調整して、代謝のバランスを整えよう。
夜は脂質と糖質の代謝が低下するため、就寝前の脂っこい食品や糖質を控えましょう。朝はタンパク質の代謝が高まるので、朝食でタンパク質を積極的に摂取し、水溶性食物繊維も取り入れて腸内環境を整えましょう。体内時計に合わせた食事習慣で、代謝のバランスを整え、効果的なダイエットにつなげることができます。
基礎代謝と消費カロリーの違い
基礎代謝は「生命維持に必要な最小限のエネルギー消費量」を指し、消費カロリーは「1日の総エネルギー消費量」を表す。
消費カロリーには基礎代謝に加え、日常生活や運動による「活動代謝」、食事の消化吸収に使われる「食事誘発性体熱産生」が含まれる。つまり、消費カロリーは基礎代謝を含むより広い概念。
ダイエットでは筋トレなどで筋肉量を増やし、基礎代謝を上げる方法が最も効果的。単に摂取カロリーを減らすだけのダイエットは避け、適切な運動と栄養を摂取することが大切。タンパク質をしっかり摂取し、定期的に身体を動かし、筋肉量を維持・増加させることを目指そう。
食べ過ぎの場合は、消費カロリーを増やすよりも摂取カロリーを減らす方が効果的。ただし、極端な制限は避け、バランスの取れた食事を心がけよう。
最近では若い女性の「痩せ型高血糖」が問題視されています。痩せ型は筋肉量が少なく、糖質のコントロールが難しい傾向があります。単純なカロリー制限よりも、栄養バランスと適度な運動を組み合わせて筋肉をつけるのがダイエットを成功させるポイントです。
基礎代謝がダイエットと関係している理由
基礎代謝が上がると体温が上昇し、体内の酵素活性が高まり、化学反応が活発になるなどの変化が起きやすくなる。その結果、脂肪分解や糖質代謝が促進され、より多くのエネルギーが消費でき、痩せやすい身体になる。
また、体温が上がると血液循環がよくなり、老廃物の排出も促進されるため、体内環境が整いやすくなる。健康促進の観点でもメリットが多いので、積極的に基礎代謝が上がるような生活習慣を意識していこう。
基礎代謝の平均値と計算方法
効果的なダイエットをおこなうには、自分の基礎代謝量や平均値を知ることも大切。年齢別の平均値や計算方法について見ていこう。
- 【年代・男女別】基礎代謝量の平均値
- 基礎代謝量の計算方法
【年代・男女別】基礎代謝量の平均値
基礎代謝量は年齢とともに変化し、一般的に加齢により低下する傾向にある。以下は、「年代別・男女別」での平均基礎代謝量。
【平均基礎代謝量】
- 20代男性:約1,520kcal/日
- 20代女性:約1,110kcal/日
- 30代男性:約1,500kcal/日
- 30代女性:約1,100kcal/日
- 40代男性:約1,470kcal/日
- 40代女性:約1,090kcal/日
- 50〜60代男性:約1,350kcal/日
- 50〜60代女性:約1,050kcal/日
30代では、20代と比べてわずかに低下する程度だが、40代以降になると大きく低下し始める。
加齢に伴い、下半身の代謝と筋肉量が急速に低下するため、足腰の筋力維持が老化防止や代謝向上におすすめ。「日常的に階段を使う」「タクシーや車ではなく自転車を使う」など、脚を使うことを意識しよう。自宅でスクワットのような太ももを鍛える筋トレをおこなうのもおすすめ。
食事面では、筋肉量維持のため、栄養バランスが整った食事が大切。とくにタンパク質を積極的にとるようにしよう。
立ったり座ったりするときに無意識に声が出てしまうのは、動作が億劫になっている兆候かもしれません。日常生活で意識的に身体を動かしたり運動をすることが、年齢に関わらず基礎代謝の維持につながります。また、基礎代謝量は体格が違えば変化します。BMIによっても上記の平均値を下回ったり上回ったりすることもあるので、平均値だけでなく自分の基礎代謝量を把握しましょう。
基礎代謝量の計算方法
基礎代謝量の計算方法には複数あり、一般的には「ハリス・ベネディクトの式」が用いられる。男女で異なる計算式を使用し「年齢」「身長」「体重」をもとに算出する。
- 男性の場合:66.5 + (13.75 × 体重kg) + (5.003 × 身長cm) – (6.755 × 年齢)
- 女性の場合:655.1 + (9.563 × 体重kg) + (1.850 × 身長cm) – (4.676 × 年齢)
※より正確な方法として、体組成計や専門機関での「呼気ガス分析」もある
一方で、適切な摂取カロリーを設定する場合は、推定エネルギー必要量の計算が効果的。推定エネルギー必要量は、厚生労働省が公表する日本人の食事摂取基準を基に算出できる。
計算方法は、基礎代謝基準値に参照体重をかけて基礎代謝量を求め、それに身体活動レベルをかける。身体活動レベルは3段階あるので、自分の活動レベルを当てはめて必要摂取エネルギーを算出しよう。
- 基礎代謝基準値×参照体重=基礎代謝量
- 基礎代謝量×身体活動レベル=必要摂取エネルギー
算出したエネルギーを基準に、個人の状況や目標に応じて摂取カロリーと運動量を調整しましょう。ただし、過度な減量目標は避け、身体に負担のかからない範囲で設定することが大切です。女性は過度に痩せると生理が止まってしまう可能性があるので注意しましょう。
基礎代謝が下がってしまう原因
基礎代謝は、加齢や栄養バランスの乱れなどさまざまな原因で低下してしまう。おもな原因は以下なので、ダイエット時の参考にしよう。
- 加齢による筋肉量の低下
- 極端な食事制限による栄養バランスの乱れ
- 運動不足による運動量の減少
- ストレスや睡眠不足による影響
- ホルモンバランスの乱れ
加齢による筋肉量の低下
加齢にともなう筋肉量の減少は、基礎代謝低下のおもな原因の1つ。
筋肉は身体の中で最もエネルギーを消費する組織であり、筋肉量が減少すると基礎代謝も低下する。若年期の運動量と現在の運動量は筋肉量に大きく影響し、20歳時の筋肉量を最大値とすると、70歳では約7割まで減少。年間約1%ずつ筋肉量が低下する計算。
加齢にともなう筋肉量の低下を防ぐためにも、運動習慣をつけることが大切。運動不足の期間を最小限に抑えることが、筋肉量の維持につながる。
また、骨密度も年齢とともに低下し、40歳後半から減少が加速する。とくに女性はホルモンの影響によって骨吸収が促進し、骨形成が抑制されるため骨粗しょう症のリスクが高まる。定期的に運動することで筋肉量の維持だけでなく、骨量増加にも効果が期待できる。
年齢に関わらず日々の運動を心がけることが健康的な身体づくりのカギです。継続的に運動することが、「筋肉量と骨密度の維持」「基礎代謝の向上」につながります。若いうちからの運動習慣が将来の健康を左右するため、早いうちから取り組むのがおすすめです。
極端な食事制限による栄養バランスの乱れ
厳しい食事制限をおこなうと短期的に体重は減少するが、基礎代謝の低下や、それにともなうリバウンドを引き起こすためダイエットには逆効果。必要な栄養素が不足すると、身体がエネルギー消費を抑えようとして、太りやすい身体になってしまう。
ダイエット中は基礎代謝を維持するためにバランスの取れた栄養摂取が大切。筋肉をつけるためにはタンパク質だけでなく、「炭水化物」や「脂質」もとろう。「ビタミン」や「ミネラル」もエネルギー代謝に不可欠なので、栄養素が偏らないよう「主食」「主菜」「副菜」を含む食事構成を意識しよう。
特定の食品や栄養素に偏ったダイエットは栄養バランスを崩し、体調にも悪影響を及ぼします。基礎代謝の低下を防ぐためにも毎食さまざまな食品から栄養を摂取することを心がけましょう。
運動不足による運動量の減少
運動によって筋肉に刺激を与えることが筋肉の維持と成長につながる。運動習慣がなく、日常的な運動量が減少すると筋肉量も減って代謝機能が低下する。とくに、加齢とともにこの影響が顕著になる。
また、運動不足は身体の活動量全体を減少させ、エネルギー消費量を低下させる。結果として、身体が少ないエネルギーで生存できるよう適応し、基礎代謝を下げる方向に働いてしまう。
さらに、運動は直接的なエネルギー消費だけでなく、運動後の回復過程でもエネルギーを消費する。EPOC(運動後過剰酸素消費)効果により、運動後も代謝が高まった状態が続くため、定期的に身体を動かそう。
運動をすることで空腹感を促す「グレリン」というホルモンの分泌レベルが下がるという論文もあります。
ストレスや睡眠不足による影響
慢性的なストレスや睡眠不足はコルチゾール(ストレスホルモン)を分泌させ、代謝機能を低下させる。
ストレス下では身体がエネルギーを温存しようとする。その結果、基礎代謝が低下し体重が増加しやすくなる。また、ストレスによる過食や間食も代謝に悪影響を与える原因となる。
睡眠不足はレプチン(満腹感を促すホルモン)の分泌を減少させ、食欲が増進する。また、過食につながりやすくなるグレリン(空腹感を促すホルモン)の分泌を増加させる。
ホルモンバランスの乱れ
ホルモンは体内のさまざまな機能を調整しており、代謝にも深く関わっている。
とくに甲状腺ホルモンは、基礎代謝の調節に重要な役割を果たしていて、不足すると基礎代謝の低下を招く。また、インスリンの過剰分泌や女性ホルモンの変化なども基礎代謝に影響を与える。
女性の場合は更年期指数(SMI)もホルモンバランスを自分でチェックする方法の1つ。更年期障害は、若年性の症状も存在するため、不調を感じた際は年齢に関わらず更年期指数を確認するのがおすすめ。
女性は更年期を迎えるとホルモンバランスが大きく変化します。アンケート形式で更年期指数の点数を算出し、50を超えていた場合は、医療機関での専門的な検査を受けるのがおすすめです。なお、更年期指数はあくまで医療機関を受診する目安となるもので、更年期障害の確定診断ではありません。
基礎代謝を上げる効果的な方法
運動や睡眠など、普段の生活を変えていくことで、基礎代謝の向上が期待できる。ここでは、基礎代謝の向上につながる以下の6つのポイントをご紹介。
- 筋トレで筋肉量を増やす
- 有酸素運動を取り入れる
- 良質な睡眠をとる
- 入浴で身体を温める
- 水分をしっかり摂取する
- ヨガや腹式呼吸を定期的におこなう
筋トレで筋肉量を増やす
筋トレは基礎代謝を上げる最も効果的な方法の1つ。筋肉量が増えると安静時のエネルギー消費量が増加し、痩せやすい体質になる。
筋トレにはさまざまな種類があるが、大きな筋群を使う複合種目から始めるのが効果的。「スクワット」「デッドリフト」「ベンチプレス」などの基本種目は全身の筋肉を刺激し、効率的に筋肉量を増やすことができる。
初心者の場合、「週2〜3回:1回30分程度」から始めるのがおすすめ。慣れてきたら徐々に回数や時間を増やして身体に負荷をかけていこう。ただし、過度なトレーニングは逆効果になる可能性があるため、適度な休息を取ることも大切。
有酸素運動を取り入れる
有酸素運動はカロリーを消費するだけでなく、基礎代謝を上げる効果もある。定期的に有酸素運動をおこなうことで心肺機能を向上させ、身体全体の代謝を活性化させる。
「ウォーキング」「ジョギング」「サイクリング」「水泳」などの有酸素運動は、継続的に酸素を使用しながらおこなうため、脂肪燃焼に効果的。筋持久力も向上し、日常生活での活動量の増加にもつながる。
ただし、有酸素運動は脂肪と一緒に筋肉を分解し、エネルギーに変えてしまうことも。そのため、筋トレもバランスよく取り入れよう。初心者の場合は無理せず、10分程度から始め、徐々に時間をのばしていくのがおすすめ。
良質な睡眠をとる
質のよい睡眠をとることは、基礎代謝を上げる上で非常に重要な要素。睡眠中は成長ホルモンの分泌が活発になり、筋肉の修復や成長を促進し、基礎代謝の維持に大切な役割を果たす。
ホルモンバランスへの影響は、睡眠時間の長さではなく、睡眠の規則性に左右される傾向がある。睡眠の質を上げるためには、睡眠時間の長さよりも「就寝時間と起床時間を可能な限り固定」して、生活リズムを整えよう。
一定の時間に就寝する習慣を身につけることで、体内時計が安定し、睡眠の質が向上する可能性があります。
入浴で身体を温める
体温が約1度上昇すると基礎代謝は「約10〜13%増加」すると言われている。38〜40度程度のお湯に20分程度浸かることで入浴後も体温が高い状態が続くため、代謝アップ効果が期待できる。入浴するタイミングは、就寝の1〜2時間前がおすすめ。
また、家庭で実践できる簡単な方法として、蒸しタオルを使うのもよい。電子レンジで濡らしたタオルを温めて首元に当てることで全身の血行が促進され、代謝の活性化や身体のこりを和らげられる。
蒸しタオルは入浴と比べて手軽に実践できるため、毎日のルーティンとして組み込みやすい。毎日入浴することが時間や環境的に難しい人は、蒸しタオルで身体を温める習慣をつけてみよう。
水分をしっかり摂取する
水分は体内のあらゆる代謝に関わっており、基礎代謝を上げるためには水分をしっかり摂取することが大切。
成人の1日の水分摂取量の目安は体重1kgあたり約30ml。
たとえば、体重60kgの人なら1日約1.8Lの水分摂取が推奨される。身体を冷やさないという観点から冷たい飲み物よりも温かい飲み物がおすすめ。ただし、気温や状況により温かい飲み物を飲みづらく感じる場合は、飲料の温度よりも適切な水分摂取量を維持することを優先しよう。
ヨガや腹式呼吸を定期的におこなう
ヨガや腹式呼吸はストレスを軽減させるとともに、基礎代謝を上げる効果が期待できる。自律神経系のバランスが整うことで代謝が整うことも。
ヨガは「筋トレ」と「柔軟性向上」を兼ね備えた運動。ポーズをとってキープすることで筋肉に負荷がかかるため、筋肉量の増加につながる。また、呼吸を意識することで代謝も活性化できる。
腹式呼吸は横隔膜を使って深く呼吸をすることで、体内の酸素量を増やす。酸素の供給量が増加すると細胞レベルでの代謝を促進し、エネルギー消費を高める。また、腹式呼吸にはリラックス効果もあり、ストレス由来の代謝低下を防ぐ効果も期待できる。
初心者の場合、「週2〜3回:1回15〜30分程度」から始めるのがおすすめ。徐々に頻度や時間を増やしていくことで、より大きな効果が期待できる。
基礎代謝を上げる食事方法
普段の食生活も基礎代謝に大きな影響を与える。食事で意識したい以下6つのポイントをおさえよう。
- タンパク質をしっかり摂取する
- 腸内環境を整えてくれるものを食べる
- 身体を温めてくれるものを食べる
- 血行を促進させてくれるものを食べる
- よく噛んで食べる
- 栄養バランスを意識した食事を心がける
タンパク質をしっかり摂取する
タンパク質は筋肉の主成分であり、筋肉量の維持・増加に不可欠。また、たんぱく質は食事誘発性体熱産生(DIT)が高く、消化・吸収の過程で多くのエネルギーを消費するため、代謝を活性化させる効果がある。
1日のタンパク質摂取量の目安は、摂取エネルギーのうち13~20%程度。たとえば、摂取エネルギー量が「2000kcalの場合は400g」を目標として摂取する。
また、良質なタンパク質源としては、「鶏むね肉」「魚」「卵」「大豆製品」などがおすすめ。低脂質なうえ、必須アミノ酸もバランスよく含んでおり、栄養バランスを整えやすいのが特徴。
腸内環境を整えてくれるものを食べる
腸内環境が整うと、栄養素の吸収効率を高め、代謝機能を最適化する。
腸内環境改善に効果的な食材は水溶性食物繊維が豊富な「オクラ」「きのこ」「こんにゃく」「わかめ」「昆布」など。朝食に取り入れることで効果的に腸内環境を整えられる。また、マグネシウムを含む海藻類(あおさ、ひじきなど)と水溶性食物繊維を組み合わせることで、腸内環境の改善効果を高められる。
さらに、乳酸菌や納豆菌など、善玉菌を摂取することも効果的。納豆と水溶性食物繊維を含む食品を組み合わせるのもおすすめ。
腸内環境を整えるのにサプリメントや青汁も一定の効果はありますが、あくまでも日頃からバランスの取れた食事を意識して補助的に活用するのが望ましいです。水溶性食物繊維と腸に有益な菌の両方を摂取すること(シンバイオティクス)を心がけ、腸活に取り組みましょう。
身体を温めてくれるものを食べる
身体を温める食品を摂取すると体温が上昇し、細胞の代謝活動の活発化によりエネルギー消費量が増加する。
なお、身体を温める食事は食品の種類よりも、調理法や摂取タイミングが重要なポイント。たとえば、夏野菜として知られる「きゅうり」「トマト」は、生で食べると身体を冷やす可能性があるが、千切りにして炒めたり、ソースやスープにしたりすることで温かい料理となり、身体を冷やす効果を軽減できる。
また、タンパク質を多く含む「肉類」「魚介類」「大豆製品」なども、消化の過程で熱を発生させ体温を上昇させる効果がある。温かい飲み物も身体を内側から温める効果があるが、カフェインを含む飲み物の場合は、睡眠の質を下げる恐れがあるため、夜間の摂取を控えるなど、摂取時間に注意を払うことが大切。
「身体を冷やす食べ物」とは「水分を多く含む」「利尿作用がある」などの排尿しやすくなる食べ物です。加熱調理をすれば代謝の上がる温かい食事ができるので、食べ方の工夫で基礎代謝を上げて、効果的なダイエットにつなげましょう。
血行を促進させてくれるものを食べる
血行を促進する食品を摂取することも、基礎代謝の向上に効果的。血流がよくなると、酸素や栄養素が効率よく運ばれ、細胞レベルで代謝が活性化する。
血行促進に効果的な食品は、ビタミンEを多く含むナッツ類や種子類が挙げられる。ビタミンEには血液をサラサラにする作用があり、循環を改善する効果が期待できる。
また、オメガ3脂肪酸を含む食品も血行を促進する。オメガ3脂肪酸は、青魚(サバ、イワシ、サンマなど)や亜麻仁油などに豊富に含まれ、血管の弾力性を高める効果がある。
さらに、血管を強化し、血流を改善する効果のあるビタミンCを多く含む柑橘類や野菜も血行促進に役立つ。にんにくに含まれるアリシンも、血管を拡張させる作用があり、血行を促進する効果が期待できる。
よく噛んで食べる
唾液には食べ物の消化を助ける消化酵素が含まれている。そのため、よく噛んで唾液を出すことで消化器官の負担が軽減され、結果として代謝機能も向上する。また、1回の咀嚼で「約0.1〜0.2kcal」のエネルギーを消費すると言われており、噛む回数を増やすことで、わずかではあるがカロリー消費量が増加する。
また、よく噛むことで満腹中枢が刺激され、少量の食事でも満足できて自然と摂取カロリーをおさえられる嬉しい効果も。食事時間がのびることで、食後の血糖値の急激な上昇を抑制する効果もある。
1口30回を目安によく噛んで、食事を味わって食べるようにしましょう。スマホを見ながらご飯を食べるなどの「ながら食べ」をしていると食事に集中しにくいので、噛む回数を増やすためにも避けるのがおすすめです。
栄養バランスを意識した食事を心がける
主食・主菜・副菜をバランスよく摂取することで、身体に必要な栄養素を適切に供給し、代謝機能を最適化する効果が期待できる。
また、1日3食食べることで栄養素を均等に補給でき、1日を通じて安定してエネルギーを得ることができる。定期的に食事をすることで空腹時間も適切に管理でき、血糖値や代謝が安定しやすくなる。
ダイエット中は食事回数を減らす人もいらっしゃいますが、1日3食定期的に食べることで、血糖値もエネルギー供給も安定します。とくに朝食を食べることで血糖値が安定しやすくなったり、代謝が上がりやすくなったりするなど、嬉しい効果があります。朝食を食べる習慣がない人は「ヨーグルト」や「スムージー」など、自分が食べられそうなものから徐々に取り入れていきましょう。
基礎代謝を上げるダイエット向きの食べ物8選
ここでは、基礎代謝の向上に役立つ8つの食べ物をご紹介。バランスのとれた食事に組み込むことを意識してみよう。
- 鶏むね肉
- サバ
- ほうれん草
- ヨーグルト
- 納豆
- ブロッコリー
- 卵
- レバー
鶏むね肉
「鶏むね肉」は低カロリーでありながら高タンパク質で、基礎代謝を上げたい人におすすめの食材。
タンパク質を摂取することで、基礎代謝を高める要素の1つである筋肉量を効率的に増やすことができる。さらに、脂肪燃焼を促進する「L-カルニチン」も含まれており、脂肪代謝をサポートする効果も期待できる。エネルギー代謝を促進する「ビタミンB6」も豊富。
ただし、皮には脂質が多く含まれているため、ダイエット中は皮なしで食べるのがおすすめ。「揚げる」「炒める」などの油を多く使う調理方法は避け、「蒸したり」「茹でたり」して食べるようにすることで、より脂質を抑えることができる。
サバ
「サバ」の油に豊富に含まれる「EPA」や「DHA」は、体内の血行を促進し老廃物を流れやすくするため、結果的に基礎代謝を向上させる効果が期待できる。
また、サバは脂肪燃焼を促進し、体内の炎症を抑える「オメガ3脂肪酸」も豊富。カルシウムの吸収を助け、筋肉機能の維持にも役立つ「ビタミンD」も多く含まれている。缶詰や焼き魚など、手軽に取り入れられる形で提供されているため、調理いらずで手軽に摂取できるのもメリット。
ほうれん草
「ほうれん草」は鉄分やマグネシウムを豊富に含み、基礎代謝を高めるのに役立つ野菜の1つ。酸素を運ぶ役割を果たす「鉄分」はエネルギー代謝を促進し、筋肉の収縮を助ける「マグネシウム」は日常での動作や筋トレなどで、筋肉を効率的に動かすために役立つ。
また、ほうれん草には抗酸化作用のある「ビタミンC」も含まれ、体内の老廃物を排出するデトックス効果も。
低カロリー・低糖質のためダイエット中の食事にも取り入れやすく、日常的に摂取しやすい食材。サラダやスムージーに加えてもおいしく楽しめる。冷凍野菜などの活用もおすすめ。
ヨーグルト
「ヨーグルト」は、腸にいい影響をもたらすプロバイオティクスを多く含む発酵食品で、腸内環境を整える効果がある。腸内環境が整うと、栄養の吸収がスムーズになり、基礎代謝の向上につながる。
また、脂肪の分解を促進するカルシウムも多く含まれており、脂肪燃焼効果を高める効果も期待できる。朝食や間食に手軽に取り入れられるため、毎日続けやすい点も魅力。さまざまな種類が販売されているが、とくに無糖のギリシャヨーグルトはタンパク質が豊富で筋肉をサポートする働きがあるのでおすすめ。
納豆
「納豆」に含まれるナットウキナーゼは血流をよくし、代謝を促進する効果がある。また、筋肉を増強し、基礎代謝を維持するために必要不可欠なタンパク質も豊富に含まれている。
さらに、納豆には「ビタミンK2」が含まれており、骨の健康を維持するのに役立つ。骨密度を高めることも筋肉を支える土台を強化することにつながり、結果的に基礎代謝が向上する。
納豆は「白ごはん」「トースト」と合わせるだけでなく、サラダやパスタに加えるなど、さまざまな料理で活用できる。
ブロッコリー
低カロリー・低糖質でダイエットに重宝される「ブロッコリー」もビタミンCや食物繊維が豊富で、基礎代謝を上げる効果が期待できる。
ビタミンCは、脂肪を燃焼させるために役立つ「L-カルニチン」の合成を助けるため、ダイエットにおすすめ。また、食物繊維は腸内環境を整え、栄養の吸収がスムーズになり、結果的に基礎代謝の向上につながる。
さらに、ブロッコリーには抗酸化作用のある成分が含まれており、体内の酸化ストレスを軽減し、健康を維持する効果も。
「茹で」「蒸し」「スムージーに加える」などさまざまな調理方法で楽しむことができ、一人暮らしの人は必要なときに必要な分だけ使える冷凍ブロッコリーも便利。簡単な調理で摂取できる点も魅力。
卵
完全栄養食品として知られる「卵」も基礎代謝を上げるために欠かせない食品。「ビタミンB群」「鉄分」「セレン」など、基礎代謝をサポートする栄養素が豊富に含まれている。とくに「ビタミンB12」には、エネルギー代謝を促進し、体内での脂肪燃焼を助ける効果がある。
また、筋肉の維持と成長をサポートし、基礎代謝を高める役割があるタンパク質も豊富。卵を2個食べると1日に必要とされるタンパク質の1/3ほど摂取することができる。
「ゆで卵」「目玉焼き」「スクランブルエッグ」など簡単な調理で食べることができ、朝食や間食にも手軽に取り入れられるのが特徴。
レバー
レバーは、「鉄分」「ビタミンA」「ビタミンB12」が豊富に含まれている。
「鉄分」は酸素を体中に運ぶ役割を果たし、エネルギー代謝を促進するため基礎代謝が向上する。また、「ビタミンA」は免疫力を高め、身体の健康を維持するのに役立ち、「ビタミンB12」は赤血球の生成を助け、疲労回復や体調維持にもぴったり。基礎代謝の向上以外にも、さまざまな健康効果が期待できる。
レバーは、「炒め物」「パテ」など、さまざまな料理に応用できるため、飽きずに続けやすい点も魅力。
基礎代謝とダイエットに関するQ&A
基礎代謝が低いままでも痩せることはできる?
A:基礎代謝が低いままでも痩せることは可能。
基礎代謝が低くても、適切な食事管理と運動によって痩せることは可能です。その場合、現在の基礎代謝量に合わせて摂取エネルギーを調整し「活動代謝」を増やすのがおすすめです。ただし、長期的に見ると基礎代謝を向上させるための運動を取り入れた方が、ダイエットが成功しやすいです。
基礎代謝が高いことのデメリットはある?
A:汗をかきやすい体質になる可能性があるが、健康面や体重管理の観点からは、基礎代謝が高いメリットの方が大きい。
基礎代謝が高いことは、多少汗をかきやすくなることを除けば、ほぼデメリットはなく、健康面やダイエット面において望ましい状態です。基礎代謝が高いことで、効率的にエネルギー消費でき、体重管理がしやすくなるだけでなく、健康維持にもつながります。
落ちた基礎代謝を戻すにはどれくらいの期間が必要?
A:個人差があるが、一般的には「1〜2ヶ月」で身体の変化を実感できる可能性が高い。
個人の体質や生活習慣、年齢など原因によっても、基礎代謝を戻すのに必要な期間が異なります。早いうちに結果が出なくても、焦らず、自分のペースで継続することがカギとなります。
アルコールのとり過ぎは基礎代謝の減少につながる?
A:直接的に基礎代謝を減らすわけではない。
アルコールを飲むことで直接的に基礎代謝が減少するわけではありませんが、体内でアルコール分解が優先されることでほかの代謝活動が後回しになり、結果的に体重増加や代謝機能の低下につながる可能性があります。また、アルコールの影響で血糖値が一時的に下がるので、〆のラーメンなど糖質を欲する気持ちが高まります。そのため、飲酒はほどほどを心がけ、エネルギー代謝のバランスを保つことが健康的な体重管理につながります。
漢方やサプリメントに基礎代謝を上げる効果はある?
A:基礎代謝を上げる効果が期待できるが個人差が大きく、科学的検証が十分でない場合もある。
漢方やサプリメントでも基礎代謝を上げる効果が期待でき、とくに身体を温める作用を持つ漢方薬は代謝促進につながる可能性もあります。ただし、個人差が大きいため、利用する際は専門家のアドバイスを受け、自身の体調を注意深く観察しましょう。漢方やサプリメントはあくまで補助的な手段として、正しい食事や運動をメインに取り組むことをおすすめします。
摂取カロリーが基礎代謝を下回るダイエットは効果がある?
A:短期的に効果が感じられる可能性があるが、長期的にみるとさまざまな問題を引き起こす恐れがある。
極端なカロリー制限は、健康的なダイエット方法ではありません。摂取カロリーが基礎代謝を下回るような厳しい制限を伴うダイエットは、短期的に体重が減る可能性はありますが、体調不良を起こしたり、リバウンドのリスクが高まったりする傾向にあります。健康的に痩せるためには、バランスの取れた食事と適度な運動を心がけること。自分の基礎代謝と活動量に応じて適切なカロリー摂取を意識しましょう。
博士(理学) 管理栄養士
愛国学園短期大学 家政科 准教授、早稲田大学 ナノライフ創新研究機構 招聘研究員、(株)アスリートフードマイスター 認定講師、発酵料理士協会特別講師としても勤務。「時間」という観点から、医学・栄養学・調理学の領域にアプローチすることを専門とする。科学的根拠を基にしたライフスタイルへのアドバイス、実体験を基にした食育活動や講演活動、料理教室も開催している。『食べる時間を変えるだけ! 知って得する時間栄養学』(宝島社/2022)、『10時間空腹リセットダイエット』(主婦の友社/2023)、他多数の書籍を執筆。
【所属】
愛国学園短期大学 家政科 准教授
早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構 招聘研究員
あきはばら駅クリニック 非常勤管理栄養士
アスリートフードマイスター認定講師
発酵料理士協会特別講師