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「眠りの質」が未来を変える。エアウィーヴ×味の素が共創するウェルビーイングのカタチ

睡眠は、食事や運動と並ぶ、健康を支える三大要素のひとつ。にもかかわらず、その重要性はまだ十分に認識されているとは言えない。

「睡眠の質」にいち早く注目し、研究と商品開発を重ねてきたのが、寝具メーカーの「エアウィーヴ」と、アミノ酸を通じて人々の健康を支え、睡眠サポートサプリメントである「グリナ®」を提供してきた「味の素」だ。

今回は、株式会社エアウィーヴ(以下、エアウィーヴ) 人事総務本部長の冨田力矢さんと、味の素株式会社(以下、味の素) スポーツ&ヘルスニュートリション部 部長の割田竜夫さんに、睡眠のあり方とアスリート支援、そして“共創”によって広がるウェルビーイングな未来について、Wellulu編集長の堂上研が話を伺った。

 

冨田 力矢さん

株式会社エアウィーヴ 常務執行役員/人事総務本部長/社長室長

2010年10月、株式会社エアウィーヴに入社。営業、アスリートサポート、睡眠研究、海外新規事業推進、マーケティングなど、様々な業務を経験する。現在は人事総務本部長として、寝具を通じて世界中の「睡眠の質の向上」を推し進めている。

https://sleep.airweave.jp/

割田 竜夫さん

味の素株式会社 スポーツ&ヘルスニュートリション部 部長

味の素㈱の食品関連の事業部で25年以上の経験を積み、「アミノバイタル®」や「グリナ®」などのスポーツ・健康サプリを手がける「スポーツ&ヘルスニュートリション部」へ異動。2025年4月より現職。

https://www.ajinomoto.co.jp/

堂上 研

株式会社ECOTONE 代表取締役社長/Wellulu 編集長

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集長に就任。2024年10月、株式会社ECOTONEを立ち上げる。

https://ecotone.co.jp/

目次

「エアウィーヴ」と「味の素」が“眠り”に注目した理由

堂上:本日は「睡眠」をテーマに、お二人からお話を伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

早速ですが、「エアウィーヴ」と「味の素」が、それぞれ睡眠の研究を始めたきっかけを教えていただけますか?

冨田:じつは、私たち株式会社エアウィーヴの前身の会社は、もともと漁網や釣り糸を押し出し成型する機械メーカーなんです。

堂上:釣り糸を製造する機械ですか! 意外なルーツですね。

冨田:そうなんです。前身の会社が保有していた、釣り糸のような極細繊維を編み込んだクッションや緩衝材の製造技術を応用して、2005年からエアウィーヴの素材「エアファイバー®」の開発をスタートしました。そして、寝具メーカーとしての歩みを進めることになったのです。

堂上:あらためて「エアファイバー®」を見ると、たしかに釣り糸を編み込んだような素材ですね!

冨田:この素材を活かして、マットレスや枕などの寝具を開発し、2009年からは「マットレスの素材の違いによる睡眠への影響」の研究も本格的に始めています。

堂上:睡眠の研究にまで広がっていったわけですね。では、味の素が「睡眠の質」に注目した経緯はいかがですか?

割田:味の素では2005年から「グリナ®」(※)という睡眠ケアサプリを販売しています。「グリナ®」に含まれている「グリシン」というアミノ酸が、睡眠の質の向上をサポートすることがわかったのは、じつは偶然の発見でした。※2015年以降、機能性表示食品として販売中。

当初、他のアミノ酸の研究をしている中で、グリシンをプラセボ(偽薬)として使用していたんです。すると、そのグリシンを飲んでいた被験者のご家族から、「最近よく眠れているようだ」という報告が上がりました。それがきっかけで本格的な研究が始まったんです。

堂上:どちらも、まったく違うアプローチから「睡眠の質」の研究へたどり着いたというのが面白いですね。お二人自身はもともと睡眠に関心があったのでしょうか?

割田:私は昔から、どこでもすぐに眠れるタイプで、睡眠に困った経験がありませんでした。逆に、毎晩しっかりと寝ているのに日中でも眠くなることに気づいたんです。その頃にちょうど「睡眠の質」という言葉が世の中に浸透してきて、「もしかしたら私も『睡眠の質』が良くないのかもしれない」と、睡眠に対する興味が強くなっていきました。

冨田:私も、睡眠に悩むことはありませんでした。ただ、エアウィーヴに入社して、自社の寝具を使い始めたときに「何かが変わった」と実感し、睡眠に対する関心が高まりました。

堂上: 睡眠に悩みがない人でも、じつは“質”に課題があるという可能性もあるのですね。

快眠のカギは「深部体温」。それぞれの研究が導いた共通の答え

堂上:僕も若い頃は睡眠に悩んだことはなかったのですが、年齢を重ねるにつれて「眠るのが難しくなってきた」と感じるようになりました。同じように感じている人も多いのではないでしょうか。

割田:私も最近では、入眠するまでに少し時間がかかるようになったなと感じています。

堂上:寝具のほかにも、光の強さや音、室温など睡眠の質に影響する要因はいろいろありますよね。エアウィーヴでは睡眠の研究を進める中で、どのような発見があり、それを製品づくりにどう活かしてきたのでしょうか?

冨田:スタンフォード大学の西野精治教授と共同で行った研究では、寝具によって「睡眠の質」がどう変化するのかを検証しました。

当時は、横になったときの体圧分散の研究はあったものの、寝具が「睡眠の質」にどう影響するかという視点の研究はまだ進んでいませんでした。

堂上:なるほど。やはり寝具の硬さや柔らかさなどが大きく関係しているんでしょうか?

冨田:研究の結果から見えてきたのは、「通気性」の要因が大きいということでした。エアウィーヴの製品は通気性が非常に良く、体内に熱がこもりません。また、エアウィーヴの復元性の高いマットレスは寝返りが打ちやすく、さらに効果的に熱放散を促します。

良質な睡眠をとるためには、入眠時に「深部体温(=体の内部の体温)」を十分に下げることが大切なのです。

堂上:なるほど。重要なのは「深部体温」の低下なんですね。店頭で寝具を選ぶときには、なかなか気づきにくいポイントかもしれません。

冨田:寝具は横になったときの感触で選びがちですが、ひと晩使ってみた後の寝起きにどう感じるかが大切ですよね。

割田:じつは「グリナ®」に含まれているアミノ酸・グリシンにも、手足など身体の末端から熱を逃して、「深部体温」を下げる働きがあります。その効果が「良質な睡眠」を手助けしてくれるんです。

堂上:2社が別々に「睡眠の質」を研究した結果、共にたどり着いたのは「深部体温」というキーワードだったんですね。

社員にもアスリートにも“最適な眠り”を届ける

堂上:冨田さんは、エアウィーヴ入社後に睡眠への関心が高まったとおっしゃっていましたが、社員のみなさんも、やはり睡眠への意識が高いのでしょうか?

冨田:そうですね。エアウィーヴは「睡眠の質」を提供する企業として、社員自身が睡眠に高い意識を持てるよう、さまざまな取り組みを行っています。

例えば、当社の睡眠測定アプリ「airweave sleep analysis」を活用し、一定の基準をクリアした社員にポイントを付与する仕組みがあります。その累計ポイントに応じて、「睡眠休暇」が取得できる制度を、2019年から導入しています。

堂上:睡眠休暇制度ですか! それはおもしろいアイデアですね。そのアプリはどのような仕組みになっているんですか?

冨田:マットレスの上にスマートフォンを置くだけで、体動を検知して睡眠の質を簡易的に計測できる仕組みです。

つまり、エアウィーヴの社員は良質な睡眠をとることで、有給休暇が最大5日付与されるんです(笑)。

堂上:睡眠をしっかり取ることで休暇がもらえるなんて、まさに“睡眠を大切にする文化”ですね。

割田:睡眠をとるほどにインセンティブが得られる制度は素晴らしいです。味の素でも、将来的にエアウィーヴさんのマットレスを取り入れたような福利厚生ができたら、社員の睡眠の質向上にもつながりそうで、とても魅力的だと感じます。

堂上:それが実現すると、社員のみなさんは間違いなくウェルビーイングになりますね!

お二人の会社では、アスリートへの支援も積極的に行っていますよね。

割田:はい。味の素では、「食とアミノ酸」の視点から、さまざまな競技のアスリートに向けて栄養サポートをしています。コンディションに応じたアミノ酸の摂取は、パフォーマンスにも直結します。

冨田:エアウィーヴでも、アスリートの方々にマットレスを提供することから始まり、フィードバックをいただきながら、さらなる商品開発を進めてきました。

堂上:競技によって、マットレスへのニーズも変わってくるのですか?

冨田:まさにその通りです。たとえば、水泳選手は肩幅が広いので、上半身はやや柔らかいマットレスが好まれます。一方で、柔道選手であれば腰をしっかり支えるために、硬めのマットレスが望ましいといった具合に、それぞれの競技や体形によってニーズが異なります。

エアウィーヴのマットレスは3分割構造になっており、部位ごとに硬さを変えられる設計にしているんです。

堂上:実際に触ってみると、「柔らかめ」と「硬め」では身体の沈み方が全然違いますね。こうしたパーソナライズは、睡眠の質を高めるだけでなく、人のウェルビーイングにも直結する取り組みですね。

冨田:東京2020とパリ2024オリンピックの選手村では、選手向けにマットレスのフィッティングブースを設置し、体形の測定から硬さパターンの提案までを行いました。選手一人ひとりに最適な睡眠環境を提供するという挑戦でした。

割田:これは未来の研究の話になりますが、人によって体内のアミノ酸バランスが異なることがわかってきています。

エアウィーヴさんのマットレスと同じように、個人のアミノ酸バランスに合わせて、必要なアミノ酸を補えるような製品も、今後生まれていくかもしれません。

2社が“共創”で広げていく「睡眠」の可能性

堂上:本日の対談を通して、睡眠研究やアスリートへのサポートなど、エアウィーヴと味の素には多くの共通点があると感じました。

これからの時代に新しい価値を届けていくためには、1社だけで完結するのではなく、他社と力を合わせる“共創”が重要になってくると思います。お二人はこの「共創」について、どのようにお考えですか?

割田:やはり、1社でできることには限界がありますよね。「深部体温を下げると、深い睡眠につながる」ということも、私たち1社で発信するより、複数の企業が同じメッセージを伝える方が、社会への浸透力がぐっと高まると感じています。

冨田:本当にそうですね。健康においては、「食」や「運動」の重要性はすでに多くの方に知られるようになってきましたが、「睡眠」に関してはまだ十分に認識されていないと感じています。

だからこそ、味の素さんのような企業と一緒に、「睡眠の価値を高める流れ」を共につくっていけるのは、非常に意義深いことだと思っています。

割田:味の素では、社員向けの「食」や「運動」といった領域のサポートには力を入れているのですが、「睡眠」に関してはまだ手が届いていないと感じる部分もあります。だからこそ、今回のような取り組みを通じて、エアウィーヴさんをはじめとする異なる領域の企業のみなさまとも連携しながら、より多くの人のウェルビーイングにつながる新たな価値を共創できたら……そんな未来に、大きな可能性を感じています。

堂上:まさに、企業の枠を超えた共創によって、一人ひとりの暮らしに寄り添う価値が広がっていくようで、とてもワクワクしますね。

では最後に、お二人にとってのウェルビーイング、もっとも心が満たされる瞬間は、どんなときでしょうか?

割田:スポーツ&ヘルスニュートリション部に異動してから、スポーツの現場を訪れることが増えました。アスリートに限らず、人が本気になって、全力で何かに取り組む姿を見ると、本当に心を揺さぶられます。

堂上:スポーツは本当に感動を与えてくれますよね。高校野球もそうですし、僕は息子がサッカーをプレイしている姿を見るだけで、涙が込み上げてくることがあります。

冨田:私も同じです。7歳の息子がいるのですが、何をやるにしても全力で取り組むんです。バッタを捕まえたとか、足が速くなったとか。そんな成長した姿を見ることが何よりの喜びになっています。

あとは人事の仕事をしていることもあって、新卒社員が成長していく姿にも、同じような喜びを感じます。自分の意見をしっかり言えるようになったり、仕事に自信を持ち始めたり……そういう瞬間に、すごく心が満たされるんです。

堂上:素敵ですね。今日のお話を通して、「睡眠」が人のウェルビーイングに深く関わっていることを、あらためて実感しました。きっと多くの方にとって、睡眠を見直すきっかけになる対談になったと思います。

<後編記事はこちら>

「深部体温」に着目したコラボレーション。エアウィーヴ×味の素が導く、新しい睡眠体験とは?

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