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鮭好きに聞くサーモンのおいしい食べ方。実は鮭ってサステナブルの生き物?【王子サーモン】

日本の朝食の定番である鮭。その神秘的でサステナブルな生態は、親子の生命のバトンタッチだけでなく、実は自然や人も支えていた?生まれた川に戻ってくる珍しい習性は誰しも耳にしたことがあるのでは?ロマン溢れる鮭の生態からおいしい鮭のアレンジレシピなど、今回、王子サーモンの浅倉さんに詳しくお話を伺った。

浅倉 徳司さん

王子サーモン株式会社 専務取締役 北海道工場長

高校生の頃読んだ本をきっかけにアラスカに魅せられ、大学卒業後大手水産会社に就職。以来、世界中のサケの棲む場所に赴き30年。現在は北海道在住し、美味しいスモーク製品の製造と開発に従事。

本記事のリリース情報

WEBメディア「Welulu」にインタビュー記事が掲載されました

目次

紅鮭、銀鮭、キングサーモン…サーモンの種類と味の特徴

── はじめに、浅倉さんは鮭・サーモンはお好きですか?

浅倉さん:もう何年も毎日食べているくらい大好きです。

── 毎日ですか?毎日食べている方には初めて出会いました。

浅倉さん:弊社がスモークサーモンの会社なので、毎日お昼に試食の名目でスモークサーモンをおいしくいただいています。作るだけでなく、味見をしなければならないので。でも家でも週に3回は食べてますね!

──本当にお好きなんですね。サーモンは、食べ過ぎてもとくに問題はないのでしょうか?

浅倉さん:私はこのとおり、元気に過ごしていますし、大丈夫だと思います。

──説得力がありますね!では、まず鮭やサーモンの種類について詳しく教えていただけますか?

浅倉さん:はい、一般的に流通しているものは全部で6種類、アトランティックサーモン、キングサーモン、サーモントラウト、紅鮭、白鮭、銀鮭です。みなさんも聞いたことがある名前が多いかと思います。

──はい、聞いたことがあるものが多いです。これらの違いも教えてください。

浅倉さん:この違いは鮭の種類によります。たとえば、アトランティックサーモンは大西洋産のサーモン、キングサーモンはその名の通り「キング」と呼ばれる大きなサーモン、サーモントラウトは淡水と海水の両方で育つ種類です。

紅鮭、白鮭、銀鮭はそれぞれ身の色や質感で区別されます。産地による違いもありますが、基本的には魚種によって異なりますね。

── さまざまな特徴がありますね。ちなみに浅倉さんのお好きな種類はどれなのでしょうか?

浅倉さん:私は紅鮭ですね!脂ののりや身の締まり方が好みで、食べると肉々しい感じがします。もちろんほかの種類も美味しいですが、あえて言うなら紅鮭ですね。

── 紅鮭はどのように食べるのが好きですか?

浅倉さん:最近ではレアステーキにして食べるのがお気に入りです。バーベキューで焼いても美味しいですね。普段はお肉がメインのバーベキューに紅鮭を加えると、少し豪華な感じになりますし、一緒に食べる人たちから「お!おいしい!」というよい反応も得られます。

── レアステーキおいしそうですね!銀鮭もよく見かけますが、どのような特徴がありますか?

浅倉さん:銀鮭は日本で一番売られている鮭です。身質が柔らかく、しっとりしていて非常に食べやすいです。塩鮭としてもっとも流通しているのが銀鮭なので、聞き覚えのある人も多いかと思います。

──王子サーモンで作っているスモークサーモンにはどの種類のものが使われているのですか?

浅倉さん:弊社では全種類を使っていますが、多いのはプリっとした食感と鮮やかな色が特徴のサーモントラウト。次に多いのは真っ赤な身色と天然魚らしいしっかりとした食感の紅鮭です。

── 全種類使っているんですか! キングサーモンは「キング」と名がつくこともあり、なんだか高級そうです。

浅倉さん:そうですね、実際非常に少ない量しか取れないため、高級です。養殖もされていますが、生産も難しいんですよ。見た目も大きく、脂がのっていて、繊細な身質が特徴です。口の中でほどけるような、そんな身質です。

── それぞれの特徴を聞き食べ比べてみたくなりました。ところで、スーパーなどで「サーモン」や「鮭」として売られているのを見ますが、種類の違いは値札などでも分かるのでしょうか?

浅倉さん:おっしゃる通り、パックに入って売られている鮭やサーモンには、一般的には魚種が細かく書かれていないことが多いです。ですが、実際には表示ルールがあり、よく見ればアトランティックサーモンやキングサーモン、紅鮭、銀鮭などといった具合に、種類や産地などが記載されています。食べ比べをしてみるのも面白いと思いますよ。

── そもそもですが、鮭とサーモンは同じものなのでしょうか?

浅倉さん:生物学的には鮭もサーモンも同じです。ですが、食べ方によって区別されることが多いようです。たとえば、お刺身やスモークサーモンなど生食に近い形で食べる場合は「サーモン」と呼びますが、焼き魚や塩鮭などの和食的な調理法の場合は「鮭」と呼ばれることが多いです。

── ちなみに鮭の口が鋭いのはなぜなのでしょうか?

浅倉さん:おもしろい質問ですね。とくに産卵期になると、オスの鮭の口元が鋭くなり、鼻曲がりと呼ばれる鍵状の形になるんです。この現象はオスに限定されており、メスには見られません。

なので異性を引きつけるための1種のアピールなのでは?と思うんです。クジャクの羽のように、繁殖期におけるメスへのオスのアピールのために口元を鋭くキリッとかっこよくしているのかもしれません。

鮭はサステナブル? 多くの生物や生態系を支える鮭

── 鮭は生まれた場所に戻ると聞いたことがあるのですが、なぜでしょうか?

浅倉さん:これはまだ完全に解明されていないのですが、有力な説の一つには、鮭は地球の磁場を頼りに、自分の生まれた川に戻る力を持っていると考えられています。また、最後の段階では川の匂いを嗅ぎ分けて、特定の川に帰るとも言われています。

── 鮭は川で生まれ、海に出て、また生まれた場所に帰る…、魚の中でも珍しい習性なのでしょうか?

浅倉さん:そうですね、ほかの動物ではあまり見ないですし、長い距離を移動して戻ってくる姿にはなんというか、本当にロマンを感じます。生物としても非常に興味深いなと思っているんです。

── どのくらいで戻ってくるのでしょうか?また、川から海に下るというのも不思議です。

浅倉さん:大体3年から4年で生まれた川に戻ってきますよ。

たとえば、ヤマメという小さな魚がいますよね。これが海に下るとサクラマスという大きな魚になります。これって、川にいられなくなった魚たちが仕方なく海に下ってみたら、意外と天敵も少なく餌も豊富で、結果的に大きくなって帰ってくるという説があるんです。仕方なく出ていったのにむしろ大きく成長する、なんだかおもしろいですよね。

── 興味深いですね。鮭が産卵すると死んでしまう点もなんだか儚いな、って思ったりします。

浅倉さん:たしかに鮭は生まれた場所に戻り、産卵して死んでしまいますが、実はその身体が分解されてプランクトンなどの餌となり、次世代の稚魚の成長を支えてくれるんです。つまりそこには生命のサイクルがあるんですよね。親が自分の身を粉にして子どもたちの餌になる、というのは感動的だなと思っています。

── 身体が死んでしまっても親から子へのバトンタッチがおこなわれているのですね。

浅倉さん:また、熊みたいに鮭を食べる野生動物っていますよね。彼らって、贅沢においしいところだけ食べたりするんです。食べ物を粗末にしてる!とも思うんですが、実はこれが周辺の植物の栄養になってよく育つんです。こうして鮭は多くの生物や生態系を支えていて、サステナブルなんですよ。

── 生命の神秘を感じますね。

浅倉さん:そうなんです。古くからこうやって鮭がやってきたこと、生命の輪廻というかサイクルを考えると、鮭の存在には多くのロマンが詰まっているなと思います。食材としてのみならず、生物としても本当に魅力的なんですよ。

── 素敵なお話ありがとうございます。

養殖技術が発達し、世界中で親しまれる鮭

── 素朴な疑問なのですが、鮭は白身魚か赤身どちらなのでしょうか?

浅倉さん:鮭は基本的に白身魚です。見た目は赤やピンクっぽいですが、赤身魚とは異なり、その色の由来を考えるとよいです。

赤身魚の代表としてはマグロやカツオがありますが、彼らの赤い色は血液に含まれる「ミオグロビン」によるものなのですが、鮭の赤みは「アスタキサンチン」という成分によるものです。アスタキサンチンは鮭が食べるものに含まれる色素なので、赤身とは由来が違うんですよね。

あとは、アスタキサンチンは熱に強いため、焼いても色が変わりません。焼きしゃけを思い浮かべてもらうとわかる通り、生の状態よりは薄くなりますが、綺麗な赤やピンク色をしていますよね。その一方、マグロなどの赤身は熱を加えると白くなります。

── 火を通したときの色の変化で違いがわかりやすいですね!スーパーで売られている鮭には、天然と養殖がありますよね。

浅倉さん:どちらも美味しいですが、天然の鮭が取れる国は限られていて、アメリカ、ロシア、カナダ、日本の4カ国のみです。ですが、養殖の技術が発展したおかげで、世界中で養殖が盛んで、ノルウェーやチリ、スコットランド、オーストラリア、ニュージーランドなどがおもな生産地です。最近ではトルコの黒海でも養殖がおこなわれているんですよ。

──全世界で食べられているのですね。なにか環境的な条件があるのでしょうか?

浅倉さん:天然の鮭が取れる国を考えてもらうとわかりやすいのですが、鮭は寒冷地を好む魚で、一般的に水温が20度以下の環境で生息します。日本だと北海道のイメージですよね。なので養殖もノルウェーやチリなどの寒冷地で盛んにおこなわれています。

個人的に意外だなと思ったのですが、イランが世界で6番目の生産量を誇っているんです。高地など寒冷な地域での養殖も可能となっているようですね。

── 寒いところでよく採れるのですね。日本ではいつ頃から鮭がよく食べられるようになったのでしょうか?

浅倉さん:日本では縄文時代からすでに鮭が食べられていたとされています。縄文時代の遺跡から鮭の骨が出土しているんですよ。とくに北海道の遺跡からは多くの鮭の骨が発見されているため、この地域での鮭の消費はかなり古くからおこなわれていたようです。

── 縄文時代から!やはり日本の朝食の定番イメージには、長い歴史があったのですね。

浅倉さん:そうですね。とくに秋に鮭が多く獲れる北海道では、冬を迎える前の重要な保存食として鮭が重宝されていました。冷凍や冷蔵がない時代では、塩蔵や乾燥がおもな保存方法で、塩漬けにして干すことで長期間保存が可能になりました。これにより、秋に獲れた鮭を冬の間もタンパク源として利用できたため、昔から珍重されてきました。

もっとおいしくサーモンを楽しむヒント

サーモンをおいしく焼くポイントとは?

── では、調理のポイントについて伺っていきたいと思います。おいしい鮭の食べ方や焼き方について教えていただけますか?

浅倉さん:正直、本当にどうやって食べても美味しいんですよ。お刺身でも、生でも、焼いても、スモークサーモンでも。それぞれおいしくて、楽しめる。なので皆さんの好みに合わせて自由に食べるのが1番なのかなと思っています。

── では、焼き鮭の調理の際のポイントはありますか?

浅倉さん:そうですね、「焼きすぎないこと」でしょうか。中までガチガチに焼いてしまうと、硬くなってしまって、せっかくのおいしい鮭がもったいないんです。

現在流通している鮭はしっかり管理されているので、そこまで焼きすぎなくても大丈夫です。少し中がレアかな?くらいの状態で、しっとり感が残っている方がおいしいと思います。タタキのような感じでもよいですね。

但し、天然サーモンをレアで焼く場合には一度-20℃で24時間以上冷凍されたものを使って下さいね。

── 火が入っているかどうか心配になるとついつい火を止めず焼き続けてしまうんですよね……。

浅倉さん:わかります!なので迷ったら早めに火を止めるぐらいがちょうど良いです。完全に硬くなる前に引き上げることがポイントです。

── 鮭と組み合わせると相性の良い食材やレシピは何かありますか?

浅倉さん:まず、皆さんご存知のとおり、ご飯との相性は抜群です。また、スモークサーモンならパスタとも相性がいいですよ。

ペペロンチーノなど、シンプルなパスタに最後にスモークサーモンを乗せて、パスタの余熱で少し温めると、スモークの香りがふわっと立ち上ります。温まることで、スモークしたてのような薫香が感じられます。定番ですが、ベーグルサンドにしてクリームチーズと一緒に食べるのも間違いなくおいしいですよね。

── パスタの余熱で温める……想像しただけで美味しそうですね。では、スモークサーモンを使ったおすすめのレシピはありますか?

浅倉さん:スモークサーモンはお寿司にも合います。意外とご飯を海苔で巻いて食べるように、スモークサーモンで巻いて食べるのもおいしいんですよ。

サーモンステーキ・サーモンキャンディとして楽しむのもおすすめ!

── 試してみたいです! まだ意外と知られていない鮭のレシピや食べ方はありますか?

浅倉さん:一般的にみなさんが食べているのはお刺身、焼鮭、スモークサーモンがほとんどだと思います。私のおすすめはフライパンで焼く鮭ステーキですね。本当にお肉のステーキを食べているかのような満足感があります。

── 焼鮭は食べますが、鮭ステーキはしたことないですね。作り方を教えてください。

浅倉さん:まず、生のサーモン(塩がついていないもの)を用意してください。もし塩がついている場合は、そのあとの調味料を少し減らせば大丈夫です。お好みのハーブソルトやガーリックなど、ご家庭にあるスパイスをたっぷりふりかけ、オリーブオイルを少し敷いたフライパンで蓋をして焼きます。焼きすぎず、中が少しレアな状態が美味しさのポイントです。

── 塩鮭より厚みがあるものを使うのがよさそうですね。

浅倉さん:あとはバーベキューで「プランクサーモン」をやってみるのもおすすめです。これは私も初めて食べたとき、本当にびっくりしたんですよね。アラスカで食べたんですよ。

──「プランクサーモン」は初耳です。想像がつかないのですが、どんな料理なのでしょうか?

浅倉さん:プランクとは、シダープランクと呼ばれる杉の薄い板のことで、これを30分ほど水に浸します。水分を含んだ板をバーベキューの網に乗せ、その上にサーモンを置いてスパイスをふりかけ、蓋をして焼くんです。板がじわじわと燃え、杉の香りがサーモンに移ることで、簡易スモークのような風味になるんですよ。

── おしゃれですね!バーベキューでやったら大注目な気がします。

浅倉さん:プランクをしっかり水に浸していないと板が燃えすぎてしまうので注意してくださいね。このときも、焼きすぎず、じっくりと火を通すことが大切です。また、蓋をして蒸し焼きにすることで、均一に火が通ります。蓋がない場合はアルミホイルで包んであげるとよいです。

── このときおすすめの鮭の種類はありますか?

浅倉さん:なんでも大丈夫ですよ。どれで作ってもおいしいです。

──子どももおいしく食べれて家族でたのしめそうですね。

浅倉さん:そうですね。私もすでに春になってから2回もバーベキューに行って試したのですが、バーベキュー前にさっとお刺身の柵を買って、木を準備してスパイスして焼くだけなので簡単です。

子どもたちと一緒に塩を振ったり、スパイスをまぶしたりして楽しい時間になるのでおすすめです。

──子ども向けのおすすめレシピはありますか?

浅倉さん:甘いものが好きな子どもが多いと思うので、軽く塩をした鮭にメープルシロップや蜂蜜をかけて焼くのがおすすめです。甘じょっぱくておいしいんですよ。カナダでは「サーモンキャンディ」と呼ばれる甘い鮭料理がありますが、これも非常においしいです。子どもと一緒に作ると楽しいですし、意外とハマる味だと思います。

──では、一人暮らしでも簡単にできる料理はありますか?

浅倉さん:一人暮らしなら、スモークサーモンが便利です。パスタにのせたり、ご飯と一緒に食べたり。スモークサーモンだと生のものに比べて賞味期限の心配も少なく、1人でも手軽に手に取っていただけると思います。

──浅倉さん、皆さんに鮭をどう楽しんでほしいと考えていますか?

浅倉さん:鮭は非常に色鮮やかで、見た目も華やかですので、あらゆる場面で活用していただきたいと思います。たとえば、クリスマスにはサーモンを使った料理を彩りとして楽しんでいただけますし、ひな祭りのちらし寿司や手まり寿司にもぴったりです。ハロウィンにはサーモンのオレンジ色をカボチャに見立てて、マッシュポテトなどを使った飾り付けにも活用できます。

何よりも、鮭は日常食として朝ご飯の定番でもあり、特別な日の華やかな食材にもなります。日常の食卓に彩りを添え、ハレの日には特別な一品として、さまざまなシーンで鮭を楽しんでいただければと思います。鮭の美しさと美味しさを存分に味わっていただきたいですね。

Wellulu編集後記
魚の中でも、日常的に食べる機会が多い鮭。鮭を詳しく知る機会がなかったのですが、今回の取材でロマン溢れる生態を知り、とても驚きました。川で生まれ、海に泳ぎ、また生まれたところに戻り、一生を終える……、その後も稚魚やほかの生態系の力にもなり、生命のサイクルを回しているサステナブルな魚である点は興味深かったです。美味しそうな調理法も教えていただいたので、ぜひ挑戦してみたいです。

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