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【杉山博一氏】日本を芸術文化大国にする! 「天命」と「偏愛」から始まったコミュニティ特化型オウンドプラットフォームの誕生ストーリー〈後篇〉

日本でアーティストが育たないのは、30歳を潮に道を諦める人が大半だからだ。日本には若きアーティストを育てる仕組みがない―そんな課題を解決するために、アーティストやクリエイターがコミュニティを持つことで、活動が継続できる仕組みを作ったのがコミュニティ専用オウンドプラットフォームの「OSIRO」である。

事業を運営するオシロ株式会社の代表取締役・杉山博一氏と、コミュニティが持つ可能性に関心を寄せる博報堂・Wellulu編集部プロデューサーの堂上研氏の二人が「偏愛とウェルビーイング」をテーマに対談をおこなった。

 

杉山 博一さん

オシロ株式会社 代表取締役社長

1973年生まれ。元アーティスト&デザイナー、2006年日本初の金融サービスを共同起業(2024年3月IPO)。2014年シェアリングエコノミープラットフォームサービス「I HAV.」をリリース、外資系IT企業日本法人代表を経て、2015年アーティスト支援のためのオウンドプラットフォームシステム「OSIRO」を着想し開発、同年12月β版リリース。

「OSIRO」公式ホームページ

堂上 研さん

Wellulu編集部プロデューサー

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集部プロデューサーに就任。

偏愛のテーマが次々と変わっていった少年時代

堂上:それほどまでに人と人をつなぐことに思いを持つに至った、杉山さんのルーツに迫っていきたいと思います。杉山さんご自身、noteで偏愛の歴史を綴ってこられています。僕も読ませてもらった限り、幼少の頃からずっと自分の「好き」にのめり込んでこられた様子が伺えます。

杉山:僕の偏愛の歴史は幼少期のミニカーから始まりました。じつはその前に、ひたすら新聞を読むという時期もあったのですが、そこからミニカーに行き、それが電車になり、漫画へと進んでいった感じです。

堂上:何かに偏愛していくうえで、それぞれきっかけってあるんですか?

杉山:どれもちょっとしたきっかけで沼にハマっていく感じですね。電車にハマったのも、当時中野に住んでいたのですが、家の前を電車が走っていたため、窓から有無をいわさず電車が見えます。それがきっかけでハマりました。

堂上:それがまた、通り一遍のハマり方ではなかったと。

杉山:中野といえば「中野ブロードウェイ」という、いわば偏愛の聖地があるんですよね。自分としては模型屋さんに通うふつうの子どものつもりでしたが、「中野ブロードウエイ」にあるお店は、マニアがわざわざ訪ねてくるようなマニアックなお店だったりするんです。

僕はディープな世界がデフォルトとして育ってしまい、気がついたら父親と鉄道ジオラマを作っていました。

堂上:それが電車好きのデフォルトだとご自身では思っていたんですね。さきほど挙げていた漫画へのハマり方は、どんなふうだったのでしょうか。

杉山:『コロコロコミック』、『少年ジャンプ』がきっかけで漫画が好きになり、『Dr.スランプ』や『ドラゴンボール』にハマっていくわけです。そのうち読むだけでは飽きたらず、自分で描くようになりました。鳥山明さんに「弟子にしてください」と手紙を送ったこともあります。当然、返事はもらえなかったのですが。

堂上:もし返事をもらっていたら、違った人生が待っていたかもしれませんね。

杉山:小学3年生のときに『機動戦士ガンダム』がはじまり、すぐに好きになり、アニメを観るだけじゃなく、プラモデルにもハマりました。ハマるとどっぷりとその世界に没入してしまうわけです。

堂上:ご両親は「遊んでばかりいないで勉強しなさい」とは言わなかったんですか?

杉山:親に勉強しなさいと言われたことがないんです。それにはわけがありまして……。小学2年生の時に、死にかけたことがあるんです。

小学生の時、学童保育に預けられていたんですけど、ある日、遊んでいたところ窓から落ちてしまいました。それで意識不明の瀕死の状態になったんです。

まわりの人も親も一度は死んだと思ったようですが、その後意識を取り戻したんです。頭蓋骨骨折、あと1mmズレていたら死んでいたとお医者さんは言っていました。じつはその時の一部始終を覚えていて、黒いモヤモヤとした中にいると人の声が聞こえてきたんですね。そちらに向かって歩いていくと目が覚めたんですよ。だから子ども時代に三途の川を見ているんです。

堂上:川を渡らなくてよかったですよね……。

杉山:はい(笑)。それがあって以来、親は勉強しろと言わなくなりました。

堂上:生きているだけでいいと、思われたんですよね。

杉山:僕もそれ以来、宿題もしないし、学校に行っても勉強しない子になりました。人って簡単に死ぬんだなと思うと、宿題なんかやっている場合じゃない、好きなことをやっておこうという思考になったんですよ。

堂上:それで杉山さんは、偏愛にどっぷりつかる人生になっていったわけですね。好きなことに夢中な子どもをそのままにさせておいたご両親も素晴らしいですよね。

杉山:僕は「勉強しなさい」と言ってほしかったと、今は思っているんですけどね。だったらもう少し勉強ができたはずなので。

堂上:いやいや。私も今、親になって思うのは「勉強しなさい」を我慢するのが、どれほど難しいことかわかるんですよ。そして、この言葉がどれほど子どものウェルビーイングにとってマイナスになるかがわかるので、勝手ながら杉山さんは理想的な環境で育ったように思います。

ちょっと個人的な話をさせていただきますと、僕の子どもが先日、自分から望んで中学受験をしました。入学した中学はテストが一切ない学校なんです。それで入学以来、めっちゃ楽しそうにしているんですね。でも親からすると、勉強はいいの? と気になっちゃうものなんです。

ただその中学の入学直前に、保護者が学校に集まる日がありまして、その時に校長先生から「お願いがひとつだけあります」と言われたんです。何かと思ったら「待ってあげてください」ということでした。

つまり子どもに「あれやりなさい」「これやりなさい」と言わない。ひたすら待つ。そうしたら子どもが自ら好きなことを見つけて勝手に動き出しますからと言われました。

集まっていた親御さんはみんなざわつきましたよ。「待っているだけで、いつまでも動かなかったどうすればいいの?」と不安なんですよね。そういうことがあり、僕は今はひたすら耐えてる時なんです。だからご両親が立派だったと感心してしまうんですよね。

杉山:まあ、うちの親は本当に僕が死んだと思ったので、自然にそうなれたんだと思うんですけどね。その代わり、門限とかそういうのはわりと厳しかったです。

小学生の間はボーイスカウトとかリトルリーグもやっていたのですが、僕は野球をするのが得意でも上手いわけでもないんです。それなのにとても厳しい野球チームに入団してしまい、何度もやめたいと親に頼んだのですが、小学校を卒業するまではやりなさいと、やめさせてくれませんでした。

堂上:ということは、好きなことはとことんやらせてくれるものの、その他のところでは厳しさも身につけられたのですね。でもそれによって、起業して事業をやっていくときのグリッド力とか、折れない心を養えたのかもしれないと思いました。

偏愛はウェルビーイングに通ず

堂上:そうして、ご両親の寛容さもあり、杉山さんの偏愛は拍車をかけていったんですね。

杉山:中学では朝から晩までテニス漬けでした。

堂上:あれ、漫画は?

杉山:全然。なぜかひとつのことにしか没頭できなくて、何かひとつを選んだら、それ以外は頭からなくなります。高校でもテニスをしようと思っていたところ、たまたまバイクの免許が取れるからと免許をとったらオートバイにハマってしまい、バイトをしてバイクを買いました。高校時代はいろんな場所にツーリングに出かけていましたよ。

堂上:好奇心が旺盛なんですね。

杉山:ただバイクにばかり乗っていたら、高校を卒業させてもらえなかったんです。

堂上:留年ではなく、高校中退になってしまった?

杉山:はい。それからは引きこもり生活です。1年くらいずっと映画を観てました。さすがにこれではいけないと思って高校卒業の資格をとり、それから美大に行きまして、今度はインターネットにハマりました。大学時代はその頃、話題になっていたネットカフェでアルバイトをしていました。店が暇でしたから、ひたすらMacintoshを使ってインターネットとAdobeで遊んでいたんですよ。これも偏愛することに熱中になれたよい時間でした。

堂上:先日『Wellulu』でお話させていただいた孫泰蔵さんは『プレイフルネス』っていうことを言われているんです。好きなことに没頭して、それこそヨダレを垂らしていても気づかない状態がクリエイティビティだし、ウェルビーイングなんだとご本人はおっしゃっているんですけど、杉山さんもきっとひとつのことに熱中する力が人並みを超えているんですよね。

ではいよいよそんな偏愛歴の中でも大きな柱となるニュージーランドのお話を伺っていきたいと思います。

「日本を芸術文化大国にしなさい」との天命を告げる声

堂上:ニュージーランドにハマったきっかけと、その後、ニュージーランドと東京の二拠点生活を贈られるようになった経緯を、noteに綴られていますよね。直接のきっかけは何だったんですか?

杉山:僕がデザイナーをやっていた頃に、元レコード会社のプロデューサーとして長年活躍していた四角大輔さんという人物から、突然連絡をもらったんです。彼は後に「OSIRO」の共同創業者になる人物です。

その大輔さんが日本からニュージーランドに移住するにあたって、クリエイティブパートナーを探しているので、デザインコンペに参加してほしいということだったんです。

それでコンペに参加したところ、僕が選ばれまして、作家・四角大輔さんとの関係が始まったんですが、それから彼と会うたびにニュージーランドの魅力について聞かされるわけです。当時の僕はまったく興味がなかったのですが、大輔さんは1時間のミーティングがあると58分、ニュージーランドの話をするわけです(笑)。

熱量高く話す姿に、影響を受けてしまいまして、そんなにいいところなら行ってみようかなと。それで行ってみると、最初の2週間くらいで、彼は湖、トレッキングや釣りなど、ニュージーランドの大自然を満喫できる最高の体験をさせてくれました。

そうやって過ごすうちに、たとえばトレッキングで6時間も自然の中に身を置いていると、いろんなノイズが消え去って、脳の中のクリエイティビティが覚醒してくる感覚になることがわかったんです。

それまでは、アートやクリエイティブをするならイタリアやスペインなどで彫刻や絵画、建築に触れたほうがよいと思っていました。芸術のないところに身を置いたら枯渇すると思い込んでいたんです。でも正反対でした。大輔さんにニュージーランドがクリエイティブであることを身をもって教えてもらえました。それからどっぷりハマったんですね。

堂上:僕は高校生の時にニュージーランドに交換留学に行ったことがありまして。首都のウエリントンでホームステイをしながら1年学校に通ったことがあるんです。

じつはこの留学は、北島のオークランド空港についた初日から衝撃的でした。空港に最南端の都市ウエリントンからホストファミリーが車とバイクで迎えに来てくれていたんです。

空港まで600〜700kmの距離を車で迎えてきてくれるなんてと不思議に思っていたら、なんとそれから1カ月かけて、南下しながらのキャンプ生活が始まったんです。これは衝撃の体験でした。ホストファミリーは、いまだに笑い話で「ケンは、私たちの家がテントだと思ったに違いない。」と言い続けています。

杉山:ニュージーランド的洗礼ですね。

堂上:現地の学校では、選択授業として4つのクラスを自分で選べるのですが、僕は全部アート系のクラスを選びました。アートクラスの最初の授業は今でも覚えています。

先生が、生徒全員にプラムを配ったんです。ああ、これをデッサンしろということだなと意気込んでいたら「食べなさい」と言われました。え? と思って食べると、「その味を描きなさい」と言われたんですね。これも衝撃でした。日本でこんな授業を受けることはなかなかありませんよね。これは面白い! と思ったのを今も覚えています。

この時に学んだことが今につながっていると思っていまして、杉山さんがいうニュージーランドの自然がパワーやアイデアを授けてくれる感覚は個人的にもよくわかります。

杉山:その授業僕も受けたい!(笑)ニュージーランドは起業のしやすい国でいうと世界で1位なんですよ。クリエイティブ大国です。おまけに人も優しいし、穏やかで、本当にいいところですよね。結局、僕は日本とニュージーランドを半分ずつ往復する二拠点で生活をするようになり、本当にニュージーランドが好きになったことで、妻とも話して移住しようと決めました。

杉山:そしていつものようにニュージーランドへ渡航しようとした日。今でも忘れない2014年11月11日、成田空港でチェックインをしようとしたら、ちょっとした手違いで飛行機に乗れないというハプニングが起きたんです。

それまでに何度も飛行機で行き来していたのに、その日に限って乗れなかったんですよ。その時に、「お前は日本を芸術文化大国にしなさい」という声がどこからか聞こえてきたんです。

堂上:それがさっき言っていた「天命」だったんですね。

杉山:はい。それが聞こえた時断れなかったんです。もはや抗うことのできない宿命なんだと頭と体が納得したんですよ。というのも、自分がこれまで辿ってきた偏愛のプロセスがすべてそこにつながっていると感じたからです。

自分としては、ニュージーランドでセミリタイアするくらいの感覚でいたのですが、この体験で運命はそうさせてくれないんだと悟りました。これからの日本の未来のために、それも経済成長のためではなく、芸術的・文化的な発展のために残りの命を使おうと決めたんです。

堂上:不思議な体験ですね。それからもう一度、偏愛の経験を生かしつつ、アーティストやクリエイターを支援する事業を始められ、それが「OSIRO」に続いていったということですね。

天才的な才能で「時を告げる人」になるか。それとも「時計を作る人」になるか

堂上:ところで杉山さんは、30歳で画家の道を諦めたとおっしゃっていましたが、当時デザイナーとしての評価は高く、仕事も順調だったわけですよね。なぜ起業に方向転換されたのですか?

杉山:32歳まではフリーのデザイナーで生計を立てていたのですが、フリーの仕事ではあまり大きなこともできないじゃないですか。結局、時間を切り売りしてお金を得ることで、自分が生きた証を残すような仕事はできませんでした。

じつは20代の前半に世界一周の旅をした時、ヨーロッパで何百年も前の彫刻や建築を見て、自分が死んでも残るような作品を自分も残したいと思ったんです。でもそれはフリーデザイナーでは僕の場合は難しいなと思いました。

ちょうどその頃、『ビジョナリーカンパニー』という本を読んだんです。その中に面白いことが書いてありました。

毎日、太陽や月や星を見て、時間を正確に告げる人間になったとしたら、その才能によって尊敬を集めるだろう。しかし、その人が時を告げる代わりに、自分がこの世を去った後も時を告げる時計を作ったとしたらもっと驚かれるだろう。

という一節です。

自分は時計を作る人になりたいと思ったんですよ。フルリモートで8年間孤独だったというのもあり、フリーランスの仕事に見切りをつけて、32歳で初の起業に踏み切ったんです。

仕事をウェルビーイングに変えるプロダクトを

堂上:杉山さんのお話には、共感しかないです。僕がこれからやっていきたいことも同じで、ビジネスパーソンがもっともっと楽しく働ける環境を作りたいと思っているんです。

杉山:今の企業や社会ではそうなっていないから……ということですね。

堂上:『Wellulu』の記事中でも紹介してきたことですが、10年前に新規事業開発のため、日本中の生活者10万人を対象に「困りごと調査」をしました。フリーアンサーで「あなたは何に困っていますか?」という質問をさせてもらい、回答を解析したところ、第1位は『人間関係』だったんです。

その結果を見て、人間関係で悩んでいる人たちはこんなにいるのかと思ったんですけど、とはいえ人間関係にもいろいろあります。家族、夫婦、親子、地域……。その中でダントツ1位だったのが、職場での人間関係でした。

この『Wellulu』を通じて、働いている人がウェルビーイングな状態になってほしいと思っているので、人間関係をより良くするオフィス環境や働き方などを提案していきたいと考えています。そこで杉山さんにお尋ねしたいのは、「OSIRO」をこれからどう進化させていきたいのかということです。

杉山:やはり人と人がもっと仲良くなれるようにシステムを進化させていきたいと思っています。それを一言でいえば「コミュニケーションの拡張」です。テックをさらに磨いて、人間の能力を補完していくことで、企業で社内コミュニティとして使っていただければ人間関係を良好にすることに貢献できると思います。また企業の社内利用に限らず、自分の好き、アイデンティティが尊重される世界では、人々がより豊かな人生を送れるようになる。そんなプロダクトを開発し世界中の方々に使っていただきたいです。

堂上:最後になりましたが、杉山さんが今、偏愛しているものについて教えてください。

杉山:さきほどの調査結果とは真逆の答えで恐縮ですが、今は仕事より楽しいことがあるなら教えてくださいって感じなんです。

堂上:じつは僕もまったく一緒なんです。先日友だちとキャンプに行って、たき火を囲みながら話しているとき「今、何が楽しい?」と聞かれて、場もわきまえず「仕事」って言っちゃったんですよ(笑)。一斉に「つまんないヤツだ」ってブーイングを受けました。

杉山:やはり仕事が楽しいということは、最高にウェルビーイングな状態ですよね。もともと何をやっても楽しい性格なんです。

「OSIRO」を設立してからの5年間は、土日も働いていました。当時は株式会社コルクのオフィスに間借りさせてもらっていたんですけど、朝6時すぎに出社するとサディ(コルク代表・佐渡島庸平氏)しかいなくて、そこから2時間くらい“剛速球な無理難題”が次々に飛んでくるんですよ。

それが終わると、8時からはニュージーランドの大輔さんとリモート会議。そこで4時間ほど、ここが使いづらい、あそこがわかりにくいと愛のある助言をしてくれました。この二人からの剛速球を受け続けたことで、僕は表現者としての基礎力と、「OSIRO」というプロダクトを改善する基盤を築くことができました。その当時から、僕はスターをゲットしたマリオのように、パワフルに働いていましたね。

堂上:お二人から圧倒的にレベルの高い要求を突きつけられて、それがプレッシャーだけでなく、刺激になっていたのですね。どんどん解像度があがっていきパワフルになれたのも、実現したいことに向けて自分が確実に、飛躍的にレベルアップできていることに喜びがあったのだと感じます。

しかしどんなに好きなことであっても、何年もこの状態を続けるとふつうの人は折れてしまいそうですが……。

杉山:そこは大輔さん、サディ、二人の名プロデューサーのすごさだと思っていて、僕が折れないギリギリのところで加減してくれていたんだと思います。剛速球も決して僕が獲れない球は投げなかったんでしょうね。一流のプロデューサーって、相手が折れないように剛速球を投げられるのかもしれません。

堂上:杉山さんはお二人に鍛えられながら、グリッド力も身に付けていかれたのだと思います。ではいよいよ最後に、今後に向けての意気込みを聞かせてください。

杉山:今日、堂上さんのお話を伺って、ビジネスパーソンも人間関係で困っている人が多いことを知りました。「OSIRO」は人と人をつなぐ仕組みを進化させているわけですから、いろんな場所に応用できると思っているんです。

堂上:たしかに職場もひとつのコミュニティと考えれば、職場に良い人間関係を築く基盤として有効かもしれませんね。「OSIRO」が職場のウェルビーイングを実現するツールになる可能性もあると。

杉山:おっしゃる通りです。たとえば今は、M&A(企業合併)が増えています。A社とB社が一緒になった時に、当然異なる企業文化がひとつになるわけです。業務で良好な人間関係を築くには時間を要するでしょう。業務ではなく、趣味や好きなこと、それこそ偏愛するテーマである非業務でのコミュニケーションで異なる企業文化である人と人をつなぐこと、OSIROは人と人を仲良くすることが可能です。その関係構築から業務での一体感につながっていく効果が生まれると思いますし、オシロ社では実際に社内コミュニティとして「OSIRO」を使っていますが、人間関係はすこぶる良好です。

堂上:職場の人間関係が良好になれば、もっと楽しく仕事ができるのは間違いないことです。そして、それこそ私たちが望む世界です。

杉山:仕事が楽しいということは、幸せな人生のひとつのピースだと思うんですよね。

堂上:まったく同感です。本日は素敵なお話を聞かせていただきありがとうございました!

堂上編集後記:

杉山さんとの出会いは1年前。僕がマーケティングとクリエイティブの産業を、アップデートするためにイノベーションの先のビジネスを探求しているときだった。イノベーションとクリエイティビティを追求していたら、ウェルビーイングにたどりついて、その先のコミュニティに行きついたのである。

僕は、コミュニティの運営をやっているスタートアップの代表とお話をし続けた。Welluluというメディア事業をスタートしたのも、ウェルビーイングな共創コミュニティをつくるためだ。

そこで、僕がやりたいと思っていることを実践している人、それが杉山さんだったのだ。OSIROの杉山さんは、アーティストであり、クリエイターであり、コミュニティプロデューサーであり、僕の理想とした生き方をしている人である。

杉山さんとの対談は、とても楽しく、あっという間に時間が過ぎていった。そして、もっと続きをお話したいと心から思えた。僕が杉山さんとお話して、もうひとつ気づいたことがある。それは、とても「気遣いの人」である。僕らWelluluのメンバーに対しても、気に留めていただき、相手への気配り、思いやりを持った方である。杉山さんとの出会いは、僕らの可能性をもっともっと引き出してくださるような、そして家族の一員になりたいと感じさせてくれるものになった。

杉山さん、どうもありがとうございました。「御城 研」という名刺をつくっていただけるように日々、精進します。

[前篇はこちら]

【杉山博一氏】コミュニティ作りの本質は「人と人がより仲良くなれること」。テクノロジーの開発で加速させるコミュニケーションの拡張〈前篇〉

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