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電気を選ぶことは、未来を選ぶこと。わが家の発電所が地域を救う防災拠点になる日【一般社団法人太陽光発電協会】

「最近、電気代が高くなった気がする」「もし今、停電したら冷蔵庫の中身やスマートフォンの充電はどうなるの?」。 そんな日々の暮らしの不安から、太陽光発電に再び注目が集まっている。しかし、いざ検討しようとすると初期費用が高そう、メンテナンスが大変そう、将来の廃棄問題などの多くの疑問や不安がつきまとう。

今回は、太陽光発電産業の健全な発展と普及を目指す一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)事務局長の増川武昭さんと住宅事業推進部長の中西英雄さんに取材した。売電収入を得る時代から、つくって使い、地域を守る時代へ。生活者が知っておくべき運用のリアルと、これからのエネルギーとの向き合い方を伺った。

この記事の監修者

増川 武昭さん

事務局長

1985年昭和シェル石油入社。1991年~95年シェルの操業会社(オランダ)に出向。

2002年から分散電源事業課長、並びに電力販売課長として電力ビジネスに携わる。

2013年にソーラーフロンティアに出向。2017年6月にJPEA事務局長。その後出光興産を経て、2023 年1 月から事務局長に再就任。

https://www.jpea.gr.jp/

中西 英雄さん

住宅事業推進部長

1999年に京セラソーラーコーポレーション入社し、住宅用太陽光発電の販売に従事。2019年に太陽光発電協会出向し、住宅事業推進部長に就任。

https://www.jpea.gr.jp/

目次

なぜ今、暮らしに太陽光が必要なのか?投資から自給への変化

── 太陽光発電というと、ひと昔前までは投資のイメージが強かったように思います。屋根にパネルを載せれば、売電収入でプラスになる話をよく耳にしましたが、なぜ当時はそのような見られ方をしていたのでしょうか?

増川さん2012年に始まったFIT(フィット)のおかげで、作った電気をとても高く買い取ってもらえていたからですね。

当時はまだ太陽光発電の技術が今ほど一般的ではなく、導入費用も高額でした。普通に電気を作って売っても、費用回収に何十年もかかってしまう。そこで、国が高い価格での買い取りを約束することで、導入のハードルを下げて普及を後押ししていたんです。

また、FIT制度が始まった当初は、1キロワットアワーあたり約30円〜40円の価格で、10年間(住宅用の場合)買い取ることが保証されていました。当時の電気代よりも売電価格のほうが高かったので、家で電気を使わずに売るほうが、経済的なメリットが大きかったんです。

FIT(Feed-in Tariff:固定価格買取制度)
再生可能エネルギーで作った電気を、国が決めた一定の価格で、電力会社が買い取ることを義務付けた制度。

── なるほど。だから太陽光=収入になるイメージが定着したんですね。今はその状況はどう変わったんですか?

中西さん現在は買取価格が下がったため、自宅で作った電気を自分で使うのが一般的で、この大きな転換点となったのは2017年ごろです。

このころからFITによる買取価格が段階的に下がり始め、一方で私たちが電力会社に支払う電気代は燃料費調整額の上昇などで高騰していきました。

── つまり、制度や経済状況の変化にともなって、売って稼ぐ時代から自分で発電して使う時代にシフトしたわけですね。

中西さんその通りです。これには太陽光発電システムの価格自体が下がったことも大きく影響しています。以前よりも導入しやすくなったことで、より純粋に生活費用を下げる手段として選ばれるようになりました。

増川さん世界的な視点で見ると、自家消費の流れはさらに顕著です。実は、世界の太陽光発電の導入スピードはものすごいことになっており、2023年の1年間だけで、世界で導入された太陽光発電の量は約602ギガワットにもなります。

── 602ギガワット……桁が大きすぎてピンときません。

増川さんそうですよね。1ギガワットを原子力発電所1基分と考えると約600基分です。日本の年間電力消費量の6割以上に匹敵するほどの太陽光発電が、たった1年で増えているんです。

それくらい、世界中で太陽光発電は当たり前のエネルギーになっています。

── たった1年で日本の電力消費量の6割分も!それは驚きです。日本国内での普及状況はどうなんでしょうか?

増川さん日本でも着実に増えていて、今では全発電電力量の約10%を太陽光が担うまでになりました。

FIT制度が始まる前はわずか0.1%でしたから、100倍近くに増えたことになります。これは、現在の原子力発電の割合(約8%※稼働状況による)よりも多い数字なんです。

みなさんが普段意識していないところでも、太陽光は役立っています。真夏の猛暑日、エアコンを使って電力需要がピークに達する昼間の時間帯。夏場で一番電気が足りなくなる時間を、太陽光発電が支えているんです。

── 知らないうちに私たちの生活を支えてくれていたんですね。

増川さんそうなんです。さらに言えば、太陽光がたくさん発電する昼間の時間帯は、電気が余るため、実は電力の市場価格(仕入れ値)がものすごく安くなっているんです。

── 仕入れ値が安い……?私たちの電気代は変わらない気がしますが。

増川さん今はまだ、多くの家庭がいつ使っても電気代が一定料金のプランを利用しているからですねでも、太陽光先進国のオーストラリアでは、昼間の余った電気を使ってもらうために昼間の電気代は0円というプランまで登場しているんですよ。

── 0円ですか!?それなら洗濯も掃除も全部昼間にやりたくなります。

増川さん日本でも最近、市場連動型といって、市場価格に合わせて電気代が変わるプランや、昼間の料金を安く設定する電力会社が出てきています。

電気は夜に使うものという常識を変えて、太陽光が発電している昼間にシフトして使い、家計の電気代を下げられる。これからは、そんな賢い使い方が、家計を守るためのスタンダードになっていくと考えられます。

初期費用0円も選べる時代。購入・リース・PPAの賢い選び方

── 太陽光発電の仕組みや背景はよくわかりました。でも、導入にあたってネックになるのは、やはりお金です。実際、初期費用はどれくらいかかるものですか?

中西さん一般的な住宅用だと、パネルの容量は4〜5キロワットくらいが平均的です。

4キロワットのパネルは、一般的な4人家族が晴れた日の昼間に使う電気をまかなえて、さらに余った分を売電できるくらいの量。屋根の大きさにもよりますが、4キロワットの住宅用パネルは標準的な戸建て住宅でもっとも多く選ばれているサイズなんです。

あくまで目安ですが、現在の相場として工事費込みで1キロワットあたり約25万円とすると、4キロワットのシステムで約100万円といったところですね。

── 初期費用の100万円とは将来的に回収できても、一度に出ていく金額としてはやはり大きいです。

中西さんそうですね。ローンを組んで太陽光発電を導入する人も多いですが、ハードルが高いと感じる人もいらっしゃいます。

そこで最近増えているのが、初期費用100万円を用意しなくても導入できる初期費用0円のサービスです。大きく分けてPPA(電力販売契約)とリースの2つがあります。

PPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)
事業者が初期費用0円で自宅の屋根に太陽光パネルを設置・所有し、そこで発電された電気を生活者が買う仕組みのこと。屋根を貸して、電気を買う契約ともいえる。契約期間(10年〜15年程度)が終了すると、設備が生活者に無償譲渡されるプランが一般的。

── どうして0円で太陽光発電を始められるのでしょうか?それぞれの仕組みを教えてください。

中西さんまずPPAは事業者が生活者の家の屋根を借りて、事業者の負担でパネルを設置します。その代わり、屋根で発電された電気を生活者は使用料として事業者から買う契約を結びます。屋根は貸すけど、そこでできた電気は買うモデルですね。

一方リースは、毎月決まったリース料金を支払って太陽光発電の設備を借りる仕組みです。こちらは発電した電気は自分のものになりますが、毎月の固定費が発生します。

── では太陽光設備の自己所有(購入)とPPA・リース、経済面ではどちらにメリットがあるのでしょうか?

中西さんトータルの支出を抑えたいのであれば、最初にお金を払って設置する自己所有の人が有利になるケースが多いです。

自己所有なら、発電した電気は使い放題ですし、余った電気を売る権利も自分のものです。これに対し、PPA・リースは初期費用がかからない分、毎月のサービス利用料や電気の購入費が発生します。

PPA・リースは事業者側の管理費用や利益も含まれるため、長い目で見ると支払総額は自己所有より高くなる傾向があります。

── 安さをとるなら自己所有、手軽さをとるなら0円ソーラー、という感じでしょうか

中西さんおっしゃる通りです。まとまった資金がない、管理やメンテナンスを任せたいという人には、PPAやリースはよい選択肢です。

とくにPPA・リースの場合、設備の所有者は事業者なので、故障したときの修理やメンテナンスも事業者がおこなってくれるケースが多いです(※契約によります)。

また、10年〜15年の契約期間が終われば、設備が無償で譲渡され自分のものとなる契約も多いです。そこからは自分の持ち物として使えるわけですね。

── 選択肢が増えた分、迷ってしまいそうです。太陽光発電の会社選びで失敗しないためのポイントはありますか?

中西さん大事なのは、1社だけで即決せず、できるだけ複数の会社を比較検討することです。

協会としても注意喚起していますが、メリットばかりを強調するのではなく、リスクや費用の内訳、メンテナンスの条件などをしっかり説明してくれる業者を選ぶことが大切です。

とくにPPAやリースは長期契約になりますから、途中で解約する場合の条件なども事前に確認しておくと安心ですね。

設置したらほったらかしはNG。維持管理と終わりの迎え方

── 設置したあとのことも教えてください。一度屋根に乗せてしまえば、あとは放っておいても勝手に発電してくれるイメージがあります。とくに何もしなくてもよいのでしょうか?

中西さんいえ、それは大きな誤解です。メンテナンスフリーなんてことはありません。

FIT制度の認定を受ける際、設置者は責任を持った維持管理が義務付けられています。もし設備に不具合があって火花が出たり、部品が落下したりして事故が起きたら、所有者(自己所有の場合はご自身)の責任になります。

増川さん法律上も設備の安全を保つ責任は所有者にあります。火事になったり人にケガをさせたりしてから「知らなかった」では済まされないんです。

── 安全のためには当然ですね。具体的にはどんなメンテナンスをすればよいのですか?

中西さんまず、ご自身で屋根に登って点検するのは危険なのでやめてください。信頼できる専門業者に依頼して、定期的な点検を受けてほしいですね。

JPEAのガイドラインでは、4年に1回程度、1回あたり数万円定期点検を推奨しています。費用が高いと思われるかもしれませんが、点検費用を惜しんで事故が起きては元も子もありません。

JPEAガイドライン(住宅用太陽光発電システム保守点検ガイドライン)
太陽光発電協会が定めた、安全に使い続けるための点検基準のこと。専門知識を持った技術者がチェックすべき項目(パネルの割れ、架台のゆるみ、電気配線の異常など)がまとめられている。

── 維持費として年間どれくらい積み立てておけば安心ですか?

中西さん4年に1回の点検費用に加えて、パワーコンディショナーも15〜20年くらいで交換が必要です。これらを年換算でならすと、だいたい年間1万数千円〜2万円を年間費用として見ておきましょう。

この費用をあらかじめ計算に入れたうえで、導入計画を立てることが大切です。

パワーコンディショナー(パワコン)
太陽光パネルで作られた電気は直流だが、家庭のコンセントで使える電気は交流。
この直流を交流に変換する、いわば翻訳機のような役割を果たす重要な機械。パネルよりも先に寿命が来るため、交換が必要。

── パネルが汚れると発電効率が落ちそうですが、掃除はしたほうがいいのでしょうか?

中西さん確かに汚れると効率は多少落ちますが、日本の気候であればある程度は雨が洗い流してくれます。よほどの汚れでない限り、危険を冒してまで屋根に上がって掃除する必要はないと考えています。

それよりも、電気的な接続部分の点検をプロによる専門的なチェックのほうが重要ですね。

── もう1つ気になるのが、20年、30年使ったあとの処分です。将来、廃棄費用が高額になったり、廃棄問題になったりしませんか?

中西さんそこもよく聞かれる点ですね。

まず、パネル単体を取り外して捨てるケースはあまり多くありません。基本的には、家の建て替えや解体のタイミングで、建物と一緒に廃棄されることが一般的です。

ただ、将来的に廃棄費用がかかるのは事実です。約20〜30万円が廃棄費用の目安ですが、これは屋根の形状や足場の有無など現場の状況によって大きく変わります。

── 家の解体費用の一部として考えておくのがよさそうですね。

中西さんそうですね。FIT制度の適用期間が終わったあとも、パネル自体は発電し続けますから、使い続けるのか、それとも廃棄するのか。

いずれにしても、導入する段階から終わりのことも頭の片隅に入れて、資金的な準備をしておくのが責任あるオーナーの姿だと思います。最近ではリサイクルの法整備も進んでいるので、今後はより適正にパネルが処理される環境が整っていくはずです。

わが家の電気が地域を救う。災害に強いまちづくりへの貢献

── ここまでは自分の家計や責任の話でしたが、最後に地域との関わりを伺いたいと思います。自分の家の屋根で電気を作ることは、地域のためにもなるんですか?

中西さんご自宅での太陽光発電で作った電力は、地域に貢献できますよ。家で使い切れなかった余剰電力は、電線を通じて近隣の家や地域で使われます。

電気が余っているからといって、電力会社がどこかに貯めているわけではありません。みなさんの家で作った電気が、そのままお隣さんの家で使われているかもしれない。つまり、みなさんの家が小さな発電所になって、地域にクリーンな電気を配っているようなものです。

── そう考えると、少し誇らしい気分になりますね。

中西さんとくに災害時には自家発電の真価が発揮されます。

停電していても、太陽光発電の自立運転機能を使えば、昼間なら電気が使えます。たとえば、停電したときにご近所の人に「スマートフォンの充電どうぞ」と電気を分けて、とても感謝された話もよく聞きます。

災害大国である日本で自宅に電源があるのは、自分たち家族だけでなく、地域の防災力を高めることにもつながるんです。

── 頼もしいですね。ただ一方で、太陽光パネルによるご近所トラブルも心配です。反射光が眩しいとの苦情もあると聞きますが、気をつけるべきマナーはありますか?

中西さんおっしゃる通り、とくに住宅密集地では配慮が必要です。

過去には、パネルの反射光が隣の家の窓に差し込んでしまい、トラブルになったケースがあります。とくに北側の屋根に設置すると、太陽の高度が低い冬場に北隣の家に反射光が当たりやすくなるため、注意が必要です。

また、雪国では太陽光パネルに積もった雪が滑り落ち、隣の家のカーポートを壊してしまったり、道路を塞いでしまったりすることもあります。

── そうしたトラブルを防ぐにはどうすればよいですか?

中西さん設置前のシミュレーションがすべてです。北面への設置は避ける、雪止めの金具を屋根に設置するなど、事前に業者さんとしっかり相談して対策をとってください。

自分たちだけが得をするのではなく、地域と気持ちよく共生できるよう配慮する。それもまた、太陽光オーナーとしてのマナーです。

── ありがとうございます。最後に、これから太陽光発電のある暮らしを始める生活者へメッセージをお願いします。

中西さん私は、太陽光発電を入れることは将来の電気代の前払いだと思っています。そして同時に、それは地球環境への意思表示でもあります。

今、世界中で気候変動による被害が出ています。海面上昇で国が沈みかけていたり、氷河が溶けて住む場所を追われたり、そうした被害を受けているのは、便利な生活の恩恵をあまり受けていない人々がほとんどです。

── 確かに、私たちの生活が遠くの誰かを苦しめている側面があるかもしれません。

中西さんそうした不平等を少しでも減らすために、自分たちが使うエネルギーを、二酸化炭素を出さない自然由来のものに変えていく必要があると思います。

誰かを犠牲にして成り立つ便利さではなく、環境にも人にも優しいエネルギーを選ぶ。そして、災害時には家族と地域を守れる安心を手に入れる。

これこそが本当の意味でのウェルビーイングだと私は思います。

── エネルギーを選ぶことが自分たちの安心だけでなく、地球の向こう側の誰かや、未来の地域を守ることにもつながる。「電気代の前払い」という言葉に、投資以上の価値を感じました。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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