身体的負荷の高い仕事に就く人たちの多くが、慢性的な肩こりや腰痛などのフィジカルの問題を抱えているという。しかも、その多くが「この身体の痛みは職業病で付き合っていくしかない」と改善を諦めているらしい。平日も休日も、身体のどこかしらに痛みを抱えながら過ごす生活は、ウェルビーイングだとは言えない。
そこで、これまで数多くのトップアスリートの身体を支えてきたコンディショニングのプロにコンタクトを取ってみた。その会社が、コンディションのデータを見える化する「ONE TAP SPORTS」で知られる株式会社ユーフォリアだ。
ユーフォリアではワーカーのコンディショニング課題をどう解決しているのか? ウェルビーイングな状態で働くためのフィジカル面の課題は何か? 同社の代表取締役 Co-CEO・宮田 誠さんと産業アスレティックトレーナー・一原 克裕さんに話を伺った。
アメリカの国家資格をもつプロが、働く人の身体機能を改善
- まずはじめにユーフォリアの事業内容について教えてください。
宮田:ユーフォリアは『人とスポーツの出合いを幸福にする。』をミッションに掲げ、スポーツ領域におけるITソリューションやマーケティング支援事業を行なう会社です。なかでも代表的なサービス「ONE TAP SPORTS」では、スポーツ選手のコンディションに関するデータを一括で記録・管理が可能。プロアマ含め、71競技の1,700チーム以上で導入されています。
他にも、スポーツ選手のコンディションデータを活用した商品開発支援やマーケティング支援、身体的負荷の高い環境で働くワーカー向けのウェルネスプログラムのご提供なども行なっています。
- 本日は「働く人の身体とウェルビーイング」というテーマでお話をお聞きしたいです。「ウェルネスプログラム」とはどのようなサービスなのでしょうか?
一原:製造や物流・医療介護・建設などの身体への負担が大きい業界で働くワーカーに向けて、ユーフォリアがこれまで得てきたスポーツ選手のコンディショニングノウハウでサポートするプログラムです。ご支援先の企業が抱える課題は、「慢性的な身体の不調による生産性低下」や「高齢化による労働災害の発生」など。
これらの課題に対して、弊社の「ONE TAP SPORTS」でワーカーのコンディショニングをモニタリングしながら、プロフェッショナルな産業アスレティックトレーナーが2ヶ月間伴走。運動が習慣化していないワーカーでも無理なく続けられる予防・改善プログラムをセミナー形式や個別指導でお伝えし、腰痛や肩こり、ふらつきなどのトラブルを防ぎ、ウェルビーイングな身体をつくります。
- 「産業アスレティックトレーナー」とはどういったスキルをもつ人ですか?
一原:企業で働くワーカーのコンディショニングをサポートするプロフェッショナルのことです。
日本ではまだあまり馴染みがありませんが、アメリカではスポーツ界でアスリートの健康と安全管理、怪我の予防、コンディショニングをサポートしてきたアスレティックトレーナーが、企業においても身体的負荷の高い現場で働くワーカーをサポートしています。
アメリカではアスレティックトレーナーは国家資格で準医療従事者でもあります。日本では、何らかの医療系資格を持つ方がスポーツ現場でアスレティックトレーナーとして勤務されており、そういったトレーナー経験がある方々に、私たちのプログラムを普及推進する産業アスレティックトレーナーとしてお手伝いいただいています。
従業員同士でコンディションを共有し合う。これがスポーツ強豪チームに見られる会社のウイニングカルチャー
- 「ウェルネスプログラム」を導入する企業のワーカーは、どんな身体の悩みを抱えていることが多いですか?
一原:毎日重い荷物を持ち運びしたり、身体の同じ部位を使う繰り返しの動作が多く、肩こりや腰痛を抱えられていることが多いです。年齢的には40代から60代の人が中心で「毎日、身体に痛みがある」と感じているものの、仕事上避けられないものだと受け入れて諦めてしまっているケースがよく見られます。
- 身体がツラいのを我慢してみなさん働かれていると。それはウェルビーイングではないですね……。
宮田:おっしゃる通りで、フィジカルだけの問題ではなく、フィジカルの状態はメンタルにも強く影響しますから、メンタルバランスも崩してしまう恐れがあります。
あとはケガを招く転倒リスクも高くなる。転倒は、自分の頭で描いている身体イメージと実際の筋力や能力の認知にズレが生じることで起きやすくなります。加齢とともに衰えてきている筋力を正しく認知できず、事故につながってしまうのです。
- ではそうした現場に「ウェルネスプログラム」を導入すると、どのようにワーカーの身体は変化するのですか?
一原:まず、「ONE TAP SPORTS」で毎日の疲労度や睡眠の質や食事データなどを入力していただくことで、「自分がどんなことをすると調子が良くなるのか、悪くなるのか」をデータをもとに振り返っていただく習慣が生まれます。
この“振り返る”という習慣が、自分の身体の状態を把握するためにはとても大切。ワーカーはどうしても毎日のノルマに意識が奪われ、立ち止まって振り返る習慣を作りづらいのです。だから身体の不調を先延ばしにして、痛みを抱えながら仕事することが慢性化していました。
「ONE TAP SPORTS」で見える化されたデータをもとに、プロの産業アスレティックトレーナーのフィードバックを共有。1日5分でできるエクササイズを続けていくことで、2ヶ月間という短い期間ですが、改善へと向かう効果があらわれています。
現時点では、離脱率はゼロ。トレーナーとしても、日に日にワーカーの表情が明るくなっていくので自分ごとのように嬉しいです。
- 「ONE TAP SPORTS」で自分のコンディショニングが見える化されると、従業員同士の会話も弾みそうですね!
宮田:実はそこもウェルビーイングな職場づくりに貢献している点だと思います。「ONE TAP SPORTS」で日々のコンディショニングを記入することが習慣になったら、「じゃあ隣の同僚はどうなのかな」と聞いてみたくなりますよね。そうしてお互いのその日のコンディションや疲労回復に関する情報交換が行われることで、風通しのよい職場づくりにも繋がっているのかなと。
強いスポーツチームってコンディショニングに関する情報共有や会話がとても活発なんですよ。以前、とある箱根駅伝に出場した駅伝チームの合宿に参加したときも、先輩と後輩が自分の体調データや食事記録を見せあい情報共有していました。これは、会社にも通じるウイニングカルチャーだと思います。
- 自分のフィジカルのコンディションを管理するうえで大事なことはありますか?
宮田:最近では数多くのウェアラブルデバイスが販売され、身体の客観的データを収集しやすくなりましたよね。でも、客観的データだけでなく、“主観的データ”も同時に取っていくことが大切なんです。客観的なデータに対して、主観的な感覚、例えば痛みなどは自分にしか分かりません。
両方のデータをバランスよく取り続けると、主観的な感覚と客観的な事実にズレが生じることがあります。ここにケガのリスクが潜んでいたりするのです。主観的なフィジカルの状態を“言語化する習慣”をぜひ意識してみてください。
未来の子どもたちがウェルビーイングに働けるように。問われる経営者の意識変革
- 日本のあらゆるワーカーがフィジカルの悩みなくウェルビーイングに仕事ができる世界に進むには、企業側の理解が何より欠かせないかと思います。この点をどう考えていますか?
宮田:ものすごく核心に迫る質問ですね。まさに、一番難しい課題であり、弊社も解決に取り組んでいる内容です。
企業側に従業員のフィジカル面のウェルビーイングに目を向けてもらうためには、やはり経営者の理解が最も重要。経営者のウェルビーイングへの意識が『Nice to have(できたらいいこと)』から『Must have(しなければならないこと)』へと変わっていく必要があるでしょう。
来年は「物流の2024年問題」と言われているように、働き方改革の一環で、トラックドライバーの時間外労働に新しい規制が設けられます。発送から翌日には到着するというサービスを確立しビジネスのインフラを支えてきた物流業界で起こるこの動きの影響は大きいと思います。企業はより一層、従業員の生産性向上に注力していかなければなりません。
従業員のウェルビーイングは、企業が存続していくためにも、向き合っていかなければならない重要課題なのです。
- 未来の子どもたちが活躍する社会のためにも、ぜひ前進していってほしい課題ですね。
宮田:もうすでに、未来の社会を担う今の子どもたちのスポーツチームでは、コンディションのデータ活用が当たり前になりつつあります。小中高の部活動やクラブチームでも積極的に導入が進んでおり、データで自分のフィジカルの状態を把握することで、細かな意識が変わり、チームの新しい文化・伝統が生まれてきています。
一原:つまりは、この循環が大切。今「ONE TAP SPORTS」を導入しているBリーグや、Jリーグのアカデミー(ユースチーム)に所属している子であっても、全員がプロ選手になれるわけではありません。
じゃあ何になるのかというと、必ず社会人にはなるわけです。その時に、自分のコンディショニングに対する意識の高い子たちが育っていけば、ユーフォリアのサービスに触れなくても自ずとみんながウェルビーイングに働ける社会になるのではないかと思っています。
身体が変われば世界が変わる。フィジカルの問題を諦めないで
- 最後に、仕事で身体の疲れや痛みを抱えている人に何かメッセージをいただけますか?
宮田:ぜひ、自分のコンディションの不調を“諦めないでほしい”です。そして「皆さんはもっとポテンシャルがありますよ」と伝えたいですね。
身体の不調は、ちょっとしたエクササイズや睡眠の取り方を見直してみるだけでも世界が広がって調子が良くなることがあります。反対に「自分はどうせ駄目なんだ」と下を向いてしまうと、大事な一歩を踏み出せなくなってしまいます。
皆さん一人ひとりが社会を支える大事な存在。まるでアスリートのようにポテンシャルを開花させれば、皆さんの人生も、そして社会ももっとよくなるはずです。
自分の可能性を『解放』していきましょう! ユーフォリアは皆さんにそのきっかけを届け続けていきたいです。
本記事のリリース情報
宮田 誠さん
株式会社ユーフォリア 代表取締役 Co-CEO
一原 克裕さん
株式会社ユーフォリア(パートナー)産業アスレティックトレーナー