ジムで水分補給をする際におすすめの飲み物は、トレーニング中とトレーニング前後でも異なる。
今回は会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」最高技術責任者の中野ジェームズ修一さんに、「タイミング別のおすすめの飲み物」や「トレーニング中に避けた方がいい飲み物」について伺った。
さらに水分補給時のポイントについても紹介しているので、ぜひチェックしてみて。
中野ジェームズ修一さん
フィジカルトレーナー
運動時に水分補給が必要な理由
運動時に減少する水分を補うために、トレーニング中はこまめに水分を補給しよう。
筋トレや有酸素運動をして筋肉を動かすと、身体から熱を発生し体温が上昇する。人間の臓器が正常に機能する体温は決まっているため、上昇した体温を下げるために汗をかく。
汗の正体は水分と塩分。人間の身体が正常に機能する水分量は約70%と決まっており、汗によって水分が失われると「脱水症状」や「熱中症」「めまい」を引き起こす原因となる。
トレーニング前におすすめの飲み物
- 水
- スポーツドリンク
- オレンジジュース
基本的には水かスポーツドリンク(とくに暑い時期は水分だけでなく塩分が失われるので)、果糖でエネルギー補給できるオレンジジュースもおすすめ。
軟水と硬水はどっちでもOK。強いていれば、トレーニングでミネラルが消費されるので、ミネラルが多いものがよいが、自分が飲みやすい物を選ぼう。
また筋トレをしていると電解質が減少してくる。そのままずっと続けていると筋けいれんの原因にもなるので、水分だけでなく、電解質を補充するにはスポーツドリンクが最適。ただし、これはトップアスリートのように筋肉を追い込む話なので、一般の人はそこまで気にしなくても大丈夫。
💡ワンポイントアドバイス
コーヒーには脂肪燃焼効果があるとも言われますが、そこまで大きな効果があるわけではありません。普段から摂取していない人が摂取すると、少し効果があるくらいの認識で大丈夫です。
トレーニング中におすすめの飲み物
- 水
- スポーツドリンク
- 麦茶
スポーツドリンクや麦茶は、身体を動かしていると消費されるミネラルを補給できる。ただし、麦茶は腐敗しやすいので、保温性のある水筒に入れるなど温度管理に気をつけよう。
💡ワンポイントアドバイス
粉末のスポーツドリンクは、記載されている量で正確に希釈しましょう。糖質の濃度が2.5~8%程度がもっとも吸収率がよく、その濃度が変わってしまうとせっかくのスポーツドリンクも吸収率が低下してしまいます。
糖質の濃度が高いと「腹痛を起こしやすい」など事情がある人は希釈するとよいでしょう。
糖分が多く含まれる果物のジュースや炭酸飲料はなるべく避けよう
運動中に糖質が10%を超えるジュースを飲んで運動をすると、人によっては脇腹が痛くなるおそれも…。
どうしても飲みたい場合は運動前後にして、運動途中は控えるようにしよう。
カフェインの含まれるコーヒーやお茶(麦茶以外)は「利尿作用」があり、身体から水分が出てしまいやすくなるので運動中はあまりおすすめしない。
トレーニング後におすすめの飲み物
- 水
- 牛乳、豆乳
- プロテイン
トレーニングで失われた体内の水分を補うために、まずは水を飲もう。牛乳や豆乳、プロテインドリンクでタンパク質や糖質を補うのもおすすめ。
逆にトレーニング後すぐにアルコールを摂取するのは控えよう。運動後に水分量が減っている中で、アルコールはのど越しだけで水分補給にはならない。水分不足の状態で血流が良くなると血栓が生じる原因にも。
また、筋トレの効果を高めるためには、飲み物だけでなくトレーニング後24時間以内に高タンパクかつ、栄養バランスが整った食事をとろう。
筋トレ後30分以内は「ゴールデンタイム」と言われることもあるが、そこまで厳密に守らなくても大丈夫。
💡ワンポイントアドバイス
運動した日は、普段よりも多めにたんぱく質をとるようにしましょう。
ただし、個人差はあるものの1回の食事で30g以上のタンパク質は吸収できません。1食でたくさん摂るのではなく、1日3食バランスよく摂ることが大切です。
ジムで水分補給する際のポイント
水分はトレーニング前からこまめに摂り始め、トレーニングが終わったあとは栄養と水分をしっかり補給するようにしよう。
水分を摂るときのポイントは以下の通り。
- トレーニング前から少しずつ水分を摂る
- トレーニング中はこまめに水分を補給する
- トレーニング後も十分に水分補給する
- プロテインやBCAAは目的に合わせて
トレーニング前から少しずつ水分補給をしよう
【トレーニング前】
水分は体内で一気に吸収できないので、一度にたくさん飲むのではなく、少しずつ水分補給をしよう。
【トレーニング中】
トレーニング中はのどが渇いていなくてもこまめに水分補給をしよう。運動の質を高めてくれるだけでなく、脱水症状の予防にもつながる。
💡ワンポイントアドバイス
だいたい10分にひと口くらいのペースで水分を摂るのがおすすめです。
トレーニング中にトイレにいった際、尿の色がいつもより濃い場合は水分が不足している可能性もあります。暑い時期はとくに水分が失われやすいので注意しましょう。
【トレーニング後】
💡ワンポイントアドバイス
トレーニング後は失われた水分を補うためにも積極的に水を飲みましょう。ただし、いっきに飲むと吸収がうまくいかないので、間隔をあけて飲むことが大切です。
プロテインやBCAAは目的に合わせて
BCAAやプロテインはそれぞれの効果を把握して、目的に合わせて活用しよう。
運動前に飲むなら筋肉分解を抑えてくれるBCAAがおすすめ。運動のエネルギー源となる必須アミノ酸も摂取できる。運動後はプロテインでタンパク質や糖質を摂取しよう。
💡ワンポイントアドバイス
人によってはプロテインを飲むと代謝産物としてアンモニアが大量に発生し腎臓に負担がかかる場合があります。気になる方はアミノ酸を摂取しましょう。腎臓に負担がかかりにくいので、体質的にプロテインが飲めない人でも飲みやすいです。
基本的な考えとしては食事でしっかりと栄養素を摂るのが前提。あくまでもサプリやプロテインは補助という意識を忘れないでください。
「筋トレをしている人が積極的に摂取した方がいい栄養素」については以下の記事で解説しているので、食事管理を始めようと思っている人はチェックしてみて。
筋トレ効果を高める栄養素やメニュー!食事回数や時間、おすすめの調理方法も紹介
筋トレの効率を上げたり、健康的な身体を作るためにとても重要なのが食事。筋トレの場合はタンパク質を摂るというイメージがあるけど、バランスのよい食事方法まで考えてい.....
ジムで水分補給をする際の注意点
お腹を壊しやすい人は冷たい飲み物は避ける
トレーニングで体温が上がっている場合は、冷えた飲み物を飲むと効率よく体温を下げることができる。
ただし、冷たいものを飲むとお腹を壊しやすい人は、胃腸に負担がかかっている可能性があるので、常温の水を飲むようにしよう。
マシンの上では飲まない
ジムによっては、「水分補給をしていい場所」がルールとして定められている場合がある
(水分補給を含む、飲食は休憩スペースのみというところも)。
マシンにこぼしてしまうとほかの利用者や施設に迷惑がかかるので、トレーニングをしていないときはマシンから降りて飲むようにしよう。
ペットボトルを持ち込む場合は目印をつける
市販のペットボトルは、ほかの利用者と取り違えてしまう可能性がある。マシンに置き忘れてしまうこともあるので、ボトルカバーやボトルマーカー、ボトルキャップなど「自分のもの」とわかる目印をつけておくとよい。
水筒やスクイズボトルなどを使うのがおすすめ。メモリのついたものであれば、どれくらい飲んだかわかりやすい。
ジムのマシンにあるドリンクホルダーは「ペットボトル」くらいの大きさに設定されていることが多い。あまり太すぎる容器やカバーをつけることで置けなくなることがあるので、その点だけ注意しよう。
アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士として、運動の大切さを広める活動を行っている。2014年からは青山学院大学駅伝部のトレーナーも務めており、東京神楽坂にある会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」で一般の方やアスリートを指導。「科学的根拠に基づき、必ず結果を出す」が合い言葉で熱意のある指導を常に心がけている。