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日々の「体幹ケア」でいつまでも若々しく動ける身体をつくろう【LPN】

口腔ケアやスキンケアは、多くの人が取り組んでいるが、長く動ける健康的な身体をつくるためには、日常的に「体幹ケア」をおこなうことが重要だそう。今回は、習慣的な体幹ケアを提案しているWebサイト「体感ケア」・ストレッチポール®︎をはじめ多様なエクササイズツールを手掛けている株式会社LPNの江川さんにその重要性や効果について詳しくお話を伺った。

江川さん

株式会社LPN 広報、マーケティング

イベント、書籍、雑誌、コンテンツマーケティング、SNSマーケティングなど様々なプロダクトを担当。
日々のコンディショニングと、週3回のトレーニングを習慣としています

石塚さん

日本コアコンディショニング協会

順天堂大学スポーツ健康科学部を卒業後、米国の大学院に進学。スポーツ医学を学び、コンディショニング研究をしながら、アスレティックトレーナー資格を取得。
元福岡大学スポーツ科学部教員、同大学にて多様なスポーツチームと選手のコンディショニングをサポートするアスレティックトレーナーを経て、一般財団法人日本コアコンディショニング協会(JCCA)副会長に就任。現在もトップチーム、トップ選手の指導に携わりながら、コアコンディショニングを提供する指導者育成に従事している。

本記事のリリース情報
ウェルビーイング発信メディア「Wellulu」

目次

体幹ケアとは?

── 「体幹ケア」という言葉は初めて聞いたのですが、どのようなものなのでしょうか?

江川さん:「体幹ケア」は、健康を支える新しい生活習慣の一つとして、2024年11月に提唱した概念です。身体の中心を支える筋肉、いわゆる“体幹”の筋肉がうまく働けるように、姿勢や動きを整えることで「ずっと歩き続けられる」「動き続けられる」身体を維持することが目的です。

健康維持のために、口腔ケアやスキンケアをおこなっている人は非常に多いかと思います。こういったケアと同様に、日常的におこなうべきケアとして「体幹ケア」を推奨しています。

── たしかに口腔ケアやスキンケアは、習慣となっている人が多いですよね。体幹には目を向けたことがなかったのですが、習慣的なケアが必要なのでしょうか?

江川さん:日本人の平均寿命と健康寿命の差は約10年あるとされています。この差の10年間は、多くの人が寝たきりや身体が不自由な状態で過ごしているというのが現状です。

もちろん医療技術は進歩し続けていますが、私たちの身体の状態も追いつかなければ、人生の質を高めることは難しいと考えています。

現代社会では座りっぱなしや同じ姿勢を続ける生活が一般的になっています。デスクワークやスマートフォンの使用が日常化し、さらに和式トイレや床での生活といった動作が減少したことで、身体を使う機会が極端に少なくなってしまいました。

こうした生活では、動きのバリエーションが失われるだけでなく、筋肉や骨、関節に必要な刺激が入らなくなり、身体本来の機能が衰えてしまうのです。

── 平均寿命と健康寿命の差が10年も…。できるだけ長く動ける身体でいるためには、動けるうちに対策をしておくことが大切なんですね。

江川さん:また、寝たきりまではならなくとも、年齢を重ねるにつれ“気づかないうちに生活の幅が狭まっていく”ということに直面する人も非常に多いんです。

たとえば「歩くことはできるけど、30分以上歩き続けるのはきつくなってきた」など、普段の生活では気づきにくい変化が少しずつ現れてきます。それが積み重なると、最終的には「登山が趣味だけど行けなくなった」「旅行をしたいけど移動が負担だから諦める」など、楽しみや活動の範囲が狭まってしまいます。

年齢を重ねるにつれて、体幹の筋力が衰えて姿勢が崩れると、身体の特定の部位に過度な負担がかかることがあります。それが原因で、肩こりや腰痛といった不調が出る状態が続くと、痛みが慢性化するだけでなく、骨の変形や可動域の減少といった取り返しのつかない問題に繋がることもあるんです。

「動き続けられる」身体を維持するためには、体幹のケアが欠かせません。

── 体幹をケアするためには、具体的にはどのようなことをおこなうのでしょうか?

江川さん:基本的には、体幹を支える筋肉を正しく動かすための簡単なエクササイズや、日常生活での姿勢の見直しなどを取り入れていきます。

体幹を鍛えると聞くと“腹筋を鍛える”というイメージを持つ人も多いのですが、それだけではなく、重要なのは「全体のバランスを整える」ことです。そのため、いわゆるきついトレーニングではなく、立っているときに骨盤の位置を意識する、座っているときに背筋を伸ばすなど、普段の生活の中で少し意識を変えるだけでも効果があるんです。

── もっと大変なトレーニングを想像していましたが、毎日特別に時間を取らずとも、日常生活の意識を変えるだけでも効果が期待できるんですね。

江川さん:はい、誰でも気軽に取り組める点も体幹ケアの魅力です。

多くの人が「口腔ケア」を習慣化されていると思いますが、歯磨きやフロスをいつどのように、どのくらいおこなうかといった細かい方法は人それぞれですよね。ただ、「歯を清潔に保つこと」という共通認識はみんなが持っています。

同じように、体幹ケアも「姿勢を整える」「身体の中心を支える筋肉を意識する」といった基本的な考え方を共有してもらえれば十分だと考えています。具体的にどんなエクササイズをするかや、どの程度の時間をかけるかは、それぞれの生活スタイルに合わせていただければいいと思います。

── ただ、これまで体幹を意識して過ごした機会が少ないので、歯磨きのように日常的に習慣化するには時間がかかりそうです…。

江川さん:おっしゃる通りで“習慣化”は一番の課題ですね。

歯のケアを例に挙げると、平成元年から80歳までに20本の歯を残そうという「8020(ハチ・マル・二イ・マル)運動」がはじまり、口腔ケアが世間に浸透していきました。昔は歯磨きの習慣すら当たり前ではありませんでしたが、今では歯磨きだけでなく、フロスを使用する人や、予防目的での歯科検診を日常的におこなう人も増えてきています。

体幹ケアも、最初は「わざわざやるもの」という感覚かもしれませんが、少しずつ日常に取り入れて「気づいたら当たり前」という状態を目指せればいいなと思っています。

ですので、できるだけわかりやすい言葉を選び、運動がより手軽に感じられるようなツールを使うなどの工夫をしながら、もっと多くの人に親しんでもらえる形で「体幹ケア」を広めていきたいです。

── 体幹ケアは、何歳くらいからはじめるのがいいのでしょうか?

江川さん:「この年齢から始めなければいけない」という明確なラインはありませんが、基本的には「できるだけ早く、今から始める」のが理想です。

年齢とともに少しずつ体幹の衰えが進むことを考えると、できるだけ早いうちに習慣化するほうが効果は大きいです。たとえば、20代や30代のうちから体幹を意識する習慣を取り入れれば、年齢を重ねたときに行動範囲が狭まることを防ぎ、むしろ新しいことに挑戦する余裕が生まれるかもしれません。

もちろん年齢を重ねてからでも、体幹ケアに取り組む効果は十分に期待できます。ただし、動けなくなってからでは遅い…ということも忘れてはいけません。

── 若いころから始めておくと、年齢を重ねたときの身体に差が出そうですね。年代によってケアの方法も工夫が必要でしょうか?

江川さん:そうですね。体幹ケアははじめるタイミングによって、課題や目的が異なってきます。

20代や30代では姿勢の維持や不調の予防が中心になりますが、50代や60代では既に感じている不調を軽減するため、また70代以上では転倒防止や日常生活を快適にするためのケアが重要です。

すでに身体に不調が出ている状態ですと「自分の身体はもうどうしようもない」と諦めてしまう人もいらっしゃいますが、少しずつでも体幹ケアに取り組むことで、確実に変化を実感できます。

── 不調があるからこそ、動けるうちにできるケアをおこなうことが大切なんですね。

江川さん:「一気に治す」ではなく「少しずつ改善する」と捉えることも重要です。

たとえば、肩が凝っている場合、肩そのものではなく、姿勢や体幹の弱さが原因で肩に余計な力が入っていることも多いんです。不調が出ている部位に原因を探しがちですが、全体的なバランスや習慣を見直すことで、根本的な原因を解決することにつながります。

大きく身体を動かせなくても、骨盤の位置や座り方など、体幹を意識するだけでも十分に効果があります。こうした小さな身体の変化を積み重ねることで、身体の動きや姿勢が徐々に改善されていきます。それによって「やれること」が増え、「やりたいこと」に挑戦できる余裕が生まれていきます。

── 動ける余裕が生まれると、より活動量や運動量も増え、自然と体幹を使う機会も増えていきそうですね。

江川さん:そうですね。とくに不調を感じている人やご年配の人ですと、ケアを続けることで「できなかったことができるようになる」という変化を実感していただけるのが理想です。

登山を再び楽しめるようになった、長時間の旅行が快適になったといったポジティブな結果が出ると、より積極的に取り組む動機にもなりますよね。体幹ケアは、健康寿命を延ばし、生活の幅を広げる手段として非常に重要なものだと考えています。

また、体幹ケアは特別な道具や場所がなくても始められるので、自分のペースで取り組むことができます。今できることを少しずつ増やし、それを維持すること。それが健康寿命を延ばし、日々をもっと楽しむための大きな一歩になると思います。

体幹ケアで期待できるメリット

── 体幹ケアをおこなうことで、どのようなメリットが期待できるのでしょうか?

江川さん:体幹ケアのメリットは非常に幅広いですが、大きなポイントとしては「動作の質が向上する」ということです。

よく高齢者の人が「よいしょ」と声をかけながら手を使って立ち上がっているのを見かけますよね。これは脚の筋力不足が原因と言われることが多いですが、それだけでは解決しません。体幹や背骨がしっかり動くようになることで、身体全体が連動してスムーズに立ち上がれるようになるんです。これが若々しい所作や自然な動きにつながります。

── 筋力だけでなく、動作の連動性というのが重要なんですね。

江川さん:そのとおりです。人間の動きは単独の筋肉だけでなく、全身が連動してはじめてスムーズに機能します。体幹ケアによって背骨や骨盤、体幹の筋肉が正しく動くようになると、立ち上がる動作や歩く動作が自然になり、若々しい印象を与えることができます。

また、日常生活の動作が楽になるだけでなく、ランニングやダンス、楽器演奏など、スポーツや趣味のパフォーマンスを向上させたい場合でも、体幹が整っていることが大きな助けになります。

身体が歪んだ状態で鍛えたり動いたりすると、効率が悪く、けがのリスクも高まります。体幹がしっかり整っていると、動きの効率が上がり、疲れにくくなるだけでなく、上達のスピードも速くなるんです。

── つまり、日常生活から趣味、スポーツまで、あらゆる活動の基盤を支えているのが体幹ということですね。

江川さん:はい。体幹ケアは、すべての動作の「基本」を支えるものです。立つ、歩くといった基本的な動作がしっかりできるようになることで、より難しい動作や複雑な動きにも挑戦しやすくなります。これにより、身体の不調の改善や予防にもつながる、やりたいことがよりスムーズに楽しめるようになるなど、日々の生活をより豊かにする手助けになると考えています。

体幹ケアは単なる予防やリハビリのためだけではなく、もっと前向きな視点で、「やりたいことを楽しむためのサポート」として捉えていただければ嬉しいです。

体幹ケアのやり方

── 体幹ケアは、人それぞれ生活にあったスタイルで取り組めばよいとのことでしたが、推奨されているやり方や根本的な知識についてもぜひ教えていただきたいです。

江川さん:体幹ケアは、緩める、締める、動かすの3段階を意識すると効率的です。

体幹ケアの基本は、身体が偏った状態や不自然な姿勢で固まってしまった状態を、一度リセットして「本来の形」に戻すことです。

たとえば、前かがみになる動作や座りっぱなしの生活が続くと、胸郭や骨盤の位置が崩れ、筋肉や関節のバランスが失われます。この状態では、どんなに筋肉を鍛えても効率が悪く、逆に不調を助長してしまうこともあります。そのため、まず身体を正しい位置に戻すことが第一のステップです。

身体を正しい位置に戻すだけでは不十分ですので、その状態でしっかり筋肉を使えるようにすることが次のステップです。たとえば、骨盤や胸郭を正しい位置に戻した後、それを支える筋肉を活性化させるためのエクササイズをおこないます。この段階を経ることで、身体が安定し、動作がスムーズになります。

最後は、さらに手足を動かすトレーニングをおこない、全身の連動性を高めていきます。このように、3段階を踏んで進めることが、効果的な体幹ケアのポイントです。

── 3つのステップを意識しておこなうと、効果的なんですね。

江川さん:また、体幹ケアは、一人でおこなっていると自分の「動きの癖」に気づきにくいことがあります。そのため、自分では気づきにくい動きの癖を補正してくれる、ツールを使った方法をおすすめしています。

たとえば、仰向けの姿勢で手を上げるエクササイズをしているとき、自分では「まっすぐ動かしている」と思っていても、実際には左右に傾いていることがあります。ツールを使うと、自分で傾きに気づくことができ、「まっすぐ」を意識するきっかけになります。

完璧でなくても、何も使わずにおこなうよりも適切な動きに近づけることができます。これが、トレーニングでツールを使用する大きな利点です。ツールを使うことで、正しいフォームを自然と身につけられ、体幹ケアの効果をより効率的に引き出すことができます。

── たとえばどのようなツールを使うのですか?

江川さん:弊社の体幹ケアツールで最も一般的なものが、ストレッチポール®︎です。これは先ほどの3段階のうち”緩める”ことを目的としたツールです。ほかにも、たとえばスイングストレッチ®︎というツールもあります。

体幹ケアの3段階や、狙う部位によってツールを活用します。

ストレッチポール®︎は、背骨を自然に整えながらエクササイズをおこなえます。不安定な場所でバランスを取ろうとすることで、普段の生活では得られないバランス感覚や体幹の使い方を練習することができます。

スイングスイッチは、仰向けやうつ伏せの姿勢で使用するもので、乗った瞬間に自分の身体のバランスがわかる設計になっている点です。乗ったときに身体が水平になっていれば正しいポジションで、前後や左右に傾くとそれを体感できるようになっています。この感覚を利用して、動きながら自然とバランスを整える習慣を身につけられるのがポイントです。

── ツールを使うことで、気づきにくい自分の傾きに気づける点も魅力的ですね。

江川さん:そうですね。自分の動きの癖や歪みに気づいていない人がほとんどです。ツールを使うことで、自分の身体の状態を視覚や感覚で確認しながらトレーニングできるため、より正確な動きを身につけやすくなります。

ツール自体が身体の本来の動きをサポートする設計になっているため、初心者から上級者まで幅広い方に活用していただけます。

また、できるだけ正しいフォームでおこなうことに加え、呼吸を意識することをおすすめしています。

呼吸は1日に何万回もおこなわれる動作で、体幹や肋骨の動きと密接に関係しています。とくに肋骨の下部が横に広がるように深く呼吸をすることで、横隔膜や腹部の筋肉が正しく機能し、体幹の安定性が高まります。しかし、現代では浅い呼吸や肩を使った呼吸が多く、これが肩こりや姿勢の悪化に繋がる原因の一つとなっています。

── 具体的にはどのように呼吸を改善するのでしょうか?

江川さん:呼吸エクササイズとして、腹式呼吸、逆腹式呼吸、強制呼気の3つをおすすめしています。

腹式呼吸ではお腹を膨らませながら深く吸い、吐き切ることで体幹の筋肉を鍛えます。逆腹式呼吸ではお腹を引き締めながら呼吸をおこない、肋骨を柔らかくします。また、強制呼気は、ゆっくりと息を吐いていき、そのまま最後まで吐ききります。そうすることで、呼吸に必要な体幹の筋肉を活性化させます。

呼吸は日常的におこなう動作なので、呼吸が上手くできるようになることで、身体全体に与える影響は非常に大きいです。

実際にツールをどのように使って体幹ケアをおこなうのか、簡単に体験いただければと思います。

── よろしくお願いします!

体幹ケアに挑戦

続いては、編集部が実際に体幹ケアに挑戦。

体幹ケアを普及するトレーナーの育成・支援をおこなっている「日本コアコンディショニング協会」の石塚さんに、ツールを用いた体幹ケアのやり方を教えてもらった。

①「ストレッチポール®︎」を使ったベーシックセブン

石塚さん:はじめに、ストレッチポール®︎を使った体幹ケアを体験していただこうと思います。体幹ケアの前後で、すぐに身体の違いを実感できる方が多いので、まずは今の身体の状態を覚えていただきたいと思います。

床に仰向けになって、背中の感じや、背中と床の間の空き具合などをチェックしてみてください。

── 背中の感じ…。手を入れてみると、お尻の上あたり、腰の下は結構床と離れている感じがします。

石塚さん:現在の身体の状態をなんとなく掴んでいただけたら、早速体幹ケアをおこなってみましょう。ストレッチポール®︎を活用しておこなう「ベーシックセブン」という基本的な動きがあるので、その中から数種目体験してみましょう。

石塚さん:ポールに仰向けになり、リラックスした状態を作るのが、ストレッチポール®︎を使うときの基本姿勢です。

また、これから動きをおこなう際に、もっとも大切なのは「楽な動き」を心掛けることです。

ストレッチポール®︎のエクササイズは、頑張る必要はありません。自分にとって心地よい姿勢や動きを見つけることがポイントです。たとえば、ひざを横に開くなどの動作の際は、無理に足裏をくっつける必要はなく、少し隙間を空けることで、よりリラックスした状態をつくることができます。

── 毎日続けるのは大変かな?と思っていましたが、「頑張らなくていい」が基本であれば継続しやすそうです。

石塚さん:はい、頑張らずリラックスした状態でおこなえますので、ぜひ習慣化してほしいですね。

ベーシックセブンには、3つの予備運動と7つの主運動があります。

予備運動は、胸ひらき、股関節ひらき、対角ひらきの3つです。基本姿勢から手足を動かして脱力し、ゆっくり呼吸しながら、リラックスすることが目的です。

── 動作をおこなおうと意識すると、力が入ってしまって、脱力というのがなかなか難しいですね。

石塚さん:手足の重さを感じながら呼吸することで、全身の緊張が解けていきます。呼吸が深くなるほど、リラックス効果も高まりますので、無理なく続けてみてください。

続いての主運動は、基本姿勢からさらに手や足を小さく動かし、体幹の筋肉や関節を緩めるのが目的です。床みがき、前ならえ、羽ばたき、バイバイ、膝ゆるめ、小さな揺らぎ、呼吸の7つの動きがあります。

石塚さん:この「前ならえ」の動作のときも、指先はピンと伸ばす必要はありません。指も軽く曲げて脱力して大丈夫ですよ。

── おこなう前と比べて、腰と床の間が狭くなっています!背中もぺったり床についている感覚があります。

石塚さん:たった10分程度、動作をおこなっただけでも効果が実感できますよね。

── 想像していたより動作も難しくなく、コツだけ覚えれば自宅でも実践できそうです。

石塚さん:そうですね。ベーシックセブンは、各動作の具体的な秒数は決まっていませんが、約10〜15分程度で取り組むことができます。

筋トレではないので頑張る必要もなく、リラックスした状態でおこなえますので、ぜひ習慣化してほしいです。

②「ストレッチポール®︎ひめトレ」を使って骨盤底筋群をケア

石塚さん:続いては、座っておこなう体幹ケアです。こちらの「ストレッチポール®︎ひめトレ」というツールを使います。

きれいな円柱ではなく、自転車のサドルのような楕円形に近い形をしています。このうえに座ると身体が自然にフィットするように設計されており、骨盤周りの筋肉や骨の配置をサポートしてくれます。

── 骨盤ケアをしたい女性にもよさそうですね。

石塚さん:そうですね。もともとは若い女性の姿勢改善や骨盤ケアを目的に開発されました。ただ、現在ではプロのアスリートやスポーツ選手、ピラティスやヨガをおこなう方々、さらにリハビリや介護の現場でも活用されているんです。

たとえば、ピラティスやヨガの前に「ストレッチポール®︎ひめトレ」を使うことで、腹筋や体幹の使い方が意識しやすくなり、運動の効果を高めることができます。また、日常生活の中で肩こりや腰痛を軽減したい方や、普段あまり運動をしない方でも、座るだけで効果を感じられる手軽さが魅力です。

石塚さん:このトレーニングでは、身体の感覚を丁寧に確認しながら進めることが大切です。

まず、ポイントとなるのは坐骨(座ったとき椅子に触れるお尻の骨)の位置を感じ取ることです。この坐骨が安定すると、骨盤全体のバランスが整いやすくなり、自然な姿勢が保てるようになります。

── ストレッチポール®︎ひめトレの上に座る際のコツはありますか?

石塚さん:座ったら、前後左右に身体を揺らし、体重がストレッチポール®︎ひめトレに均等に乗るように調整してください。ストレッチポール®︎ひめトレを正しい位置にフィットさせることで、体重が均等に分散されます。このバランスがとれた状態で座ることで、座ったときの背中や腰の負担が軽減されます。

中には、ストレッチポール®︎ひめトレの上に座ることで、不快感や痛みを感じる方もいらっしゃいます。その場合はクッションの当たる面積を調整し圧力を分散する、座る位置を少し変える、別の形状の補助パッドを併用するなどで、より快適に使用できます。

── ストレッチポール®︎ひめトレに座ったらどのような動きをおこなうのですか?

石塚さん:まずは、座った状態で骨盤底筋を軽く意識しながら呼吸を整えます。

このとき、お腹に手を当てて、息を吸ったときにお腹が膨らみ、吐いたときに凹む動きを意識します。呼吸を通じて骨盤底筋の動きを感じ取ることで、筋肉の意識が高まるんです。

さらに、呼吸に合わせて骨盤を軽く動かす練習も加えると効果的です。息を吸うときに骨盤が少し引き上がり、吐くときに自然ともとの位置に戻る感覚を覚えてください。この動きに慣れると、骨盤の真ん中の位置がより認識しやすくなり、自然な体幹の安定を実感できるようになります。

── 日頃、意識を向けたことがないので、感覚を掴むのが難しいですが、呼吸とともに身体が自然と動いているのを感じることはできました。

石塚さん:まずは、その程度で十分です。慣れたら、そのあとに腕や肩を使った動きを取り入れて行きます。たとえば「ツリーの動き」と呼んでいる腕をゆっくり上下に動かすエクササイズは、肩甲骨の位置を正しく整え、姿勢を改善する効果が期待できます。

この「ツリーの動き」をおこなうときは、骨盤底筋を中心に体幹を安定させつつ、肩甲骨や胸郭をスムーズに動かすことを意識します。こういった動きを取り入れることで、全身の筋肉や関節の連携を高め、身体のバランスを整える助けとなるんです。

── 動作をおこなう前に比べて、座ったときの安定感が全然違います! 左右差が整ったような感覚です。

石塚さん:よかったです。このように少し変わった!と実感していただくことが、「毎日続けよう」というモチベーションにつながればと思っています。

とくに、ストレッチポール®︎ひめトレは、立ったり寝転んだりして運動をおこなうことが難しいシニア世代の方でも取り組むことができますので、ぜひ日頃のケアとして取り入れていただきたいです。

③「スイングストレッチ®︎」で骨盤の動きを意識する

── 不思議な形をしたツールですね。これはなんでしょうか?

石塚さん:これは「スイングストレッチ®︎」です。この上に骨盤をのせ、軽くスイングさせたり、身体全体を連動させて動かすことで、筋肉や関節の可動域を広げる効果が期待できます。

具体的には、骨盤の前側にある「上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)」という骨の出っ張った部分を基準に、身体の動きを意識します。

うつ伏せになって両肘をつき、骨盤をツールに乗せます。このとき、膝やつま先は力を抜き、体重が自然と骨盤の前側にかかるように調整します。これが基本姿勢です。

── スイングストレッチ®︎を続けると、どんな効果が得られるのでしょうか?

石塚さん:まず大きな効果としては、骨盤の歪みが整うことが挙げられます。骨盤は、日常生活の癖や運動によって、右側が前に傾いたり、左側が後ろに引けたりと、ねじれが生じやすい部分です。

スイングストレッチ®︎に骨盤をのせ、ゆっくりと呼吸するだけでも、不安定な姿勢を保つのに自然と体幹(コア)の筋肉がはたらき、全身のバランスが整うんですよ。

また、スイングストレッチ®︎をおこなうと、股関節がスムーズに動く感覚が得られることが多いです。たとえば、スクワットやしゃがみ込みをおこなう前にスイングストレッチ®︎をすると、股関節がしっかりと「はまり込む」ような感覚が出て、動きが軽くなります。

足を上げる動作も楽になり、以前よりも自然に動かせるようになります。

── 不安定な姿勢でおこなうのは少し難しそうですが、初心者でも大丈夫でしょうか?

石塚さん:はい、初心者でも安心して取り組めるよう段階的な方法があります。

まずはうつ伏せになって骨盤を安定させる姿勢を作るところからはじめます。その状態で体重がどこにかかっているかを確認しながら、ゆっくりと呼吸します。この基本的な動作だけでも、骨盤の歪みが整いやすくなります。

石塚さん:少し慣れてきたら、体幹と手足を連動させた動きにも挑戦できます。

たとえば、骨盤を安定させたまま手や足を動かし、体の軸を保つトレーニングなどがあります。

これは最初は難しく感じるかもしれませんが、続けることでスクワットやしゃがみ込みといった日常の動きもスムーズになります。股関節の可動域が広がったり、足を上げる動作が軽くなったりする効果も期待できますよ。

── 本当ですね! 足が軽く上がるようになりました!

石塚さん:スイングストレッチ®︎は、骨盤を整えて安定させることで、股関節の動きが驚くほどスムーズになります。

とくにダンスやピラティスをされている方から「これをやると身体の動きが全然違う!」と驚かれることが多いです。骨盤が安定すると、全身が連動しやすくなり、余分な力を使わずにスムーズに動けるようになるんです。

④「アシスティック®︎」で胸周りの動きをケア

石塚さん:最後に、こちらの「アシスティック®︎」を紹介させてください。グリップを回転することで長さを伸縮できるのが特徴です。トレーニング内容に応じて、必要な長さに調整できます。

アシスティック®︎」は、おもに胸まわりを中心としたエクササイズを、正しいフォームでおこなえるようサポートしてくれます。上手に使えば、一般的なストレッチでは動かすことが難しい部分も、しっかり可動させることができますよ。

── アシスティック®︎を使ったストレッチを続けることで、どのような効果が期待できるのでしょうか?

石塚さん:アシスティック®︎を用いたストレッチでは、肩甲骨や背中、さらに身体の側面まで、全身を連動させて動かすことができます。さらに動作中に体重移動を取り入れることで、体幹やバランス感覚を鍛えながら、筋肉の柔軟性も高められます。

── 今まであまり伸ばしたことがない部分が、伸びている気がします。

石塚さん:そうですね。アシスティック®︎を使うことで、自分一人でも人にストレッチをしてもらったかのような効果を実感できる点が大きな魅力です。

脇腹、背中、骨盤周りの筋肉などを効率的に伸ばせるので、身体全体の柔軟性の向上が期待できます。ねじり動作を加えると、体幹強化や姿勢改善、肩甲骨の可動域の向上にも効果がありますよ。

── アシスティック®︎を使う際のコツやポイントはありますか?

石塚さん:一生懸命伸ばそうとする方もいらっしゃいますが、痛みを感じるまで無理には伸ばさないことが大切です。動作中は呼吸を止めず、ゆっくりと動かしながら心地よい伸びを感じる範囲でおこないましょう。

また、動作を急がず、アシスティック®︎をしっかりと握って安定させることで、安全に取り組むことができます。鏡でフォームを確認し、少しずつ動きを大きくして慣れていくのがおすすめです。

── 少し体験させていただいただけでも、柔軟性がぐんと上がった気がします。胸まわり、肩甲骨あたりが動かしやすくなりました。

石塚さん:アシスティック®︎を活用したストレッチでは、自分で動きながら「どこが硬いのか」「どこが気持ちよく伸びるのか」に気づけることが大きなメリットで。これまで気づかなかった身体の特徴を理解することで、改善に向けた具体的なアプローチが可能になります。

また、体幹ケアを継続することで、柔軟性や可動域は確実に向上していきます。さらに身体を動かす習慣がつくことで「やりたいこと」「目指したい動き」に対する意識が高まり、よりポジティブに運動に取り組めるようになります。

とくに、運動初心者の方は、今日ご紹介したようなツールを使うことで、身体の感覚をつかみやすくなります。ストレッチポール®︎やストレッチポール®︎ひめトレ、スイングストレッチ®︎などが、正しい動きができるようサポートしてくれますよ。

1日10分でもいいので、ぜひ動ける身体をつくるための「体幹ケア」に取り組んでいただけると嬉しいです。

Wellulu編集後記:

日本人の平均寿命と健康寿命の差が約10年あるというデータが印象的でした。医療がどれだけ発達していても、自分が「動ける身体」を持っていなければ、ずっと健康で過ごすことはできません。毎日歯磨きをして、歯を大切するように、日頃から体幹のケアをして、「動ける身体」を維持する習慣をつける重要性を実感しました。

実際にいくつかの「体幹ケア」に挑戦して、その手軽さと簡単さ、1回だけでも感じられる身体の変化に驚きました。筋トレのようにきついトレーニングではなく、リラックスしながら取り組めるものばかりだったので、無理なく続けられそうです。この記事をきっかけに一人でも多くの人が「体幹ケア」に取り組んでいただけると嬉しいです。

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