
脊柱起立筋は、背骨に沿って縦に走る大きな筋肉群。姿勢維持に重要な役割を果たすため、筋力が低下すると猫背や腰痛の原因になってしまう。また、体幹を支える重要な筋肉であるため、スポーツのパフォーマンス向上やボディメイクにも深く関わる。
この記事では、脊柱起立筋を鍛えることで得られる効果、おすすめの筋トレメニューやストレッチを紹介。姿勢改善や腰痛予防に取り組みたい人は、ぜひ参考にしてみよう。
この記事の監修者
関根 綾さん
パーソナルジムDecision 代表トレーナー
脊柱起立筋を構成する筋肉
首から腰にかけて、背骨に沿って背中の両面についている脊柱起立筋。正しい姿勢を維持する上で大切で、以下の筋肉で構成されている。
- 棘筋(きょくきん)
- 最長筋(さいちょうきん)
- 腸肋筋(ちょうろくきん)
棘筋(きょくきん)
脊柱起立筋の外側に位置する筋肉群が棘筋。背骨の両脇で縦に伸びる筋肉で、主に背骨の伸展運動をサポートする。背骨の安定性を保つ役割もあり、姿勢の維持に大きく貢献する。デスクワークの多い現代人にとって、棘筋の筋力維持は猫背予防や腰痛対策に不可欠。
最長筋(さいちょうきん)
脊柱起立筋の中で最も大きな筋肉。頸部から腰部まで伸びており、背骨全体の動きをコントロールする。背骨の横曲げや回旋運動にも関わり、日常生活のあらゆる動作を支える土台になる。運動不足による最長筋の衰えは、腰痛や肩こりの原因になることも。
腸肋筋(ちょうろくきん)
脊柱起立筋の内側に位置する腸肋筋。腰椎から胸椎にかけて伸びており、背骨の安定性を保つ。呼吸をおこなうときの胸の動きにも関与し、深い呼吸を可能にする重要な筋肉。腸肋筋の機能低下は、呼吸の質低下や背部の違和感につながる可能性も。
脊柱起立筋を鍛えることで得られる効果
- 姿勢が改善して腰痛・肩こりの予防につながる
- 体幹が安定して運動能力が向上する
- すっきりとした後ろ姿になる
姿勢が改善して腰痛・肩こりの予防につながる
脊柱起立筋の筋力が高まると背骨をまっすぐに保ちやすく、正しい姿勢を維持できるようになる。長時間のデスクワークによる前傾姿勢や猫背の改善に役立つ。背骨への負担が軽減されると、腰痛や肩こりの予防にもつながる。

体幹が安定して運動能力が向上する
脊柱起立筋の強化で背骨の安定性が増し、全身の動きがスムーズに。スポーツでのパフォーマンス向上にも直結する。体幹が安定すると、四肢の力が効率よく伝わり、運動効率が改善したりバランス能力が向上したりする。
すっきりとした後ろ姿になる
猫背や反り腰などの姿勢が改善すると背中のラインがすっきりしやすくなる。背筋がピンと伸びることで、お腹のぽっちゃり感が薄れることも。姿勢改善は体重減少よりも早く効果が現れやすく、短期間で見た目の印象を変えやすくなる。
【自宅で簡単】脊柱起立筋の自重筋トレメニュー3選
脊柱起立筋を鍛える自重筋トレメニューを紹介。手軽に取り組めるものばかりなので、宅トレ時の参考にしてみよう。
- バックエクステンション(自重)
- バードドッグ
- グッドモーニング

バックエクステンション(自重)
「バックエクステンション」は、上体を起こす動作で主に背中の筋肉を鍛えるトレーニング。脊柱起立筋を効果的に鍛えられるため、姿勢改善や腰痛予防にも役立つ。
<やり方>
- うつ伏せになり、両手は頭の後ろで組むか、身体の横に置く
- 息を吐きながら、上体をゆっくりと起こす
- 上体が床と平行になるか、少し上まで持ち上げ数秒キープする
- 息を吸いながら、ゆっくりと元の姿勢に戻す
バードドッグ
「バードドッグ」は、四つん這いの姿勢から、片腕と反対側の脚を同時に伸ばすトレーニング。体幹を安定させながら、バランス感覚や体幹の筋肉を鍛えられる。
<やり方>
- 手首が肩の真下、ひざが股関節の真下になるように、四つん這いの姿勢になる
- 息を吐きながら片腕を身体の正面にまっすぐ伸ばす
- 同時に反対側の脚を後ろにまっすぐ伸ばし、数秒間キープする
- 息を吸いながら、ゆっくりと元の姿勢に戻す
- もう一方の腕と脚も同様に繰り返す
グッドモーニング
「グッドモーニング」は、脊柱起立筋やハムストリングスを鍛えるトレーニング。バーベルを肩に担ぎ、腰を折り曲げる動作が基本だが自重でも取り組める。腰への負担が大きいので正しいフォームでおこなおう。
<やり方>
- 脚は肩幅程度に開く
- ひざを少し曲げて深く息を吸い込み、お腹に力を入れる
- 背中を丸めずに、腰を軸にして上体を前に倒していく
- 柔軟性や筋力に合わせて、限界まで上体を倒す
- 息を吐きながら、ゆっくりと元の姿勢に戻す
【ダンベル・マシン使用】脊柱起立筋の筋トレメニュー3選
ダンベルやマシンを使った筋トレは、自重の筋トレよりも高い負荷でおこなえる。筋肉も効率よく鍛えやすくなるので、自重に慣れてきたら徐々に「ダンベル」「マシン」を使った筋トレをおこなおう。また、「マシン」を使った筋トレの方がダンベルよりも動作が安定しやすい。
- ダンベルデッドリフト
- スティッフレッグデッドリフト
- バックエクステンション(マシン)
ダンベルデッドリフト
「ダンベルデッドリフト」は、ダンベルを使っておこなうデッドリフトの種目。バーベルデッドリフトと比べて左右のバランスを取りやすく、初心者でも取り組みやすいのが特徴。主に背中、お尻、太ももなどの大きな筋肉群を鍛えることができ、体幹の安定性向上にもつながる。
<やり方>
- ダンベルを両手に1つずつ持ち、足を肩幅に開いて立つ
- 膝を少し曲げ背中は真っ直ぐにし、肩の力を抜く
- 深く息を吸い込み、お腹に力を入れる
- 膝を曲げながら、お尻を後ろに引いていく
- 背中を丸めずに、腰を軸にして上体を倒していく
- ダンベルをすねに近づけるように、上体を倒す
- 息を吐きながら、床を蹴るようにして力強く立ち上がる
- 立ち上がる際に、肩甲骨を寄せるように意識する
スティッフレッグデッドリフト
「スティッフレッグデッドリフト」は、ひざを伸ばしたままおこなうデッドリフトの一種。ハムストリングスや脊柱起立筋を重点的に鍛えられ、お尻の筋肉も同時に刺激できる。通常のデッドリフトよりも腰への負担が少ないため、怪我のリスクを抑えられる。
<やり方>
- バーベルを肩幅よりもやや狭めに握り、床から持ち上げる
- 足を肩幅に開いて立ち、膝を少し曲げる
- 背中は真っ直ぐにし、肩の力を抜く
- 深く息を吸い込み、お腹に力を入れる
- 膝を曲げずに、お尻を後ろに突き出すようにして上体を倒していく
- 背中が床と平行になるまで、ゆっくりと上体を倒す
- 息を吐きながら、ハムストリングスの力で上体を起こす
バックエクステンション(マシン)
マシンでおこなう「バックエクステンション」は、自重よりも高い負荷を与えられるトレーニング。ジムによってはマシンではなくベンチが置いてあることも。
<やり方>
- うつ伏せになり、足首をパッドで固定する
- 両手は頭の後ろで組むか、身体の横に置く
- 息を吐きながら、上体をゆっくりと起こす
- 上体が床と平行になるか、少し上まで持ち上げ数秒キープする
- 息を吸いながら、ゆっくりと元の姿勢に戻す
筋トレを効果的にする!脊柱起立筋のストレッチ2選
脊柱起立筋が硬い状態でトレーニングをおこなうと、パフォーマンスが上がらなかったり、ケガにつながったりすることも。
- キャット&カウポーズ
- チャイルドポーズ
キャット&カウポーズ
「キャット&カウポーズ」は、ヨガの基本ポーズの一つ。猫のように背中を丸めたり、牛のように背中を反らしたりする動きを繰り返すことで背骨を柔軟にし、呼吸を深める効果がある。デスクワークなどで固まった背中をほぐすのにもおすすめ。
<やり方>
- 床に四つん這いになり、手首が肩の下にくるようにする
- 目線をおへそに向けて息を吸い、吐きながら背骨を丸める
- 背骨が丸まったところで、目線は斜め上にしながら息を吸いながら背骨を反らせる
- 反りきったら、手順2.からの動きを繰り返す
チャイルドポーズ
「チャイルドポーズ」は、ヨガの基本ポーズの一つで、おでこを床につけリラックスするポーズ。心身をリラックスさせ、ストレスを軽減する効果がある。背中のストレッチにもなり、ヨガのポーズとポーズの合間の休憩としてもよく使われる。
<やり方>
- 足の指を重ねずに正座の姿勢になり、背筋を伸ばす
- 両手を身体の前につき、息を吐きながら少しづつ手を前に滑らせる
- 骨盤から上半身を前に倒し、おでこを床につける
- 首と肩の力を抜いてキープする
- ゆっくりと元の姿勢に戻す
脊柱起立筋を鍛える頻度・強度
脊柱起立筋の筋トレを高頻度・高強度でおこなってしまうと腰椎に負荷がかかりすぎてしまう。
- 週1〜2回を目安にする
- 負荷を高めたい場合は「8〜10回:1セット」を2〜3セットおこなう
週1〜2回を目安にする
自重や軽い負荷の運動であれば週2回程度が適切。ただし、高負荷トレーニングの場合は腰痛リスクを考慮して週1回程度に抑えよう。
ほかのトレーニングでも脊柱起立筋は使われているので、集中的に鍛えるよりも脊柱起立筋も使われる筋トレをおこなうのも1つの手。

負荷を高めたい場合は「8〜10回:1セット」を2〜3セットおこなう
負荷を高めてしっかりと筋肥大させたい場合は、8〜10回がぎりぎりできる重量でおこなおう。なお、ダイエットや引き締めが目的であれば、15回程度できる負荷で2〜3セットおこなうのがおすすめ。
最初は自重など負荷が軽い状態で10回2〜3セット程度から始め、慣れてきたら自分の目的にあった回数と重量を意識して取り組もう。
脊柱起立筋と一緒に鍛えたい筋肉
背筋とあわせてほかの部位も筋力を増やすと、姿勢の改善、肩こりや腰痛の解消にさらに効果を発揮する。
- 腹筋などの体幹
- 肩甲骨・背中まわり
- 大臀筋

腹筋などの体幹
腹筋群は脊柱起立筋と拮抗する関係にあり、「プランク」などで腹横筋などのインナーマッスルを鍛えると体幹の安定性が向上し、より効果的な姿勢改善が可能となる。
体幹の筋肉は日常生活のあらゆる動作の土台となり、内臓を支える役割も担う。適切な強度の腹筋トレーニングを継続することで、腰痛予防だけでなく、運動能力の向上や怪我予防にもなる。
肩甲骨・背中まわり
肩甲骨や背中周辺の筋肉は、上半身の姿勢維持において脊柱起立筋と連動して働く。「ラットプルダウン」や「懸垂」などで僧帽筋や広背筋を強化すると猫背の改善や肩こりの予防につながる。
また、背中の筋肉が弱いと、脊柱起立筋に負担がかかりやすくなる。肩甲骨の可動域を広げるトレーニングを取り入れることで、上半身全体の柔軟性が向上し、姿勢の歪みを予防できる。
大臀筋
大臀筋は人体のなかでも大きな筋肉であり、下半身の安定性を支える重要な役割を果たす。脊柱起立筋と連動して動く筋肉でもあるため、「ヒップリフト」などでお尻を鍛えると腰椎や骨盤の安定性が高まりやすくなる。大臀筋のトレーニングは姿勢の悪さからくる腰痛対策にもなる。
脊柱起立筋の筋トレをする際の注意点
- 反動を使わずゆっくり動作をおこなう
- 背中を丸めすぎない
- 痛みを感じたらすぐに中止する

反動を使わずゆっくり動作をおこなう
反動を使ってトレーニングをしてしまうと、筋肉にしっかり負荷が与えられず、腰椎への負担も高まる。
ゆっくりとした動きを意識することで、背骨への不必要な負担を軽減し、ケガのリスクも大幅に低下する。トレーニング効果を最大限に引き出すためにも、正しいフォームの習得が必須。
背中を丸めすぎない
背中を必要以上に丸めることで、椎間板への過度な負担が発生し、腰痛や椎間板ヘルニアのリスクが高まる。背骨の自然なカーブを維持しながら動作をおこなうようにしよう。
姿勢を崩して背中を丸めると、脊柱起立筋以外の部位に負荷がかかり、鍛えたい脊柱起立筋への刺激が半減することも。
痛みを感じたらすぐに中止する
トレーニング中に背中や腰に違和感や痛みを感じた場合は、すぐに動作を中止しよう。無理な継続は症状の悪化につながる可能性がある。なお、痛みが出た場合は我慢せず、完全に回復してからトレーニングを再開しよう。
脊柱起立筋の筋トレに関するQ&A
どのくらいの重量から始めるべき?
A:まずは自重からのスタートがおすすめ

毎日トレーニングしても大丈夫?
A:毎日おこなう必要はない

脊柱起立筋の筋トレの負荷を高めるためのコツはある?
A:お尻の筋肉をしっかり使うこと

脊柱起立筋の筋トレは高齢者でもできる?
A:自重や低負荷でのトレーニングはできる

年間約1000セッションを指導。経営者や芸能関係者の指導経験も多く、ダイエット・ボディメイク・健康維持など、さまざまな悩みに幅広く対応している。2021年より大原学園大宮校スポーツトレーナー科講師としても活動。
【保有資格/実績など】全米エクササイズ&フィットネス協会認定トレーナー(NESTAーPFT)/IMBF公認ファスティングカウンセラー/関東オープンメンズフォジーク選手権入賞