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【桜井陽氏】自由な対話が生まれる社会のために

キャリアの選択肢を広げ、より充実した人生を送るための鍵として注目される「リスキリング」。新たなスキルを身につけ成長し続けることは、単にキャリアアップの手段ではなく、ウェルビーイングな生き方にもつながる重要な要素だ。

今回、リスキリングとウェルビーイングをテーマにしたポッドキャストを前後編で配信。『NIKKEIリスキリング』編集長である桜井陽氏と、『Wellulu』編集長である堂上研が、変わりたい組織・成長したい個人へのヒントを語った。

Welluluでは、桜井氏の私生活にフォーカス。リスキリングを発信し続ける彼自身は、どのように学び、日々を楽しんでいるのか? ともに国際基督教大学(ICU)の出身であり、同校の文化にならって互いを「陽さん」「研さん」と呼び合う仲の堂上が話を伺った。

堂上がゲストとして伺ったポッドキャスト『聴く NIKKEIリスキリング』はこちら

 

桜井 陽さん

日本経済新聞社 NIKKEIリスキリング編集長

新卒で日本経済新聞社に入社。入社後は社会部に配属され、約20年にわたり事件・社会問題を中心とした報道に携わる。その後、映像報道部へ異動し、ドキュメンタリーなどの映像制作に従事。新規事業の立ち上げなども経験し、現在に至る。
現在は『NIKKEI リスキリング』編集長として、変化を求める組織や成長を志すビジネスパーソンに向けた情報発信を行い、「リスキリング」の意義を広めることに尽力している。

https://reskill.nikkei.com/

堂上 研

株式会社ECOTONE 代表取締役社長/Wellulu編集長

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集長に就任。2024年10月、株式会社ECOTONEを立ち上げる。

https://ecotone.co.jp/

目次

好奇心旺盛でいろいろなことに興味を持っていた少年時代

堂上:ポッドキャスト、ありがとうございました。ウェルビーイングとリスキリングの深いつながりがわかるお話で、とても興味深かったです。

Welluluでは、もう少し陽さんのお人柄や、ウェルビーイングについて伺っていきたいと思います!

桜井:面白いですね。よろしくお願いいたします!

堂上:早速ですが、幼少期は何をしているときが一番楽しかったですか?

桜井:天文学者になることを夢見ていたくらい、星を見るのが大好きでした。幼稚園の頃に父にプラネタリウムに連れて行ってもらい、「なんて面白いんだ」と感動した記憶があります。

堂上:へぇ! その夢は途中で諦めてしまったんですか?

桜井:当時は「お年玉を一生懸命貯めて、天体望遠鏡を買うぞ!」と意気込んでいたんですが、いつの間にか目指さなくなっていましたね……。

堂上:小さい頃の夢って、いつの間にか追わなくなりますよね。僕は小さい頃にピアニストを目指していて、両親が中古のオルガンを買ってくれたんです。でもその鍵盤にドレミの文字を書いたテープが貼ってあって、その手触りがどうしても手に馴染まなくて離れてしまいました。

桜井:些細なことがきっかけだったりしますよね。

堂上:そうなんですよね。天文学者を諦めた後は?

桜井:小学生のときにはプロレスに興味を持ったり、中学生の頃はテニスとバンドにハマったり。両方とも大学まで続けていました。高校生のときには「ギタリストとしてスターになるぞ!」と夢見ていましたね。

堂上:陽さんは、好奇心旺盛で熱中するタイプなんですね。いろいろなことを始めると、多様な人たちと出会うきっかけにもなります。

ポッドキャストでもお話しされていましたが、Welluluの「いろいろ診断」では桜色だったとか。

桜井:はい。桜井だけに(笑)。

堂上:さすがです(笑)! 桜色の方は「初めてを始める」ことが大好きで、挑戦することを恐れず、失敗してもくよくよしないで次に進めるタイプ。ウェルビーイング度が高いと言われているんですよ。

桜井:本当ですか! 桜色の人へのアドバイスとして「やりたいことを10個書き出そう」と書いてあったので、実際に書き出してみました。

堂上:おっ! ぜひ教えてください。

桜井:仕事はほとんど関係ないですけど……、「毎日のディープスクワット(正月太り解消のため)」「早朝の新聞まとめ読みからのニュース解説」「学ぶ環境の整理」「ファスト&スローウォーキング」「圧力鍋を使った料理」「人物撮影の上達」「サウナのさらなる習慣化」「音楽を楽しむ(歌とギター)」「速読トレーニング」「地方の人と風土の深堀り」です。ひとつでも毎日やると良い、とWelluluに書いてありました。

堂上:素晴らしいです! そもそも書かれていたアドバイスをすぐに実行していることがウェルビーイング度を高めているし、実際に始めることはリスキリングにもつながりますよね。

桜井:「いろいろ診断」は楽しくて、ワクワクしながらできました。あとは継続するだけ……!

堂上:自分としっかり対話する機会を、自ら作っている陽さんはさすがです。

父の影響でマスコミ業界へ。新聞記者の意義を実感した出来事とは?

堂上:小さい頃から好奇心旺盛な陽さんが、日本経済新聞に就職したのはなぜだったんですか?

桜井:父がテレビ関係の仕事をしていて、マスコミ業界に興味があったんです。テレビマンではなく新聞記者を選んだのは、父と比較されたくないからという理由もありますが……(笑)。小さい頃は体が弱かったこともあって、医師もいいなと思っていた時期もありましたが、どこかで「新聞記者は社会の医者」という言葉を耳にしたのも大きかったように思います。

堂上:陽さんは周囲の影響を受けやすいタイプでもあるのでしょうか?

桜井:そうですね。影響を受けやすいし、すぐに自分のなかに取り入れます。

堂上:素晴らしいです。僕はWelluluを通じて、これまで150人くらいの方とお話をしてきました。ウェルビーイングな方の共通点のひとつに、「初めてのことでも恐れず挑戦してみる」ということがあります。陽さんは、もともとウェルビーイングな生き方をされている方だったんですね。

桜井:進学先に国際基督教大学(ICU)を選んだのも、いろいろなことをやってみたかったからなんですよ。

堂上:リベラルアーツの考え方ですね。僕も、ICUでは自分の興味に沿って幅広い視点で学べたことが本当に良い経験だったなと思います。ちなみに、日経で記者を20年弱されていた間は、ウェルビーイングでしたか?

桜井:うーん……当時は、今では考えられないくらい残業していたこともあって、睡眠時間をしっかりとれているかという点では、ウェルビーイングではなかったかもしれません。ただ、僕は日経のなかでも「社会部」という、いわゆる事件を担当する部署の記者で常に何かしらの新しい現場に行っていたので、いつも新鮮さや気づきがありました。

堂上:新聞の社会面には、不幸な事故や事件もたくさん掲載されますよね。その現場に出て取材するとなると、感情移入したり面食らったりしてしまいそうで、しんどそうだなというイメージがあるのですが、陽さんは大丈夫でしたか?

桜井:最初の頃はそうでしたよ。入社一年目で右も左もわからないとき、災害の事故現場に行って家族を亡くした方に取材する機会がありました。でも、僕はその記事がつらくて書けなかったんですよ。そうしたら、とある先輩に「書きなさい」「事件の悲しみを伝えることで、行政や専門家が対策を講じるかもしれない」「それがお前の仕事なんだ」と言われて、記者という仕事の意義を実感したんです。

堂上:なるほど……。良い先輩に出会えたんですね。

桜井:はい。でも、研さんがおっしゃるとおり限界も来てしまいました。ちょうど子どもが生まれたぐらいの時期に児童虐待の記事を仕事で読まなければならなくて、そのときにあまりにもつらい気持ちになってしまったんです。感情移入し過ぎたのでしょうね。そういうこともあって社会部をいったん卒業しようと決め、その後、いくつかの部署を異動して今に至ります。

葛藤があるからこそ良い仕事が生まれる

堂上:『NIKKEIリスキリング』ではいろいろな方と対談することで、「リスキリング」の重要さを世の中に広めていらっしゃいますよね。今、お仕事は楽しいですか?

桜井:楽しい面と、そうではない面がありますね。例えば、外来語である「リスキリング」という言葉を日本社会に置いた場合、僕自身がまだしっくりきていない部分がありますし、世の中に向けてもまた「大人の学び」についての新しい概念を作っていきたいなと思っているんです。まだ道半ばではあるので、単純に「楽しい!」という感じではないですね……。

堂上:なるほど。ただ、その葛藤があるからこそ、良いものが作れる可能性があるわけですもんね。

桜井:おっしゃるとおりです。葛藤がないと、良い仕事は生まれないんだろうなと思います。ですので、僕は葛藤があることをマイナスだとは思っていなくて。趣味の「楽しい」とは違いますし、事件現場をただ飛び回っていた頃の楽しさとも少し違う感じがしていますね。

堂上:わかります。そんな陽さんは、今何をしているときが一番楽しいですか?

桜井:今日の研さんとのポッドキャスト収録もそうですけど、『NIKKEIリスキリング』の対談を通して、自分の知らなかったことを聞いたり、一人ではできない発見をしたりするのがすごく楽しいですね。

それと実は僕、息子を一度、収録の現場に連れて来たことがあるんです。マイクについて教えてもらったりして息子もすごく楽しかったみたいで、僕にとっては仕事とプライベートが混ざっているようなその空間がものすごくハッピーでした。

堂上:すごい! 昔は商店などで、子どもが両親の仕事を見たり手伝ったりするのが珍しくなかったじゃないですか。今もあるかもしれませんが、会社勤めだとなかなか自分の働きぶりを家族に見せられませんよね。仕事場に息子さんを連れて来たのは、息子さんにも陽さんにとっても素晴らしい経験だったんでしょうね。

僕もコロナ禍で家で仕事をするようになり、「これは良い機会だ」と思って、ZOOM会議をあえてリビングでやっていたことがありました。

桜井:良いですね。息子はその後も同僚との食事について来ることもありますよ。良い社会勉強になっているみたいです。

堂上:素敵です!

自由な対話ができる社会をつくりたい

堂上:最後に、未来について聞かせてください。陽さんは、これからどんなことをして、どんな社会を創っていきたいですか?

桜井:僕は他者との対談を通してコンテンツを作ることが、すごく好きで楽しいんです。ですから、いつか自分なりのコンテンツレーベルを作りたいですね。

そして、自由な対話ができる社会、言いたいことを表現できてそれを誰かと共有することで新しいものが生まれる社会をめざしたい。息子や次の世代には、そういう社会のなかで閉塞感なく息苦しさを感じずに生きてほしいと思うので、自分が貢献できたら嬉しいです。

堂上:新しいことにどんどんチャレンジしていく桜色の陽さんは、その夢もきっと実現してしまうのでしょうね。今日は貴重なお話をありがとうございました。

同じICU出身者として、そしてウェルビーイング共創社会を創る仲間として、これからもよろしくお願いします!

桜井:ありがとうございました! これからもよろしくお願いします!

第37回 「ウェルビーイングをもう一度考える 『Wellulu』編集長・堂上さんに聴く 前編」

第38回 「ウェルビーイングをもう一度考える 『Wellulu』編集長・堂上さんに聴く 後編」

堂上編集長後記:

陽さんと出逢ったのは、日本経済新聞社の新規事業改革者、重原さんからのECOTONE社立ち上げのお祝いのご連絡をいただいたことがきっかけだった。重原さんとは、5年前にどうやってイノベーションが起こるか、あるスタートアップのイベントで出逢ったのである。

「聴くNIKKEIリスキリング」で元阪神タイガース(プロ野球選手)の鳥谷敬選手と、元コンサドーレ札幌(Jリーガー)の曽田雄志選手のおふたりとの収録があるから、堂上さんも来ないかと誘っていただいたときに出逢った。

耳から学ぶ!鳥谷敬さんの目標設定の極意 キャリアを見つめる「鳥の目」 前編 | NIKKEIリスキリング

ふたりのプロ選手としての活躍とセカンドキャリアの話は、僕からしたら学びの宝庫だった。素敵なご縁を紡いでくださった。

リスキリングとウェルビーイング、リベラルアーツと、カタカナばかりが並ぶが、すべてに共通することは「挑戦できる環境」であり、「常に学び続ける意志」である。そんな志を得ることができたのが30年前に通った国際基督教大学(ICU)だったことも、陽さんが先輩だったことも僕からしたら、このご縁を大切にしたい、と思ったきっかけだった。

重原さん、陽さん、素敵なご縁に感謝です。「NIKKEIリスキリング」で多くの方がウェルビーイングになりますように。

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