筋トレ後に感じる強い眠気は、身体にとって自然な生理反応のひとつ。エネルギー消費によるアデノシンの蓄積や血糖値の変動、自律神経の切り替えなど、体内ではさまざまな変化が起きている。
この記事では、筋トレで眠くなる原因を身体の仕組みから整理し、眠気を軽減する具体的な対策・回復効率を高める睡眠の取り入れ方までを紹介。眠気を正しく理解し、トレーニングと回復のバランスを整えるための参考にしてみて。
この記事の監修者

角谷 リョウさん
睡眠コーチ / 超回復・睡眠研究所 所長
この記事の検証者

吉田 健二さん
Wellulu編集部
30代後半・男性。30歳を過ぎた頃から「寝ても疲れが抜けにくい」といった変化を実感し、睡眠の質に関心を持つ。無理なく続けられる改善方法を模索している。
筋トレで眠くなる原因と身体の仕組み

筋トレ後に強い眠気を感じると、「身体に悪影響があるのではないか」と不安に思う人もいるかもしれない。しかし、その多くは体の正常な生理反応によるものと考えられている。ここでは、筋トレで眠くなる4つ原因について、身体の仕組みとあわせて紹介。
- 疲労でアデノシンがたまる
- 血糖値が下がる
- 副交感神経が優位になる
- 成長ホルモンが分泌される

監修者:角谷
眠気の正体は、筋トレ中の反応・筋トレ後の反応がある!
筋トレで眠くなるのは、身体の正常反応と捉えることもできます。アデノシンの分泌などトレーニング中の反応、自律神経の変化などトレーニング後の反応などが、筋トレで眠くなる原因と考えられています。
疲労でアデノシンがたまる

筋トレ時に体内でATP(※1)が消費され、眠気を引き起こすアデノシン(※2)が増える。運動後に強い眠気が出るのは、このアデノシンの影響が大きい。睡眠不足が重なるとアデノシンが抜けにくくなるため、トレーニング後の眠気がより強まりやすい。

監修者:角谷
アデノシンの分泌量と眠気の関係は実証されている
「なぜ人は寝るのか」という問いについて、いまだに解明できていない部分は多いのですが、アデノシンが増えると眠気が強まることは、研究でも確認されています。筋トレのように消費エネルギーが高い運動をおこなうと、ATPが多く使われるため眠気が出やすいのは自然な反応といえます。
※1:ATPとは?
体内でエネルギーを生み出すために使われる物質。「エネルギー通貨」とも呼ばれ、運動時に大量に消費される。
※2:アデノシンとは?
ATPが分解される過程で生じる物質。脳内に蓄積すると眠気を強める働きがある。
血糖値が下がる

筋トレでは筋肉が糖をエネルギーとして消費するため、運動の強度や時間によっては血糖値が下がりやすい。低血糖になると集中力が低下し、ぼーっとした感覚や眠気につながる。

監修者:角谷
低血糖と眠気は関連しているが、筋トレで低血糖になる人は少ない
筋トレによる低血糖が原因の眠気は、エネルギー不足による防御反応に近いものです。身体が「これ以上動くと危険」と判断し、休息を促している状態と考えられます。この場合は、食事のタイミングや栄養バランスを見直すことが重要です。
一方で、実際の現場感覚としては、筋トレによって明確な低血糖状態になる人はそれほど多くありません。多くの人は事前に食事をとってからトレーニングをおこなっているため、極端に血糖値が下がるケースは少ないと考えられます。
副交感神経が優位になる

筋トレ時は交感神経が働きやすい一方、運動が終わると体は回復に向けて副交感神経を強めやすい。
副交感神経が優位になると心拍が落ち着き、呼吸も深くなり、リラックス状態へ近づく。結果として「眠気が急にくる」「だるさが強まる」といった感覚が出やすくなる。

監修者:角谷
筋トレで自立神経を一気に高めることで、副交感神経が優位になる
不眠治療の現場でも筋トレをすすめることがあります。有酸素運動よりも重量を扱うトレーニングの方が交感神経を一気に高めてくれるため、その反動として副交感神経が優位になりやすくなります。
自律神経に“メリハリ”をつくることで、身体は休息モードに入りやすくなり、眠気が出やすくなります。筋トレ後の眠気は「自律神経が正しく働いた結果」ともいえます。
成長ホルモンによる眠気

筋トレ後に筋肉の修復や回復に関わる成長ホルモンが分泌される。本来、成長ホルモンは深い睡眠(ノンレム睡眠)時に多く分泌されるため、身体が回復モードに入り眠気やだるさとして体感できる。

監修者:角谷
成長ホルモンが“直接”眠気を起こすかは断定できない
成長ホルモンと眠気の関係は、以前から睡眠業界でも注目されてきました。とくに成長ホルモンが分泌されやすい「加圧トレーニング」は話題になり、「その後に強い眠気が出る」という体感を訴える人も多くいます。
しかし、成長ホルモンの分泌が直接的に眠気を引き起こしているかどうかについては、現時点では明確に証明されているわけではありません。まだ仮説段階というのが正確なところです。
筋トレ後に眠くなるときの対策例

筋トレ後の眠気は疲労回復による自然な流れ。しかし、日常生活に支障が出るくらいなら対策が必要になる。行動ベースで整えることで、過度な眠気は軽減しやすくなる。
- クールダウンで副交感神経を整える
- 栄養補給で血糖値低下を防ぐ
- カフェインを摂取する
クールダウンで副交感神経を整える

筋トレ後は急に動きを止めるより、軽いクールダウンを挟むことで副交感神経への切り替えがゆっくりになる。
ウォーキングやストレッチで心拍をゆっくり落とし、筋肉の緊張をゆるめる流れが基本。運動直後に座り込むと眠気が一気に強まることもあるため、数分でも体を動かしながら整えるのが対策になる。

監修者:角谷
ストレッチや軽い運動で、ゆっくり副交感神経を優位にする
交感神経を急激に高めると、その反動で一気に下がりやすくなります。この急激な切り替えが、強い眠気やだるさにつながることがあります。そのため、トレーニング後はすぐにオフィスワークに入るのではなく、少し休憩をはさむなど副交感神経交感神経の時間帯をおいて、その後緩やかに再開するのがおすすめです。

検証者:吉田
トレッドミルやストレッチポールでの柔軟運動がおすすめ!
ジムで筋トレをした際は、トレッドミルを使ったウォーキング(5分ほど)・ストレッチポールでの柔軟を入れることで、筋トレ後の集中力も増した気がします。しっかりクールダウンをするというよりも「呼吸を整えながら少し動かす」くらいで十分な印象です。
栄養補給で血糖値低下を防ぐ

筋トレ後に急な眠気が出るとき、血糖値が下がりすぎている可能性がある。対策としては、運動後30〜60分以内に糖質とタンパク質を補給し、エネルギー切れを防ぐ方法が有効。消化しやすい食品に、プロテインを組み合わせると筋肉の回復にもつながる。

監修者:角谷
筋トレ後の栄養補給と水分補給は忘れずに!
眠気の有無にかかわらず、筋トレ後の栄養補給は重要です。とくに糖質とタンパク質を摂取することで、トレーニングで消費したエネルギー不足を防ぎやすくなります。また、水分不足は疲労感やだるさを強めやすい要因の一つです。発汗量が多くなくても、トレーニング後はこまめな水分補給を意識しましょう。

検証者:吉田
エネルギー補給として、バナナorおにぎり+プロテインドリンクがおすすめ!
トレーニング後の栄養補給として、バナナ+プロテインドリンク・おにぎり+プロテインドリンクの組み合わせが取り入れやすかったです。トレーニング後に仕事をする際は、重たい食事を摂るよりも、コンビニで変える食品+ドリンクで「エネルギーを戻す」意識のほうが続けやすいと感じました。
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カフェインを摂取する

筋トレ後の眠気の一因であるアデノシンは、カフェインによって一時的に働きがブロックされる。そのため、トレーニング後にコーヒーを飲むことで、アデノシンの働きを一時的に感じにくくできる。

監修者:角谷
カフェインでの眠気対策は一時的な対処として取り入れよう
カフェインで眠気を無理に抑える方法は、あまりおすすめできません。カフェインは疲労回復に役立つわけではなく、アデノシンの作用を“マスキング(覆い隠す)”しています。本来は休息が必要な状態でカフェインを摂り続けると、疲労が抜けきらず、オーバートレーニングにつながる可能性もあります。
筋トレ効率をあげる!睡眠の取り入れ方

トレーニング効果を最大化するには睡眠の質と量が大切。ここでは、眠気対策としても役立つ、筋トレの回復効率を高める方法を紹介。
- 筋トレ後に20分以内の仮眠をとる
- 夜の睡眠時間を増やす

監修者:角谷
筋トレの成果はトレーニング内容と栄養、そして「睡眠」で変わる!
筋トレ×食事面の工夫はよく意識されますが、それと同じくらい睡眠(休養)も大切です。筋肉の修復やホルモン分泌は主に睡眠中におこなわれるため、睡眠時間が不足していると回復効率は下がりやすくなります。
筋トレ後に20分以内の仮眠をとる

筋トレ後に強い眠気が出る場合、20分程度の短時間仮眠は有効な選択。とくに高強度トレーニングをおこなった後は疲労物質も蓄積しているため、その回復を促す時間として活用できる。ポイントは「長く寝すぎないこと」。タイマーを設定し、明るすぎない環境で軽く休む程度がちょうどよい。

監修者:角谷
20分以上の睡眠は、逆にパフォーマンスを下げる
仮眠で筋トレ後にたまったアデノシンを軽く抜くことで、パフォーマンスの回復にもつながります。重要なのは、仮眠は20分以内にすること。20分以上眠ると深い睡眠に入りやすく、「睡眠慣性(すいみんかんせい)」と呼ばれる強い眠気やぼんやり感が続いてしまいます。

検証者:吉田
仮眠時間を抑えるポイントは寝る準備をしないこと!
仮眠時間を設けたところ、気づけば30分以上寝てしまうことも。仮眠では、眠る準備をしすぎないことも大切だと感じました。
<仮眠を20分以内に抑えるポイント>
・ソファや床で横になる
・毛布をかけない
・必ずタイマーをセットする
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夜の睡眠時間を増やす

慢性的に眠気が出る場合は、単純に睡眠時間が不足している可能性もある。筋トレをした日は回復に多くの時間が必要となるため、筋トレしない日より睡眠の質と量の影響を受けやすい。まずは就寝時間を少し早め、睡眠時間を増やすことから始めてみよう。筋トレの成果を高めたいなら、トレーニング内容や栄養補給だけでなく、「寝る時間」も戦略の一部として捉えることが大切。

監修者:角谷
筋トレした日は、睡眠時間を30分増やしてみよう
筋トレによって壊れた筋細胞を修復するには、通常時と同じ睡眠時間では足りない可能性があります。一般的な成人では6〜7時間位が睡眠時間のベストという目安はありますが、実際は活動量によって変わります。
「今日はハードにトレーニングした」「いつもより疲れている」と感じた日は、意識的に早く寝るなどの調整をしましょう。強度の高いトレーニングをおこなった日は、普段より30分ほど多く眠ることを目安にするのがおすすめです。

検証者:吉田
睡眠時間を伸ばすことで、疲労の蓄積は軽減できそう
高強度のトレーニングをおこなった日は、意識して就寝時間を30分早めてみました。とくに変化を感じたのは、起床直後のだるさと筋肉の張り感。スクワットで蓄積した筋肉痛も、睡眠時間を少し増やした翌日は少しスムーズに動ける感覚がありました。1日だけでは劇的な変化はないものの、疲労の蓄積を防ぐという考え方としては重要だと感じています。
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翌日も眠くなる場合は、筋トレ強度を調整しよう

筋トレ後の眠気が翌日まで続く場合、回復が追いついていない可能性がある。単発の疲労であれば問題ないが、「だるさ」や「強い眠気」が毎回残る状態は、トレーニング量と回復のバランスが崩れている証拠。とくに筋肉痛が強く出ている日に高強度トレーニングを重ねると、全身疲労が抜けきらず、パフォーマンス低下や集中力の低下につながりやすい。
【筋トレ強度を調整するポイント】
- 重量をいつもより軽く設定する
- 回数を減らし、フォーム練習に切り替える
- セット間の休憩時間を長めにとる

監修者:角谷
疲労が抜けない状態が続く場合は注意しよう
疲労が蓄積し続けるとオーバートレーニング症候群に発展する可能性もあります。いったんその状態に入ると、回復までに時間がかかるケースもあります。筋トレ・栄養・睡眠のバランスを見直し、「しっかり回復できているか」を基準に調整する視点も大切です。
筋トレと眠気に関するQ&A
有酸素運動後に眠くなるのはなぜ?
A. アデノシンの分泌が増えているため

監修者:角谷
有酸素運動でもエネルギーは消費されるため、体内ではアデノシンが増えます。その結果、眠気が出ることは自然な反応です。ただし、一般的には筋トレのような高強度運動のほうが消費エネルギーが大きく、アデノシンの増加も感じやすい傾向があります。とくに普段デスクワーク中心で身体活動量が少ない人は、運動刺激に対する反応が大きく出やすく、眠気を強く感じることもあります。
筋トレ中に眠くなる場合の対策方法は?
A. 筋トレ前にしっかり栄養を補給する。

監修者:角谷
筋トレ中に眠くなる場合は、エネルギー不足を疑う必要があります。とくに食事の間隔が空きすぎていると、血糖値が下がりやすく、集中力の低下や眠気につながります。トレーニング前に消化の良い糖質を少量摂る、もしくはトレーニング中に水分とあわせてエネルギーを補給するなど、栄養面を見直してみましょう。
法人160社16万人以上をサポート。認知行動療法に基づいた独自の睡眠改善メソッドは、従来の1/8の期間で2倍以上の効果を発揮。睡眠はストレス耐性、集中力、創造性を最大化する「人間の再起動装置」。『働くあなたの快眠地図』(フォレスト出版)をはじめ、睡眠に関する著書は6冊。21時就寝、4時には仕事の生活を送っている。