
丁寧な暮らしとは、理想や憧れを追求するのではなく、自分らしさや心地よさを重視しながら日常を過ごすライフスタイル。時短と丁寧さのバランスを意識し、まずは家の中の環境を整えることから始めることで、より豊かで充実した毎日を送ることができる。
本記事では、丁寧な暮らしの定義やシンプルライフとの違いをわかりやすく解説し、無理なく始められる実践方法や継続するためのコツ、自分らしい丁寧な暮らしを見つけるためのポイントも紹介。
この記事の監修者

マキさん
シンプルライフ研究家/時産アドバイザー
丁寧な暮らしとはどのような生活?
最初に「丁寧な暮らし」とはどのようなライフスタイルなのか、似たような意味として使われることがある「シンプルライフとの違い」について解説。
- 丁寧な暮らしの定義や特徴
- 丁寧な暮らしとシンプルライフの違い
丁寧な暮らしの定義や特徴
丁寧な暮らしについて、明確な定義があるわけではないものの、以下のような暮らしを指すのが一般的。
※あえてアナログな方法をとる、環境に配慮するなども当てはまる。
一方、現在のようにSNSが普及する前は、雑誌やテレビなどの「メディアが作り上げた理想的な暮らし」として、丁寧な暮らしが紹介されることが多く、「自分のためというよりは家族のためにこうするべき」みたいな固定観念も残っていた。
このような考え方に息苦しさを感じる人も多く、仕事や子育てを両立しながら自分の時間も作れる暮らしが注目されるようになった結果、「シンプルライフ」という考え方が徐々に広まっていった。

私が発信を始めた12年ほど前は、料理や掃除のプロなどが家事が好きな人に向けて発信するメディアがほとんどでした。そこで、家事が苦手で嫌いという正直な気持ちを伝えることにしました。
そのため、当時のシンプルライフの考えは、丁寧な暮らしに反発するような部分もあったと感じています。
丁寧な暮らしとシンプルライフの違い
丁寧な暮らしを「理想のライフスタイル」とした場合、シンプルライフは、「お気に入りだけに囲まれた暮らし」と定義することができる。
丁寧な暮らし | シンプルライフ | |
定義 | 自分の好きなことに対して、手間や時間をかけて、丁寧に向き合う暮らし |
|
アプローチ | ひと手間を加える、こだわりを持って取り組む | 自分にとってよい物を選び抜く、お気に入りだけに囲まれて暮らす |
具体例 | 季節の食材を丁寧に調理、器や道具にこだわる | 服や日用品を定番化して、ゆとりのある生活を送る |
とはいえ、丁寧な暮らしとシンプルライフはまったく別の考え方ではないので、丁寧な暮らしを始める最初のステップとして生活にゆとりをもたらす「シンプルライフからスタートする」のがおすすめ。
シンプルライフにおいて大切なのは、日用品一つひとつにもこだわりを持つこと。
たとえば、物を選ぶときに価格だけを基準にせず、自分に合った硬さの歯ブラシや使い勝手のよいトイレットペーパーやラップを選ぶなど、普段の生活で使用するイメージを持つことが大切。また、毎日使う物ほど定番品を決めておくことで、どれにしようか迷う時間や失敗した際の落胆などちょっとしたストレスを回避でき、時間の節約にもなる。
仕事や人間関係は自分でコントロールできない部分も多いが、物はコントロールしやすいので、身の回りを整理してルーティン化することで、日常生活のストレスを軽減できる。

編集部コメント
今は手軽に安く物が手に入る時代ですが、だからこそ「毎日手にする物」にこだわりを持つと暮らしの豊かさも変わると思います。学生や仕事をしている人はメモ帳をはじめとした文房具を使う人が多いと思いますが、こうした日々使うものをお気に入りに変えて、愛着を持てる物をそばに置くことは、シンプルライフの実践そのものですね。
丁寧な暮らしを取り入れるための基本的な考え方
丁寧な暮らしを実践する基本的な考え方として「理想や憧れを求めるのではなく、自分らしさや心地よさを重視することが大切。自分の基準や軸を持つことで、自分にとっての「丁寧な暮らし」を見つけることにつながる。
□理想や憧れだけを追求しない
□自分らしさや心地よさを重視する
□周りと比較せず無理をせずに自分のペースで
□物や自然を大切にする
□適度に人やサービスに頼る
□無理にお金をかけない
□価値観を押し付けない
□まずは家の中の環境を整える
□時短と丁寧さのバランスを意識する
□誰かにとってのよい物が、自分にとってのよい物とは限らない
- まずは家の中での丁寧さに目を向ける
- 時短と丁寧さのバランスを意識する
- 自分にとってのよい物を考える
まずは家の中での丁寧さに目を向ける
24時間すべて丁寧な暮らしを意識するのは難しいので、まずは自宅での生活から整えていくのがおすすめ。
家の中で丁寧に暮らすことができれば、職場や友人との食事など、外での活動にもその姿勢が表れるようになる。たとえば、家の中が整理整頓されている状態だと、服を選んだり物を探したりする時間を短縮することができる。
すると「1本早い電車に乗ってみよう」「近くのカフェで勉強をしてから出社しよう」といった心の余裕が生まれ、仕事のパフォーマンスやコミュニケーションにもよい影響を与えることにもつながってくる。
時短と丁寧さのバランスを意識する
丁寧な暮らしを実践するときに重要なのが「時短と丁寧さのバランスをとる」という考え方。たとえば、ドラム式洗濯乾燥機や食洗機は時短の観点ではとても便利だが「乾燥時にシワになりやすい」「食器に傷や変色が生じる可能性がある」といったデメリットもあり、丁寧な暮らしに反する行為ともいえる。
そのため、物の選び方や使い方を工夫して「時間の短縮と丁寧さを両立させる」ことが大切。

たとえば、大きめのワンプレートの食器を使用して洗い物を減らしたり、シワになりづらい素材の服を選んで、アイロンの時間をなくすなど、ちょっとしたことで時短は可能です。
自分にとってのよい物を考える
人気の商品を購入するのは悪くないが、誰かにとってのよい物が、自分にとってのよい物とは限らない。
よい物を見つけるのに、SNSや雑誌で情報収集をすることは大切だが、インテリア雑貨の場合、空間としてデザインされていることがほとんどなので、いざ買ってみたら自分の部屋には馴染まないことがある。自分にとってのお気に入りを見つけるヒントは、「日常生活でよく使用している物」に注目すること。
たとえば、コップが10個ある中で頻度高く使うのが1〜2個の場合、その理由を考えると「持ちやすさ」「デザイン性」など自分が大切にしているポイントを理解できるはず。

編集部コメント
お気に入りのアイテムに囲まれていると、使っている時間そのものが楽しくなり、暮らし全体が前向きに変わる気がします。
Sobagniが大切にしているのも、まさに「そばに置きたくなる大切な物」を持つこと。毎日使う物に愛着を持つことで、生活の質がぐっと高まりそうですね。
丁寧な暮らしを実践するための方法
丁寧な暮らしの実例として、以下のような生活がよく紹介されている。
リビングや寝室 |
|
買い物・消費行動 |
|
キッチンや調理方法 |
|
リラックスタイムの過ごし方 |
|
このような生活を理想や目標にするのは悪いことではないが、これから丁寧な暮らしに取り組む人にはハードルが高い。なるべく負担をかけずに継続するためには、以下のステップで始めていくのがおすすめ。
- 今あるものを物を整理する
- 自分にとってのお気に入りを見つける
- 徐々にお気に入りを増やしていく
今ある物を整理する
整理整頓されていない状態で観葉植物やおしゃれなテーブルを置いても、空間になじまず、余計にごちゃごちゃしてしまう可能性が高い。そのため、まずは無理のない範囲で物を整理することから始めよう。一気に減らすと「生活が不便になって、結局買い直す」といった手間が発生するので、時間をかけて整理するほうが長続きしやすい。
整理といっても無理に物を捨てる必要はなく、派手なパッケージの商品のフィルムを外したりパッケージを取り除いたりして、視覚的なノイズを減らす程度で大丈夫。
また、処分=捨てるではなく、ジモティーのようなサービスを利用して「必要な人に譲る」ことも検討してみよう。廃棄時に排出される温室効果ガスの削減することができ、個人でできる環境問題への対策にもなる。
自分にとってのお気に入りを見つける
毎日使う物をお気に入りの物に変えることで、使用体験そのものが丁寧な暮らしにつながる。
たとえば、お気に入りの食器や文房具を使うことで、自然とそれらを大切に扱うようになり、「ちゃんと定位置に戻そう」という意識も生まれやすくなる。無理に新しい物を買わなくても、家の中でお気に入りが見つかることも多い。
コップや食器・バッグなど、使用頻度が高いものから「これってお気に入りかな?」「買ったけど使っていないな」というように整理をすることで、次に購入するときの基準が定まってくる。
よく使う物 | 何がよくて使っているのか? (デザイン or 機能性など) |
あまり使わない物 |
|

編集部コメント
最近、お気に入りのグッズを買ったのですが、その過程で今まで使っていたものを泣く泣く処分することがありました。
処分する過程では、「地球にも悪いな」となんとも言えない感情になりますね。もし処分する物が思い入れがあるグッズだった場合、プレゼントなど別の行動をしていたはずです。
お気に入りを持つことで、物への思いやりはもちろん、地球環境を考えるいいきっかけになると感じました。
徐々にお気に入りを増やしていく
自分にとってのお気に入りが見つかったら、普段の生活でよく目に付く範囲から徐々にお気に入りを揃えていこう。
一気に変えようとするとお金や時間などのコストがかかり、途中で挫折しやすくなる。丁寧な暮らしを実現するには1年以上かかると想定したうえで、少しずつ取り組むのがポイント。
丁寧な暮らしを続けるためのコツ
丁寧な暮らしに憧れを持つ一方で、丁寧な暮らしに疲れを感じ、途中で挫折してしまうケースも多い。

UCCが2023年に、一都三県(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県)在住の20代~50代男女を対象にした調査では、お金・時間のなさ・手間がかかるなどの理由で挫折していることがわかっている。
丁寧な暮らしを続けるには「自分が本当にそのライフスタイルを求めているのか」を考えることが大事。たとえば、旬のフルーツを朝食に取り入れるといった行為は、簡単に丁寧に暮らしを実感しやすいが、一時的な満足感しか得られない。
そのため、いきなり憧れの部分だけをマネしてみても、うまくいかない(いったとしても続かない)ことが多い。丁寧な暮らしを目標にするのではなく、「生活環境を整える」ことに取り組みながら、徐々に丁寧な暮らしに近づけていくのが理想的。
- 今あるものを整理する
- 長く使えそうなお気に入りを増やす
- 家の中以外での活動にも丁寧な行動を取り入れてみる
- 丁寧な暮らしが自然と実現できるようになる
YouTubeチャンネル「エコナセイカツ」、オンラインサロン「シンプルライフ研究会」主宰。
最新刊『これからの人生を豊かにする時産』(文藝春秋)他14冊、累計発行部数は29万部。
https://www.econaseikatsu.com