
腕全体の60%を占める上腕三頭筋。上腕三頭筋を鍛えることで腕を太く、たくましく見せることができるだけでなく、スポーツパフォーマンスの向上も期待できる。この記事では上腕三頭筋について部位ごとの役割、おすすめの筋トレメニュー、鍛える際の注意点などについて解説。
この記事の監修者
関根 綾さん
パーソナルジムDecision 代表トレーナー
上腕三頭筋を構成する筋肉
上腕三頭筋は腕全体の約60%を占める大きな筋肉群で、長頭、外側頭、内側頭という3つの筋束で構成されている。とくにトレーニング初心者は、腕の太さにこだわるあまり上腕二頭筋に注力しがちだが、見た目のボリュームアップには上腕三頭筋を鍛えることが重要。
- 長頭
- 外側頭
- 内側頭

上腕三頭筋のトレーニングでは、基本的に満遍なく鍛えるのを意識しましょう。もし腕を太くしたい場合は長頭を鍛えたり、腕を細くしたい場合は腕のトレーニングをやりすぎないのがおすすめです。
長頭
長頭は肩甲骨から上腕骨まで伸びている上腕三頭筋の中の最大の筋肉。腕の付け根から肘にかけてのシルエットを生み出す重要な役割を担っている。トライセプスエクステンションなど、肩関節を伸ばしながらおこなうトレーニング種目で効果的に刺激できる。
外側頭
外側頭は上腕骨の外側面に位置し、腕を横から見たときのボリュームを左右する筋肉。腕を下ろした状態で横から見たときのシルエットに大きく影響を与える。ナローベンチプレスやディップスなど、ひじを体幹に近づけた状態で押す動作で活躍する。
内側頭
内側頭は上腕骨の内側面に位置し、腕の内側のラインを形成する筋肉。腕を曲げた際の安定性を高め、力強い腕の動きを支える土台となる部位。プッシュアップやベンチプレスなど、上半身を支える基本的な動作で重要な働きを担っている。
上腕三頭筋を鍛えることで得られる効果
- たくましい太い腕をつくれる
- スポーツパフォーマンスが向上
- 二の腕の引き締め

上腕三頭筋は胸など大きい筋肉を鍛える際、トレーニングの補助的な役割を担ってくれます。しっかりと鍛えることで、ベンチプレスなどのトレーニングのパフォーマンス向上が期待できます。
たくましい太い腕をつくれる
上腕三頭筋が強化されることで、腕周りのサイズアップや腕を後ろから見たときのシルエット改善が期待できる。360度どの角度から見ても印象的なたくましく太い腕を手に入れたい人にもおすすめ。
スポーツパフォーマンスが向上
上腕三頭筋を鍛えると、スポーツシーンで求められる押す動作や腕を伸ばす動作のパワーと安定性が向上しやすくなる。ベンチプレスやプッシュアップなどの基本的なトレーニングのパフォーマンス向上にもつながるので、上半身をしっかりと鍛えたい人にもおすすめ。
二の腕の引き締め
上腕三頭筋をほどよく鍛えることで二の腕周辺の血行が促進され、むくみの解消や肌のハリ改善にもつながる。筋肉量が増加することで、腕全体のラインがすっきりとした印象に近づけやすくなる。
【自重】上腕三頭筋の筋トレメニュー2選
- リバースプッシュアップ(ベンチディップス)
- ナロープッシュアップ
リバースプッシュアップ(ベンチディップス)
「リバースプッシュアップ」は椅子やベンチを使用して、手の位置を後方に配置し、ひじを曲げ伸ばしするトレーニング。体幹を使いながら、ひじを体側に寄せることを意識しておこなうのがポイント。支える台の高さや足の位置を変えることで負荷を調整できるのが特徴。
- 肩幅程度に腕を開き、ベンチの端を握るように手を置く
- 筋力に自信がなければひざを曲げた状態で、筋力に自信がある場合は脚を伸ばして床に足をつける
- ひじが90度になるのを目安に、ゆっくりと身体を下ろす
- ひじを完全に伸ばす一歩手前まで伸ばす
- 同じ動作を繰り返す
ナロープッシュアップ
肩幅よりも狭い手幅でおこなう「ナロープッシュアップ」は、上腕三頭筋の外側頭と内側頭に効果的にアプローチできる。ただし、通常の肩幅で手をつく「プッシュアップ」よりも負荷がかかりやすく、上級者向けのトレーニング。はじめておこなう場合は通常の手幅で身体の使い方を習得しよう。
- 床にうつ伏せになり、手を肩幅より狭くセットする
- 足をそろえてつま先を立てる、筋力に自信がない人はひざをつけてもOK
- ひじを曲げながら、ゆっくりと身体を下げる
- 上腕三頭筋と胸の筋肉を意識しながら身体を押し上げる
- 同じ動作を繰り返す
【ダンベル・バーベル・マシン】上腕三頭筋の筋トレメニュー5選
- フレンチプレス
- ダンベルキックバック
- EZバートライセプスエクステンション
- ナローベンチプレス
- ケーブルプレスダウン
フレンチプレス
「フレンチプレス」は上腕三頭筋全体を鍛えるトレーニングだが、その中でもとくに長頭を刺激できる。ひじを耳の横に固定して腕を垂直に保つのがポイント。ダンベルを落としてケガをする恐れがあるため、まずは軽めの重量から始めて正しいフォームを習得しよう。
- 両手でダンベルの片側を包み込むように持つ
- ひじを固定し、ゆっくりと頭の後ろにダンベルを下ろす
- ひじを伸ばしながら、ダンベルを頭上に持ち上げる
- 同じ動作を繰り返す
ダンベルキックバック
「ダンベルキックバック」は上体を前傾させた状態で、腕を後ろに伸ばすトレーニング。上腕三頭筋の形状を整えるのにぴったりのトレーニングで、上腕を体幹と平行に保ち、肘から先の部分のみを動かすのがポイント。軽めの重量でも十分な効果が得られ、腕の後面のラインを美しく整えるのに効果的。
- 足を肩幅程度に開き軽くひざを曲げ、股関節から上体を前傾させる
- ひじを固定したまま、前腕だけを後方に伸ばす
- ゆっくりと元の位置に戻す
- 同じ動作を繰り返す
EZバートライセプスエクステンション
「EZバー」は持ち手の部分が波状になっているバーベルで、手首への負担が軽減されやすいのが特徴。「EZバートライセプスエクステンション」は重い重量でも扱いやすく、フレンチプレスに比べて肩関節に負担をかけずにトレーニングできる。
ポイントはひじを固定し、上腕三頭筋に意識を集中させること。重量設定は初心者なら体重の15%程度から開始し、フォームの習得を優先しよう。
- ベンチに仰向けに寝そべる
- 手幅を肩幅に開き、内側のカーブ部分を順手で握る
- ひじを固定して、ゆっくりとバーを後頭部に向けて下げる
- ひじを伸ばして元の位置に戻す
- 同じ動作を繰り返す
ナローベンチプレス
「ナローベンチプレス」はベンチに仰向けになることでバランスが取りやすく、安定した姿勢でおこなえる。通常のベンチプレスより手幅を狭めることで上腕三頭筋に負荷を大きくかけられるのが特徴。バーの軌道を意識し、ひじの位置を適切に保つことで肩関節への負担を軽減できる。
- フラットベンチに仰向けに寝る
- 肩幅よりやや狭い手幅でバーベルを順手に握る
- 胸の真上にセットし、ひじを軽く曲げた状態からみぞおちあたりに向かって下ろす
- ひじを伸ばしきらない程度にまっすぐ伸ばす
- 同じ動作を繰り返す
ケーブルプレスダウン
「ケーブルプレスダウン」はストレートバーやVバーを使用したトレーニング。上腕三頭筋全体にバランスよく負荷を与えられる。アタッチメントの種類や握り幅を変えることで、刺激を与える部位を調整でき、目的に応じた使い分けが可能。
- ケーブルの高さを最上部に設定する
- 脚を肩幅程度に開き、軽くひざを曲げて背筋は伸ばしたまま上体を軽く前傾する
- ひじをを身体の近くで固定して、完全にひじが伸び切る一歩手前まで伸ばす
- ひじの角度が90度くらいになるまでゆっくり戻す
- 同じ動作を繰り返す

アタッチメントをロープに変更すると、上腕三頭筋を効果的に鍛えやすいトライセプスプレスダウンもおこなえます。
上腕三頭筋の筋トレの回数・頻度(目安)
- 筋肥大目的:8~10回を3セット
- 引き締め目的:12~15回を3セット
筋肥大目的:8~10回を3セット
筋肥大を目指すなら、8~10回を目安に3セットおこない、セット間の休憩は60~90秒を目安に確保しよう。週に2~3回のペースでおこなうことで、筋肉の十分な回復時間を確保しつつ筋肥大につなげられる。
引き締め目的:12~15回を3セット
引き締め目的なら比較的軽い負荷で12~15回を目安に3セットおこなうのがおすすめ。低負荷で回数を多くこなす方が筋持久力は向上しやすくなる。ただし、腕を細くしたい場合はやりすぎに注意しよう。

脂肪の落ち方は人それぞれで、腕を鍛えることで優先的に腕の脂肪だけを落とすことは難しいです。 そのため、ダイエットでは大きな筋肉の筋肉量を増やして消費エネルギーを上げ、脂肪を落とすことが一般的になります。
上腕三頭筋は身体の中でも比較的小さな筋肉ですので、まずは大きな筋肉を鍛えて体脂肪を落とし、トレーニングに慣れてきたらプラスアルファで腕のトレーニングで理想の腕に形を整えていきましょう。
上腕三頭筋を鍛える際の注意点
- 自分に合う重量でおこなう
- 過度に負荷をかけすぎない
- 筋肉の回復期間をとる
- 上腕二頭筋とのバランスを意識する
自分に合う重量でおこなう
上腕三頭筋のトレーニングをおこなう上で、最後まで正しいフォームを維持できる重量選びが重要。初心者の場合は8~12回を連続でおこなえる重量から始め、フォームが安定してから徐々に重量を増やすようにしよう。
過度に負荷をかけすぎない
上腕三頭筋は日常生活でも頻繁に使用する筋肉のため、過度な負荷は機能性に支障をきたすリスクにも。トレーニング中の急激な重量増加や限度を超えた回数設定は、肘関節への不必要な負担となりうるため、避けるようにしよう。

トレーニングをおこなう際に、ひじを完全に伸ばしてしまうこと(過伸展)には要注意です。重量が大きくなるにつれて怪我のリスクが高くなります。完全にひじが伸びる一歩手前をキープできる回数と重量を意識しましょう。
筋肉の回復期間をとる
上腕三頭筋は比較的回復が早い筋群であるものの、適切な休息なしでは十分な発達は見込めない。同じ部位のトレーニングは48時間以上の間隔を空けることで、筋肉の超回復を促進しやすくなる。休養日には軽いストレッチやマッサージをおこない、血行を促進することで回復を促そう。

上腕三頭筋は他部位のトレーニングでも補助的に使用する機会が多いため、メニュー構成を工夫する必要があります。たとえば、ベンチプレスでも上腕三頭筋を使うため、ベンチプレスをおこなった翌日は上腕三頭筋のトレーニングは避けるようにしてください。
上腕二頭筋とのバランスを意識する
上腕三頭筋と上腕二頭筋のバランスの崩れは、肘関節への負担の増加や見た目のバランスの悪さにもつながることに。それぞれのトレーニング量を適切に配分することで、バランスのよい筋力アップを目指そう。
上腕三頭筋の筋トレに関するQ&A
上腕三頭筋は何日おきに鍛えるのがおすすめ?
A:完全な回復には72時間空ける

上腕三頭筋の完全な回復には72時間程度必要なため、次回のトレーニングまで3日間程度空けるのがおすすめです。
ひじを痛めずに鍛えるコツは?
A:肘関節の過伸展に気をつける

スタート時とフィニッシュ時に腕を伸ばす動作が多いので、肘関節の過伸展に気をつけましょう。肘は完全に伸ばさず、わずかに曲げた状態を維持するようにしてください。
上腕二頭筋と同じ日に鍛えてもよい?
A:鍛えてよい

上腕三頭筋と上腕二頭筋は腕の表裏に位置する「拮抗筋(きっこうきん)」であり、腕は双方の作用により動く仕組みになっています。そのため、同時にトレーニングをすることで、効果的かつ効率的に腕全体を鍛えやすくなります。
年間約1000セッションを指導。経営者や芸能関係者の指導経験も多く、ダイエット・ボディメイク・健康維持など、さまざまな悩みに幅広く対応している。2021年より大原学園大宮校スポーツトレーナー科講師としても活動。
【保有資格/実績など】全米エクササイズ&フィットネス協会認定トレーナー(NESTAーPFT)/IMBF公認ファスティングカウンセラー/関東オープンメンズフォジーク選手権入賞