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それぞれの「やりたい」を大切に。キヤノンマーケティングジャパン新規事業チームがつくる未来

現代のビジネスシーンにおいて、新規事業の創出は企業の成長に欠かせない要素となっている。変化の激しい市場環境のなかで、既存の枠組みにとらわれず挑戦し続けること。そのためには、多様な価値観を持つメンバーが集い、互いに学び合いながら新たな価値を共創していく組織づくりが求められている。

今回登場していただくのは、キヤノンマーケティングジャパン株式会社(以下、キヤノンMJ)にて新規事業開発の最前線で活躍する阿部さんと西塚さんだ。新規事業に取り組む姿勢やチーム運営の秘訣、そして今後展開していくビジネスの展望について、Wellulu編集長の堂上が話を伺った。

 

阿部 俊介さん

キヤノンマーケティングジャパン株式会社
R&B推進本部 BizDevセンター センター長

キヤノンマーケティングジャパンに新卒入社。量販店向け営業を経て、カメラ事業のマーケティング、新規コンスーマー向け製品・サービスの開発に従事。BtoC領域での商品企画、販売戦略、マーケティング、ローンチまで一貫して携わる。2024年より全社横断の新規事業部門「R&B機能」の立ち上げに参画し、2025年から現職。

https://corporate.jp.canon/profile

西塚 まどかさん

キヤノンマーケティングジャパン株式会社
R&B推進本部 BizDevセンター グループマネージャー

新卒で株式会社NTTデータに入社し、SEとしてシステム開発に従事。その後、アステラス製薬にて営業戦略の立案、アナリティクス部門における医療データ活用のリエゾン業務、新規事業開発部門ではポートフォリオストラテジー策定や慢性心不全領域のプロジェクトリードなどを担当。現在はキヤノンマーケティングジャパン R&B推進本部にて、Well-beingをテーマにしたインキュベーションおよびDE&I領域の新規事業開発をリードしている。2024年11月より現職。

堂上 研

株式会社ECOTONE 代表取締役社長/Wellulu編集長

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集長に就任。2024年10月、株式会社ECOTONEを立ち上げる。

https://ecotone.co.jp/

目次

自分を整える習慣がウェルビーイングの土台になる

堂上:どこから入ろうかなと思ったんですが……筋トレの話から始めていいですか(笑)? 以前お聞きした“指の筋トレ”の話がすごく印象的で、あれ以来ずっと気になっていたんです。

西塚:もうかれこれ8年ぐらい続けてます。始めたのは30代中盤に差し掛かる頃、「このまま体力が落ちるのは良くないな」と思って。より良く年齢を重ねるために、最初は軽い気持ちでスタートしました。

最初は女性向けのスタジオプログラムに通っていたんですけど、そこでウェイトトレーニングをガシガシやってる男性陣を見て「あ、私こっちかも」って(笑)。気がつけば、本格的なウェイトトレーニングにハマってました。

堂上:すごいですね。習慣化ができる人は、なかなかいないので尊敬です。今はどのくらいの頻度で通っているんですか?

西塚:ほぼ毎日ですね。出勤前の朝7時から1時間くらい。アドレナリンが朝に出ると、その日1日の調子が良いんですよ。夜にやると逆に眠れなくなるので、朝がちょうどいいです。

堂上:すごい! Welluluではこれまで多くの方とお話ししてきましたが、筋トレ好きな方が多いんですよね。やっぱりウェルビーイングな人って、自分の心身を丁寧にケアできてるんだなと感じます。僕は三日坊主だし、暴飲暴食もするし、いつもチートデイにしてしまう。そんな自分からすると、習慣化できてる人って本当に尊敬しかないです。

阿部さんは、何か習慣化していることってありますか?

阿部:じつは最近、「歩くこと」を日々の習慣にしています。というのも、今はMBAにも通っていて、少し前までは正直、毎日が予定でパンパンで……。そんなある日、ふと立ち止まって、自分の生活を見つめ直す機会があって。「これ以上、色々なものを詰め込みすぎるのは違うかな?」と感じたんです。そこから、余裕をつくること、心と体を整える時間を持つことを意識するようになりました。

堂上:まさに生活に「余白」をつくる時間ですね。ウェルビーイングの観点でもとても大切だと思います。

阿部:そうなんです。意識的に早く帰って平日の夜に散歩したり、週末は緑の多い公園を歩いたりして、自分をリセットしたり、ゆっくりと人生について考える時間を意図的につくるようにしています。以前は朝から夜まで予定が詰まりすぎて、自分と向き合う時間がまったくなかったので。

堂上:「自分と対話する時間」を自分で意識してつくられているだけすごいと思います。ウェルビーイングな生活を自分で時間づくりからやられているんですね。

阿部:これまでの自分を振り返ってみると、少しだけ生き急いでいたのかもしれません。

堂上:いや〜、僕はいまだに生き急いでますけどね(笑)。僕はもともと、時間泥棒に時間を渡しまくってる。

阿部:(笑)。現在通っているMBAでは、これまでかなりのハイペースで授業や課外活動に取り組んできました。ただ最近は、少し立ち止まって、もう少しじっくり腰を据えて学んでいこうかなと思っています。これまでは予習や復習、レポートも、「こなすこと」「良い点数をとること」自体が目的になってしまっていたので……。

でも本来の目的はそこではないはず。あらためて、「自分は何のために学ぶのか」という問いに向き合いながら、学びの質を高めていきたいと感じています。

堂上:それ、すごくわかります。忙しくなる人や仕事ができると言われる人は、“成果を出さなきゃ”と自分を追い込んでしまう。だからこそ、しっかり時間をつくることが大事なんですよね。

阿部:焦ると、自分を俯瞰できずに目の前のことにばかり集中してしまって、本当に大切なことを見落としてしまうんですよね。

堂上:だから僕は、コミュニティの中で学ぶことも大切にしています。多様な人たちと触れることで新しい気づきが生まれる。僕は、それもウェルビーイングにつながると思ってます。

多様性から生まれる挑戦のちから

堂上:新規事業のチームって、多様な人たちが集まっている印象がありますよね。そういう意味では、お互いに学び合える環境も自然とできていそうな気がします。異なる視点から新しいものが生まれていくのは素晴らしい文化ですし、挑戦できる環境があるのは、これからの会社に欠かせない要素だと思います。阿部さんが、キヤノンMJで新規事業チームにアサインされた経緯を教えてください。

阿部:私は、2003年に新卒でキヤノンマーケティングジャパンに入社し、まずはBtoC領域の営業を7年間経験しました。現場でお客さまと向き合う中で製品の魅力をどう届けるかを学んだ後、2010年からはカメラの商品企画部門へ異動しました。

私が異動するその少し前の2007年、iPhoneの登場をきっかけに、コンパクトカメラ市場は大きく変化していたんです。急速に変わる市場を前に、私自身も強い危機感を抱くようになりました。「従来の枠にとらわれず、新しい価値を生み出していかなければならない」。そう感じた私は、イメージング技術を活かし、ハードだけでなくサービスとしての価値を生み出す取り組みに踏み出しました。

そうした挑戦を続けているタイミングで、新たに立ち上がったBtoC領域の新規事業部門の責任者に就任。2024年からは本社の新規事業開発部門であるR&B(リサーチ&ビジネスデベロップメント)にジョインし、さらなる価値創造に挑んでいます。

堂上:それは「よし、やってやるぞ!」という気持ちだったんですか? それとも少し戸惑いも?

阿部:戸惑いはなかったですね。もともと新しいことにワクワクするタイプですし、既存のやり方の延長線だけでは、これからの成長や新たな価値創出には限界があると感じていたこともありました。だからこそ、新たな挑戦に取り組めることに、スタート当初から大きなやりがいを感じていましたね。

堂上:僕は7年前に博報堂で「ミライの事業室」という新規事業開発の部門を立ち上げるメンバーだったのですが……正直、そのときはかなり大変でした。新規事業はうまくいくかどうかわからないし、周囲からも「なんでそんなところを?」と言われることもありました。阿部さんはそういう声はなかったですか?

阿部:あまりなかったですね。カメラ市場を取り巻く環境が大きく変化するなかで、会社全体としても「次の柱をつくる」方向を意識していたので、私にとっても自然な流れでした。ただ、新規事業部門は立ち上がっても結果が出ないと数年で見直されることも多いので、そこに対する覚悟は最初から持っていました。

堂上:それでも、新しい挑戦にワクワクしていたんですね。小さい頃から、新しいことに夢中になるタイプだったのですか?

阿部:子どもの頃からちょっと“王道を嫌う”というか、癖がある子だったかもしれません。みんなが右に行くと左に行きたくなるような、いわゆる天邪鬼な性格です(笑)。

堂上:それ、すごくわかります(笑)。でも新規事業は、まさに“動物園”的な多様なメンバーの集まりなんですよね。虎もいればウサギもいる。その中でリーダーは園長のように全体を見渡して、俯瞰した視点で舵を取る必要がある。阿部さんのように冷静で流されないタイプは、まさに適任だなと感じます。

堂上:西塚さんから見て、阿部さんはどんなリーダーですか?

西塚:すごく自由に任せてくれますね。新しいことにもどんどん挑戦させてくれるし、自由に泳がせてもらっている感じがします。

堂上:キヤノンMJには、そういう自由な気風の社員が多いんですか?

西塚:阿部さんのように先陣を切って突き進むタイプよりも、「困っている人を放っておけない」フォロワータイプが多いかもしれません。私も社内でタスクフォースを組むことになって、部門外の方にお世話になることが増えてきたのですが、みんな本当に親身になってサポートしてくれるんです。とても優しい人が多い会社です。

堂上:素晴らしいチームですね。そんななか、阿部さんはどんどん新しいことにチャレンジして、会社を外から変える「出島」のような存在ですね。

“対話”がつなぐ、ウェルビーイングなチームのかたち

堂上:僕らも企業内起業をしていますが、大企業ではどうしてもルールや社内調整に時間がかかりがちで、リスクを避けたがります。だからこそ、スピード感を持って挑戦し、失敗を共有して挑戦し続けることが、組織にとっても大きな財産になるんだと気づいてもらうのは重要ですよね。多様な文化が混ざり合うことで、お互いに影響し合い新しい文化が生まれる。そういう「渦」をつくることが、会社全体にも良い影響を与え、世の中を変える原動力になると思います。

そんな阿部さん率いるチームに、西塚さんが転職を決めた理由を教えていただけますか?

西塚:前職の製薬会社でも新規事業開発を担当していましたが、方針の転換により、日本チームがほぼ解散に。社内公募に挑戦して他部門へ異動する道もありましたが、新規事業が楽しくて、外の新しいフィールドでまだまだ新規事業開発にチャレンジしたいと思い、転職を決めました。転職エージェント経由でキヤノンMJからスカウトをいただき、お会いした方々が本当に魅力的だったので、入社を決めました。

堂上:実際に入ってみていかがですか?

西塚:とても楽しいです。特に新規事業開発チームには個性の強いメンバーたちが集まっていて、日々面白いですよ。

阿部:組織づくりの段階から、ダイバーシティは大きなテーマでした。経歴はもちろん、国籍も異なる多様なメンバーがいます。

西塚:もうひとつ、キヤノンMJに入社を決めた理由は「R&D(研究開発)がない」ということです。研究成果をプロダクトアウトで世に出す会社も多いですが、キヤノンMJは「R&B(リサーチ&ビジネスデベロップメント)」しかありません。世の中にある素晴らしい技術やソリューションを、社内の既存アセットと組み合わせて市場に出す。いわば「共創型」のビジネスモデルに魅力を感じました。更に販社なので、市場に出すまで一気通貫で関わり続けられることも魅力の一つです。

堂上:なるほど。市場のニーズをしっかり見ているという点に魅力を感じたんですね。

西塚:はい。新規事業を成功させるコツは、世の中の困りごとを起点にすることに尽きると感じています。

堂上:本当にそうですね。じつは10年前、僕が新規事業を始める時に、博報堂で全国10万件の「困りごと調査」をしました。結果は、職場の「人間関係」の悩みがもっとも多かったんです。職場・家族・近所……すべてに共通して、人間関係の問題は根深いですね。

阿部:アドラー心理学でも「人の悩みの9割は人間関係」と言われていますしね。

堂上:だからこそ、僕は組織のウェルビーイングに注目したんです。いわゆる「ウェルビーイング経営」ですね。人的資本経営やパーパス経営といった経営メソッドがあるけれど、究極は“人間関係の改善”だと思います。ちなみに、チームの関係性はどうですか?

阿部:正直、さまざまな価値観や立場があるなかで、常に意見が一致するとは限りません。ときには利害の違いから意見がぶつかることもあります。ただ、私は上司として「多様な視点を受け止め、全体を見渡しながら最適な方向へ導くこと」を意識しています。一つの意見に偏らず、さまざまな声に耳を傾けながら、自分なりの軸を持って判断するよう心がけています。

堂上:それは素晴らしいですね。ぶつかることがあるからこそ、対話を重ねることが大事。ウェルビーイングな組織づくりには“対話の文化”が不可欠だと思います。阿部さんの姿勢からも、それが伝わってきます。

阿部:今はマネージャーと週1で30分の1on1をしています。以前は「小規模組織なら日常会話で足りる」と思ってましたが、人数が増えると“意識してつくる対話の場”が必要だと気づいたんです。すごく効果的で、メンバーの本音が見えてきます。最近は、マネージャーミーティングもみんな本音ベースで忖度なく話してくれています。

社員のWillを尊重しつつ社内資源を最大活用するキヤノンMJの挑戦

堂上:新規事業はメンバーの「やりたい」という「Will(意志)」がすごく大切ですよね。ただ、それだけではビジネスにならない場面もある。キヤノンMJでは、そのあたりをどう設計されているのでしょうか?

西塚:新規事業というと、最初にテーマやターゲットが先に決まっていて、そのなかでアプローチ方法を考える、というパターンも多いと思います。でもキヤノンMJでは、テーマ決めから自分でできるんです。即戦力が求められる中途入社でも、まずは時間をかけて「自分が本当にやりたいこと」に向き合わせてもらえる。その点はとてもありがたかったです。

堂上:まさにメンバーのWillが最優先されているんですね。そこで、事業開発に挑戦できるのは、素晴らしい環境ですね。

阿部:はい。キヤノンMJの新規事業開発は「人」を起点にした「Will(やりたいこと)」を尊重する文化があります。私のような組織の責任者はそれを後方から支援する立場にありますし、一定のルールやNG領域はあるものの、基本的には自由度の高い環境で取り組めるようにしています。ただ一点気をつけているのは、「その人がもともと持っている知識や人脈だけに依存してしまうと、事業としての再現性や拡張性が生まれにくい」ということです。

たとえば、ある人だからできる、という状態だと、その人が抜けた瞬間に競争力が失われてしまいますし、同じ仕組みを他の領域に横展開するのも難しくなります。

だからこそ、個人の強みを活かしながらも、会社の強みである販売力やマーケティング力、顧客基盤といった組織の資産とどう掛け算していくかが非常に重要です。社内リソースを“使いこなす視点”を持つことが、結果として持続的な競争優位性につながると考えています。

堂上:なるほど。「なぜそれをキヤノンMJでするのか」という文脈がストーリーとして必要になるわけですね。

阿部:おっしゃる通りです。ただ、それが必ずしも主力事業であるカメラやプリンターと結びついている必要はないと考えています。

堂上:僕自身も、過去にまったく専門外の領域に飛び込んだことがあるんですが……やっぱり“飛び地すぎる”と、時間もコストもかかって、うまくいかないことが多い。だから、企業内起業で成功するには、自社リソースをどう活かすかという視点が欠かせないですよね。阿部さんのチーム設計を聞いて、さすがだなと思いました。

堂上:西塚さんは今、どんなテーマで事業づくりをされているんでしょうか?

西塚:私が掲げているテーマは「フェアネス」です。たとえば「女性エンパワーメント」「ニューロダイバーシティ」「移民・外国人の日本社会へのインクルージョン」「人生100年時代の新しい働き方」を軸として、これらを支援するビジネスについて、形態にこだわらず、支援の仕組みを事業として形にしていきます。

今後は、キヤノンMJグループ全体を“実証フィールド”として活用し、BPOやITソリューションなど多様な事業領域で、スタートアップの先進的なアプローチを社内PoCとして検証・展開していく計画を立てています。

ベンチャークライアントモデルのように、スタートアップが持つ機能を少ないポーションで社内で試しながら必要に応じて改良していく。確信が持てた段階で、社外展開へと進めていく計画です。市場投入する際は、営業力の強いキヤノンMJの強みを活かして展開していけたらと考えています。

堂上:つまり、PoC(実証実験)を社内で行い、その後キヤノンMJの強みである営業力、組織を使い、広げていくイメージですね。展開するビジネスの共通点は、導入した会社がウェルビーイングな働き方を実現し、より働きがいがつくられること、というわけですね。

西塚:はい。最近は人的資本に力を入れる会社が多いですが、スコアばかりに注目しすぎると、かえって社員が疲弊することもあります。だからこそ、スコアに頼らない本質的な働き方の改善がこれから大切になると思っています。私の担当領域のメインターゲットの一つです。

私たちがこれからつくるビジネスは、個々の凸凹の凹部分を埋めながら凸部分をブーストすることで、全体最適化を図っていた頃よりも、生産性と働きやすさ、幸福度がすべて上がっていくと思っています。現在、いくつかのスタートアップと2025〜2026年にPoCをしたいねと話しているところです。

堂上:素晴らしいですね。ウェルビーイングな働き方の前提には、人間関係、つまり「対話が対等な立場でできること」が最も重要であると考えています。ところが多くの企業では、時間やルールに縛られてその“余白”が確保されていない。

だからこそ、そこにアプローチできるビジネスが増えると、働き方はもっと良くなるし、社会全体のウェルビーイングにもつながると思います。キヤノンMJとエコトーン社でジョイントベンチャーを組むのも面白そうです!

阿部:ぜひ! 僕らも多様な企業の皆さまと連携したいと思っています。

堂上:外圧や新しい視点は、新規事業においてはとても大切な刺激になりますよね。自社視点だけで完結してしまうと、俯瞰できずに短期的な利益ばかり目指してしまいがちです。でも外部の知見とつながることで、オープンイノベーションを促進できると面白いですよね。

挑戦と学びを続け、よりよい人生を拓いていく

堂上:最後に、未来について伺わせてください。お二人はこれから、どんなふうに生きていきたいと考えていますか?

西塚:私はこれからも新しいことをどんどん吸収していきたいです。学びもそうですし、今まで出会ったことのない人と話すこととか。そういう偶然の出会いや気づきのなかで得られるものを大切にしたいですね。

何歳までにこうなる、みたいな目標は特に持っていません。むしろ、「人間万事塞翁が馬」という言葉のように、いい流れがあれば進むし違うなと思ったらやめる。そんな柔軟さを持ちながら、偶然の出会いも楽しみにしています。

ただ、そうした出会いは自分から動かなければ得られません。だからこれからも、フットワーク軽く動き続けたいですね。正直、デスクでじっとしているのはあまり得意じゃないんです(笑)。

堂上:まさに、「To be is to do.(存在することは、行動すること)」というカントの言葉そのものですね。行動することで偶然の良い出会い(セレンディピティ)が生まれ、新しい気づきも得られる。その姿勢って、もともと持っていたものなんですか?

西塚:どちらかというと、年齢を重ねる中で意識するようになりました。でも思い返すと、私も阿部さんと同じように王道は嫌うタイプでしたね。たとえば小学校のときに、男子は青、女子は赤の上履きを履くという暗黙のルールが嫌で、私はあえて青を選んでいました(笑)。周囲が日本のアイドルにハマっていたとき、フランスのアーティストを追いかけていたことも(笑)。

堂上:それはもう、いい意味での「変態」ですね。でも、世の中の当たり前に疑問を持ち、常識を疑う視点こそが新しい気づきや事業を生みます。西塚さんは、まさに根っからの新規事業開発者なんだなと感じました。

西塚:本当にそう思います。新規事業の世界に足を踏み入れて、「もう私はここでしか生きられない」と思うようになりました。

堂上:阿部さんはいかがですか?

阿部:僕自身、本音を言うと「社会を変えたい」みたいな大きな理想を掲げるタイプではないんです。まずは身近な人たち、たとえば顧客やチームのメンバー、一緒に働く仲間たちが毎日を楽しく過ごせていたら、それが自分にとってのウェルビーイングかなと思っています。そういう「小さな幸せ」の延長線上に、社会全体のウェルビーイングがあるんじゃないかと。

堂上:すごく共感します。

阿部:もうひとつ大切にしているのが「挑戦」です。よく「人生で後悔したことランキング」で「挑戦しなかったこと」が上位に挙がると言われますが、それもすごく共感します。”You only live once.”(人生は一度きり)という言葉があるように、限られた時間の中で、やらずに後悔するよりは、思い切って一歩を踏み出すことを大事にしたい、と常に考えています。

堂上:これから100歳まで生きるとして、まだまだ挑戦したいことがたくさんありそうですね。

阿部:ありますね。将来的には、経営視点をより強く意識しながら、自分自身の可能性を賭けて挑戦していきたいと考えています。

堂上:経営者として、仲間たちのウェルビーイングを支える。それも素敵な未来ですよね。

僕たちの調査でも、ウェルビーイング度が高い人に共通するのは「はじめてをはじめる」人なんです。何歳になっても新しい趣味や出会い、チャレンジし続ける人は、ウェルビーイング度も高いんです。阿部さんのお話からも、それがすごく伝わってきました。

阿部:社内のキャリア面談でも、私自身が、自分を表すキーワードを出してみると、「成長」「挑戦」「一体感」なんですよね。

堂上:企業内で新規事業開発を推進する動きは広がっていますが、うまくいかない組織は淘汰されていくフェーズに入っていると思います。だからこそ、僕らは「実装まで支援できる仕組み」をつくりたい。失敗も含めて一緒に挑戦して、笑い合えるような、そんな社会を一緒に育てていけたら嬉しいですね。

阿部さん、西塚さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!

阿部西塚こちらこそありがとうございました!

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