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Z世代と企業が手を組み、ウェルビーイングな未来を探求。ロート製薬×Earth hacksが挑む共創プロジェクト

2030年に向けたロートグループ総合経営ビジョン「Connect for Well-being」を掲げ、健康と幸せの未来づくりに挑むロート製薬株式会社。一方、「脱炭素(デカボ※)を価値に。」を合言葉に、生活者との共創で社会課題解決に挑むEarth hacks株式会社。
※デカボ:デカーボナイゼーションの略語でEarth hacksによる造語。商標登録済。

両社がタッグを組み、2025年10月に開催したのが、学生と企業が共に“未来のウェルビーイング”を探求する5日間の共創プログラム『Well-beingチャレンジ』だ。心と体、そして社会全体のあり方を問い直すこのイベントは、Z世代のリアルな価値観と企業の想いが重なり、新たな発想が次々と生まれる場となった。

今回は、本イベントのキーマンであるロート製薬株式会社 経営企画部・小久保香苗さん、Earth hacks株式会社 代表取締役副社長・和田佑介さんに、『Well-beingチャレンジ』を企画した背景やZ世代との共創から見えた変化、そして二人が描く“これからのウェルビーイング”について、Wellulu編集長・堂上研が話を伺った。

 

小久保 香苗さん

ロート製薬株式会社 経営企画部 企業連携・創出グループ マネージャー/リーガル戦略グループ(兼務)

ロート製薬に入社後、海外事業や商品企画、米国の子会社への出向などを経て、2024年より現職。国内外のスタートアップや企業、大学、地域との連携を通じて、新しい事業の創出に取り組んでいる。また海外法務も担当するとともに、子会社の経営にも従事。

https://www.rohto.co.jp/

和田 佑介さん

Earth hacks株式会社 代表取締役副社長 CAO/COO

2009年に三井物産へ入社。国内・北米・東南アジアにおける不動産開発に10年間従事する。3年間同社の採用チームリーダーを経験した後、Earth hacks事業のBusiness Development、Product開発、共創事業開発を担当する。SuMPO認定LCAエキスパート。

https://co.earth-hacks.jp/

堂上 研

株式会社ECOTONE 代表取締役社長/Wellulu 編集長

1999年に博報堂へ入社後、新規事業開発におけるビジネスデザインディレクターや経団連タスクフォース委員、Better Co-Beingプロジェクトファウンダーなどを歴任。2023年、Wellulu立ち上げに伴い編集長に就任。2024年10月、株式会社ECOTONEを立ち上げる。

https://ecotone.co.jp/

Z世代と企業が並走する場はどう生まれたのか? 『Well-beingチャレンジ』共催の舞台裏

堂上:本日は、2025年10月に5日間にわたり都内会場にて開催された共創型イベント『Well-beingチャレンジ』を共催した、ロート製薬株式会社から小久保さん、Earth hacks株式会社から和田さんにお話を伺います。どうぞよろしくお願いいたします。

まず、小久保さんは現在どのようなお仕事を担当されているのでしょうか。

小久保:私はロート製薬 経営企画部の企業連携・創出グループに所属しています。大手企業やスタートアップとの連携、出資などを通じて、オープンイノベーション型の新規事業創出を生み出していく役割を担っています。

堂上:ありがとうございます。続いて、和田さんのご経歴についても教えてください。

和田:私はEarth hacks株式会社で代表取締役 副社長を務めています。Earth hacksは「脱炭素(デカボ)を価値に。」をブランドコンセプトに掲げ、2023年に三井物産株式会社と株式会社博報堂の共同出資によって生まれた会社です。脱炭素につながる商品・サービスと、生活者の行動をつなぐ仕組みづくりに取り組んでいます。

私自身は三井物産に入社し、最初の10年間は不動産開発、その後3年間は採用責任者を担当しました。より新しい領域に挑戦したいと考え、エネルギーソリューション本部への異動を経て、現在はEarth hacksに出向しています。

堂上:『Well-beingチャレンジ』は、どのような経緯で生まれたのでしょうか?

和田:ベースになったのは、私たちが2022年から実施してきた企業・自治体がZ世代とアイデアの創出から社会実装までを目指していく共創プロジェクト『デカボチャレンジ』です。これは「脱炭素(Decarbonization=デカボ)」をテーマに、Z世代と企業・自治体が協働して新規事業のアイデアを考えるコンテスト型の企画です。これまでに多様なテーマや地域・都市との連携開催を含め延べ100社以上の企業と、1,000名以上の学生が参加しました。

学生たちと企業のメンバーが5日間かけて議論し、アイデアを提案する。学生と企業が5日間同じテーマに向き合うという形式は珍しく、高い体験価値が評価され、多くの注目を集めました。

堂上:学生は社会課題に挑む企業の姿勢を肌で感じられ、企業側はZ世代が日常の中で抱いているリアルな視点に触れられる。立場の違う人たちがひとつのテーブルで考えることで、新しい視野が自然と重なっていく。こうした関係性こそ、これからのウェルビーイングにとって大きな価値だと思います。

和田:その取り組みが評価され、内閣府からお声がけいただき、2024年には若年⼥性を含む学⽣と企業の共創型プログラム『ウェルボディチャレンジ2024 ― ウェルボディって何だろう?』の運営にも携わりました。

このプロジェクトでは、若い女性の「やせすぎ」による健康リスクという社会課題に向き合い、「自分らしく、心地よくあり続けられる健康な身体=ウェルボディ」を実現していく社会を目指しました。参加者の応募数や議論の深さから、健康・ウェルビーイングへの強い関心を再認識したんです。

堂上:そこから「ウェルビーイング」を軸にした新しいチャレンジへと発展していったわけですね。

和田:大阪府で別のチャレンジイベントを開催した際に、小久保さんが「これは面白い取り組みですね」と声をかけてくださったことが、今回の共催のスタートでした。

小久保:ロート製薬では、2030年に向けたロートグループ総合経営ビジョン「Connect for Well-being」を掲げています。未来のウェルビーイングな社会の実現に向けて、Earth hacksさんと一緒に何かできないかと考え、今回の『Well-beingチャレンジ』を共催することになりました。

堂上:両社の生活者起点で社会を良くするという姿勢が一致し、企画が実現したのですね!

“正解のない問い”こそが創造性の源泉。Z世代が導き出した多彩なアイデアとは

堂上:経営ビジョン「Connect for Well-being」を発表された当時は、まだウェルビーイングという言葉が一般に広く浸透していたわけではありませんが、このビジョンにはどのような想いが込められていたのでしょうか。

小久保:ロート製薬は、目薬やスキンケアの印象が強い企業だと思いますが、実は食や農業など、心身の健康に関わる幅広い領域で事業を展開しています。

こうした多様な事業を通じて、身体だけではなく、心の豊かさまで含めて世界中の人々のウェルビーイングに貢献していきたい。それが「Connect for Well-being」の根底にある考え方です。

堂上:食の領域まで取り組まれているのは驚きました。先進的な挑戦ですね。

小久保:2023年には、大阪府大阪市に「ロートレシピ 梅田NU茶屋町プラス店」というカフェ&レストランをオープンしました。「おなかの底から元気になれる。」をコンセプトに、薬膳の考え方をベースとした美味しく、健康的でサステナブルな食事を提供しています。

じつはこの取り組みの原点は、約20年前にまで遡ります。社員向けにスタートした薬膳ランチがきっかけでした。人に健康を届ける企業として、まずは社員が健康であるべきではないかという想いから始まったものです。

堂上:20年も前から「健康経営」を意識して、実践してこられたのですね。

ロートレシピ 梅田NU茶屋町プラス店

堂上:イベントは大盛況だったと聞いています。学生のみなさんからは、どのようなアイデアが出てきたのでしょうか?

和田:今回の『Well-beingチャレンジ』の特徴は、事業化を目指すというより、「人のウェルビーイングをどう拡張できるか」という問いに自由に挑む企画にしたことです。だからこそ、事業案に限らない幅広い提案が生まれました。

審査員が選ぶ「審査員大賞」は、博報堂チームの「スポーツチームを応援する行動を通じて、健康意識を高める仕組み」という提案が受賞しました。

堂上:スポーツ応援という“好きの熱量”を、健康や日々の行動につなげていく。人がもともと持っているポジティブな力を活かすという意味で、とてもウェルビーイングですね。

和田:学生投票で決まる「学生大賞」に選ばれたのは、サントリーウイスキー部チームによる「ありのままの自分で語り合える時間を提供する、新しい宅飲み体験」でした。学生ならではの視点で、“お酒の場が人のつながりをどう育むのか”を考えたアイデアでした。

そしてロート製薬チームは、「誰かの健康を想うことが、自分のウェルビーイングにもつながる」という深い考察が評価され、急遽「奨励賞」が設けられるという異例の展開になりました。

小久保:私たちは「ロート製薬と異業種の共創から生まれる未来のWell-being習慣」をテーマにしていました。芸術や看護など、バックグラウンドの異なる学生が集まっていたこともあり、とても多様な視点で議論できました。

特に印象的だったのは、新しいプロダクトやサービスを生み出す“0→1”ではなく、人と人の感謝の気持ちをつなげるという発想が出てきたことです。これは私たちだけでは到底生まれなかった着想で、とても刺激的でした。

堂上:Z世代がどんな視点で世界を捉えているのかを直接知る機会は、企業にとって本当に貴重です。“知らなかったことさえ知らなかった”という瞬間に出会い、自分たちの前提や思い込みに気づくことで、新しい発想の余白ができ、イノベーションが生まれていくのだとあらためて感じました。

挑戦こそが人を成長させ、組織を前へ進める。二人が語り合う仕事の流儀

堂上:ここからは、お二人ご自身にとってのウェルビーイングを深掘りしたいと思います。まず小久保さん、ロート製薬へ入社するまでの原体験を教えていただけますか。

小久保:私は小中学生の6年間、アメリカの田舎町で過ごしました。周りには日本人どころか他の外国人も住んでいない環境でした。

特に覚えているのは、友人に折り紙をプレゼントしたときにとても喜んでもらえたことです。「日本の文化ってこんなに人を喜ばせるんだ」と強く感じた瞬間でした。この経験が、「日本の良さを世界に届けたい」という気持ちへとつながりました。

その想いを持ちながらグローバルに挑戦したいと考えて就職活動を進める中で出会ったのがロート製薬でした。

堂上:グローバルに展開する企業は多いですが、ロート製薬を選んだ決め手はどこにあったのでしょうか。

小久保:当時のロート製薬は、まさに海外事業を拡大しようとしていたタイミングだったんです。自分の手で海外事業をつくりたいと思っていた私にとって、挑戦できる幅の大きさを感じました。それが入社の決め手になりました。

堂上:海外での原体験が、ロート製薬での挑戦へつながっているのですね。続いて和田さん、三井物産に入社された背景について教えてください。

和田:私は両親が商社に勤めていたこともあり、商社という仕事が身近な環境で育ちました。じつは私も小学生の頃にアメリカで過ごした経験があります。

堂上:お二人とも海外経験がルーツにあるのですね!

和田:大学時代はアメリカンフットボールに夢中でした。就職活動では「社会に出て何かを成し遂げたい」というより、「まずは真面目に働こう」という気持ちが強く、小さい頃から馴染みのある商社の三井物産を選びました。

堂上:そこから新しい領域へのチャレンジを求めて、エネルギーソリューション本部、そしてEarth hacksにつながっていくわけですね。その背景には、何があったのでしょうか。

和田:採用担当をしていた時期に、多くの学生が“働くこと”をどこかネガティブに捉えている姿を目にしました。でも、私自身は仕事を通じて得られる楽しさや充実感を強く実感していました。

働くことは楽しいという気持ちをもっと伝えていきたいと思ったときに、新しい事業に挑戦することがひとつの答えだと感じ、学生とも向き合う中で、社会課題に正面から取り組む事業へ関わりたい意欲が強まりました。

堂上:コンフォートゾーン(居心地の良い場所)から一歩出る人は、働き方に前向きな熱量が宿っていますよね。“自分がどうありたいか”という内側の声に丁寧に向き合うことが、ウェルビーイングの源泉になっていくと感じます。

『Well-beingチャレンジ』はまさに、学生が“働くとは何か”を自分の言葉で考えるきっかけになる企画だと思います。

小久保:企業側にとっても、純粋に「こんな学生たちと一緒に働いてみたい」と思える出会いが本当に多い企画でした。

堂上:採用する・されるという一方向の関係を越えて、“共に考える・共に創る”という体験をするからこそ生まれる関係性ですね。

企業のファンになる学生、将来一緒に働く学生、別の業界に進んでパートナーになる学生……ここから、さまざまなウェルビーイングなつながりが広がっていく可能性を感じます。

個人の充実と社会の持続性。変化する働き方のなかで、何を大切にしていくのか

堂上:最後に、お二人が描くウェルビーイングな社会について伺いたいと思います。どのような未来像を思い描いていらっしゃいますか?

小久保:ロート製薬としては、「Connect for Well-being」というビジョンのもと、「事業活動を通して、人々のウェルビーイングに貢献していく」という姿勢を持ち続けています。事業を取り巻く環境が変化していく中でも、この根底の想いは変わりません。

堂上:そのビジョンは、小久保さんご自身の価値観とも重なっているのでしょうか。

小久保:はい。私が入社した頃から比べると、ロート製薬は事業内容も社員数も大きく変化しました。でも、「人の健康と幸せに貢献したい」という社員全員に共通する想いは、ずっと変わらないんです。

堂上:個人として描くウェルビーイングの姿も、そこにつながっているのでしょうか。

小久保:私が子どもの頃は、日本人は長時間働く=当たり前といった価値観が主流でした。父は仕事で家にいないことも多かったですし、私自身も入社当初は仕事が楽しくて、気づけば仕事ばかりしていました。

しかし、アメリカに出向した際、まわりで働くアメリカ人の社員から「なぜそんなに働くのか?もっと仕事以外のこともやれば?」と言われたんです。そこで初めて、仕事以外の時間の質をどう高めるかが自分の人生にとって大事なのだと気づきました。

堂上:実際に何か取り組まれたことはありますか?

小久保:学びたいと思っていたイタリア語を習い始めました。今は家族との時間を何より大切にしています。「自分のために時間を使える社会」。一人ひとりがそう感じられることが、ウェルビーイングな社会の条件だと思います。

それに、私の母はとてもアクティブで、週7で塾講師として働いて、合間にはテニスもして…ずっと動き続けていました。本人はいつも楽しそうで、そんな母の姿を思い出すと、“楽しんで働く”という在り方もまたウェルビーイングだと感じます。

堂上:楽しんで生きる人は、周りの人まで巻き込んでいきますよね。お母さまの主体的に動き続ける姿が、周囲にも前向きな空気を生み出していたのだと思います。

堂上:では、和田さんが考えるウェルビーイングな社会についても教えてください。

和田:Earth hacksは「社会課題を、生活者の行動変容で解決する」を理念に挑戦を続けています。でも実際には、“自分に直接メリットがない行動”はなかなか定着しにくいという現実もあります。

そこで私が大切にしているのは、「自分が享受してきた環境を、次の世代に届けたい」という気持ちです。これが行動の動機になると信じています。

堂上:僕たちが受け取った恩を次の世代につないでいく。いわゆる 「恩送り」 の発想ですね。ウェルビーイングを社会へ広げていくための大きな軸になると感じます。

和田:そうです。誰かから受け取った恩や環境を、また次の世代につないでいく。その循環が生まれれば、脱炭素やウェルビーイングに関する行動も自然と広がるはずだと考えています。

堂上:和田さん個人が考える“働く上でのウェルビーイング”は何でしょうか。

和田:私は「貢献実感」と「挑戦実感」のバランスが大事だと思っています。誰かの役に立てているという感覚が貢献実感、新しいチャレンジの中で成長しているという感覚が挑戦実感です。

このどちらかに偏ってしまうと、ウェルビーイングな働き方から離れてしまうと考えています。たとえば貢献実感に偏ってしまうと、やれることはやっているのに、自分が何者にもなれていない感覚が生まれる。挑戦実感だけだと、今の仕事が本当に誰かの役に立っているのかわからなくなってしまう。

だからEarth hacksでは、両方が満たされる状態を人事制度の中でどうつくるかを模索しています。

堂上:とても本質的な視点だと思います。「貢献」と「挑戦」に加えて、「共感」と「納得」が働きがいを支えることにつながると僕らも考えています。

本日はとても貴重なお話をありがとうございました。これからも、共創型チャレンジの未来を一緒に追いかけていきたいと思います。

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